9.もう一人の宝石姫
カメリアは少々不満だった。
体よく姉のアメリアを身代わりにしたのに今の自分は少しの外出を許されている以外は城から出して貰えない日々を過ごしている。それも外を出歩くときには青色の髪のカツラをつけるのでいろいろと不便。一体いつまでこんな生活が続くのだろう。
「カメリア様、ラウール様が戻られましたよ。」
することもないので家庭教師の置いていった宿題を片付けていたところに部屋付きの侍女がお茶を運んできた。そう言えば先程気休めに庭を散歩したときに見慣れない騎士の方を遠目に見たが誰かお客様でも連れてきたのだろうか?どうせ自分は会わせて貰えないのだから関係はないが、遠目に見ただけでも綺麗な男性だと思った。
「どなたかお客様でもいらしたのかしら?」
カメリアはそれとなく聞いてみた。
「ラウール王は先程ルイタス軍と共にガセリアの襲撃を迎え撃って戻られたところです。その時にあちらの副官のバリー様が護衛としてここまで付き添われていましたね。彼は先程お帰りになりました。とても美しいお方で彼に声を掛けられた侍女たちが嬉しそうに自慢していました。」
彼はもう帰ってしまったのか。カメリアは少し残念に思いながら目の前のつまらない書物をパタンと閉じた。
「お父様に会いに行ってきます。」
まずは、このつまらない生活を何とかする為に王である父を説得するしかなかった。
◇◇◇
「お父様、おかえりなさい。」
カメリアは父の執務室に足を踏み入れてニコリと笑った。そして彼が立ち上がったのを見てからギュッと抱きつく。
「お父様、そろそろ外へ出でもいい?もうこんな生活厭きたわ。」
甘えるように言うとラウールは困った顔で娘を見つめた。
「そう言われても、今アメリアがお前の代わりにルイタスで王太子に会っているんだ。あの子が真実の名を明かすか王太子と結婚するまではお前はこの城から出られないぞ?」
「え?」
「当たり前じゃないか?お前はこの国がルイタスと戦争になってもよいというのか?」
要求されたカメリアではなく姉が身代わりでルイタスに出向いているのだ。あのパントバリウス王を騙しているようなものなのだから何事も起こらないはずがない。実際のところ昨日のエルカイル殿下の顔を見るまでは本当にそうなるのではないかとラウール王は思っていた。
しかし、彼はどうやらアメリアにかなり執心しているようで、今なら恐らく彼女が真実を打ち明けてもさして大ごとにはならない気がする。まあ、あくまでも、ラウールの印象だが。
しかし、姉を身代わりに差し出すという身勝手な発想をしたこの妹姫には少しきつめの罰を与える必要があった。
本来なら独身を貫くつもりだったラウールに周囲の強い勧めもあり元婚約者が嫁いできて生まれたのがカメリア。王妃に収まった女性には王であるラウールが負い目を感じて好き放題させている様子を見て城の者が、王が王妃を溺愛していると勘違いした事を知っている。そんな彼女が産んだ子と言う事で家臣たちはアメリアよりもカメリアを大切にし過ぎた。その結果、彼女には少し勘違いをさせてしまっているようだった。
「カメリア、お前は幼すぎる。もう少しいろいろな事を知って、覚えなさい。アメリアの代わりに城にとどまるしかないお前にはその時間は十分にあるのだから。」
ラウールはあくまでも平等に娘たちを愛していた。だからこそ、この少し我儘な娘が少しだけでも成長して欲しいと思いながらそっと抱きしめたのだった。
父の言う事が全く分からない。
カメリアはラウールの執務室から下がってきてから不貞腐れた顔を隠しもせずにずっと考え事をしていた。
自分は皆に可愛がられそして大切なこの国の姫なのだ。
今まで自分がそうして欲しいと言ったことは全て叶えられてきたのに何故外に出たいという希望が通らなかったのだろうか?
引きこもりで実の母に捨てられて偶然父に引き取られただけの姉がしたことで、何故自分の願いが妨げられるの?
元はカメリアが提案したことが発端だという事を都合よく忘れて彼女はただ、自分の姉に理不尽な恨みを募らせていた。
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