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ALPINA: The Promise of Twilight  作者: 小深田 とわ
第4章:Inquisitores Haereticae Pravitatis
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第488話第:ラムエル vs ヴェネーノ & ワインボルト②

 相も変わらず、まるで鉄砲玉の様に、ヴェネーノとワインボルトは突撃する。よく言えば勇猛果敢であり、悪く言えば無謀。無鉄砲と形容して差し支えない程には直線的であり、良くも悪くも実力相応だといえるだろう。

 その動きは全てラムエルに読まれている。読心術で思考や行動を読み透かさなくても、聖眼で魂を見透かさなくても、あからさま過ぎて欺瞞だと錯覚してしまう程に、それは手に取る様に理解出来た。

 だからこそ、ラムエルはそんな彼らのと突撃を真正面から迎え撃つ。幻影聖法により体格に大きな優位を持っているからというのもあるが、それ以上に、仮令欺瞞だろうが本心だろうが、何方にせよ余裕を以て対処出来ると確信を抱いていたのだ。

 聖力をより一層産生し、魂から迸らせる、元から幻影は全て聖力によって構築されているのだが、それをより一層濃密な代物へと変質させていく。最早直接手で触れられるのではないか、と感じてしまう程度にそれはしっかりとした姿形を保っており、聖眼や魔眼と言った瞳を持たないヒトの子にとっては実体を持った巨大生物だと確信出来てしまいそうな程だった。

 とはいえ、それでも、それが幻影であるという事実迄は否定されない、どれだけ濃い姿形を保持していようとも、それが幻影である限りに於いてはそれは幻影であり、即ち実体を伴わない夢幻の類でしかない。生身で触れる事は能わず、その全ては泡沫の濃霧へと変換されてしまう定めにある。

 だが、それでもヴェネーノとワインボルトは構わず突撃する。それは即ち、言い換えれば、この幻影を突破出来るだけの策があるという事。圧倒的な実力差があるにも関わらず、それを覆せるだけの秘策が、彼らの思考の背後には用意されてるという事。

 果たしてそれが何なのか、ラムエルには分からない。読心術で思考を読み取ろうとして、それは読み取れない。まさか何も考えていないのではないか、と思ってしまうが、まさかそんな筈は無いと断じて気持ちを切り替える。


〈聖光弾〉


 ラムエルの両手掌が淡く輝く。天使を天使足らしめる暁闇色の輝きが彼女の手掌を神々しく染め、この世ならざる超常の奇蹟が具現化する様を見せつけられる。それは、決してヒトの子では到達出来無い御業であり、最早正常に認識する事すら許されないのかも知れない。それ程迄に、それは尋常ではない力を秘めていた。

 そして、それは悪魔であるヴェネーノ及びワインボルトから見ても似た様なものだった。確かに二柱とも純粋な悪魔であり、詰まる所神の子ではある。第二次神龍大戦を生き残った数少ない悪魔であり、今や多くの新生悪魔に指示を出す中堅的立場でもある。

 だが、如何せん相手が悪過ぎる。確かにヴェネーノもワインボルトも神の子全体の歴史から見れば子供の様な年齢だという事実もあるが、それ以上にラムエルが老練過ぎる。草創の108柱達程では無いが、彼女もまたそれ相応に古い世代。年寄りと言ってしまえば彼女に怒られてしまうだろうが、少なくともクィクィの数倍生きているのだから、強ち間違いでは無いだろう。

 実力が年齢に比例するのは神の子全体に共通する理屈。天使だろうが悪魔だろうが龍だろうが、種族の垣根を越えて普遍的に対応するその枠組みは、ちょっとやそっとの努力で覆せる程軟では無い、況してや、これだけの年齢差があれば、最早不可能と断じて問題は無い。

 だからこそ、ヴェネーノもワインボルトも、ラムエルの技を前にして、只々気圧される事しか出来無かった。天使の力と技はこれ迄の戦いの歴史に於いて嫌という程に見てきたし、聞いて来たし、体験してきた。死ななかったのが奇跡と感じるレベルの衝撃を受けた事だって無数に存在する。

 加えて、種族的にみても悪魔は本質的に天使に弱い。全く以て対抗出来無い程の致命的差ではないにしろ、先ず間違い無く苦手とする所ではある。

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