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ALPINA: The Promise of Twilight  作者: 小深田 とわ
第4章:Inquisitores Haereticae Pravitatis
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第490話第:ラムエル vs ヴェネーノ & ワインボルト④

 大胆不敵な笑みを零し乍ら、二柱の神の子は睨み合う。一触即発処か既に何度か爆発しているかの様な、そんなギリギリな綱渡りが両者の間に紡がれ、周囲一帯の空気がピリピリと痺れる。

 クィクィに蹴り飛ばされたヴェネーノとワインボルトは、其々態勢を立て直しつつ、そんな彼女らを黙然と見つめる。不可視の渦潮が激しく巻き上がっているかの様に、彼女らから漂う猛烈な殺気には、幾ら彼等とて平静ではいられない。危機一髪の所を助けてもらった恩はあるが、それ以上に恐怖が勝った。憖、つい先程迄、そんな恐怖を形成する片割れと戦っていたという事もあり、その恐怖がより具体的に魂を刺激するのだった。

 冷汗を流し、ヴェネーノとワインボルトは其々肩を並べてクィクィ達を静観する。果たして何が如何なっているのか、過去も現状もこの先の未来も予測が付かず、最早何をして良いかすらイマイチ分からなかった。只茫然と、流れに身を任せてた身を強張らせつつ揺蕩う事しか彼らには出来る手立ては無かった。

 一方、そんなヴェネーノ達の思いを知ってか知らずか、クィクィとラムエルは依然として一定の距離感を維持し続けている。戦うのかと思いきや決してそんな兆候は認められず、かと言って戦いそうも無いのかと聞かれたら決してそういう訳でも無い曖昧な距離感。一体何がしたいのだろうか、と誰もが口をそろえたくなるそれは、非常に煩わしく非常に面倒臭い。何方でも構わないからサッサと行動に移して欲しいものだろう。


「なら、次は貴女が私と戦ってくれるの?」


 ラムエルは問う。その口元や目元には笑みが浮かんでおり、彼女が純粋にこの状況を楽しんでいる事が窺い知れる。天使単体は疎か、神の子全体で見てもかなりの武闘派である彼女にとって、如何やらこの状況は最高に心が躍るらしい。天使長セツナエルからの下命で行っている凡ゆる工作が最終局面に入り、今正にでも大きな事が怒ろうとしている最中であるにも関わず、とてもそうとは思えない程に彼女はこの局面に喚起していた。

 そしてそれは、肝心のその相手がクィクィだからというのが非常に大きいだろう。

 確かに、武闘派である彼女にとって、それなりに強い相手と戦えるこの状況は、セツナエル指揮下の暗躍を忘れさせてくれる程の魅力を只単に秘めている。

 だが、クィクィが相手というのは、それ以上の魅力を彼女に与えてくれる。というのも、クィクィもまたラムエルと同じく神の子全体ではかなりの武闘派。あのアルピナに比肩する程の武闘派である彼女と戦えるともなれば、同じ武闘派として興味関心を抱かざるを得ない。神龍大戦で何度も戦った間柄だとは雖も、あの時と今回とでは別腹なのだ。


「う~ん……どうしよっか? ……いや、戦っても良いんだけどさ、折角だしもうちょっとあの子達に任せてみようかな? だって、未だ負けた訳じゃ無いでしょ?」


 チラリ、とクィクィはヴェネーノ達を一瞥する。此方へ来い、という意思が言外に込められているその視線は、とても稚く可憐で小柄な少女から零れているとは思えない程に冷徹で傲慢なもの。背筋処か魂の芯迄丸ごと凍り付いてしまいそうであり、ヴェネーノもワインボルトも何方も無意識的に背筋が伸びる。

 まるで紐で引っ張られるかの様に、二柱はクィクィの傍迄寄る。一体何を言われるのだろうか、と内心でビクビクしつつ、しかし恐らく大事には至らないだろう、と高を括るその倒錯した仕草は、何処か藁にも縋る願望が渦巻いているのかも知れない。余りにも場違い過ぎる自身達の立場の低さを前にして、如何にか責任や役割そのものから逃れられないか、と夢想する無意識の逃避行動かも知れなかった。

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