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ALPINA: The Promise of Twilight  作者: 小深田 とわ
第4章:Inquisitores Haereticae Pravitatis
487/511

第487話:ラムエル vs ヴェネーノ & ワインボルト

 クィクィが見守る先、戦いの影響でそれ相応に破壊され尽くした広大なバトルフィールドにて、天使と悪魔は再度衝突する。

 片や聖法により幻影を纏った最上位階級の天使、片や阿吽の呼吸でそれに食らい付こうと藻掻く中位階級の悪魔。神の子という存在の内実を知っている者からすれば、幾ら数的差が存在するとはいえ真面な戦いになるとは思えない戦力差。寧ろ、可哀そうになってくる程にそれらは隔絶された開きを有している。

 当然、当事者である彼彼女らもまた、それは常にヒシヒシと感じている。ラムエルはヴェネーノとワインボルトの事を格下の弱者と見下し、ヴェネーノとワインボルトはラムエルの事を格上の強者だと見做している。

 それは、彼彼女らが生まれた時から続く定め。種族も年齢も経験も、その全てが覆しようのない絶対的な指針の下に定められており、それに縛られた彼彼女らの思考もまたそれと同様に定まった一つの解しか選ばないのだ。


 やっぱりこれもダメか……。


 一度早めた攻撃の手を一度緩め乍ら、ワインボルトは心中で呟く。どれだけ苛烈に攻めようとも、どれだけ工夫を凝らした妙手を繰り出そうとも、そのどれもが大した効果を及ぼさない。というか、抑、ラムエルの幻影巨体の中から彼女の本隊を探り当てるだけでもかなりの無理を強いられる。こうして暫く戦ってきたお陰もあってか、少しばかりは実体を捉えられる様にはなったが、それでも未だ辛うじての域を出ないのが現状。とても実用性を担保出来ているとは言えなかった。

 一方、それはヴェネーノも同様だった。同じ年齢、同じ実力、同じ戦いの最中なのだ。まさか差異が生じる筈も無い。彼もまたワインボルトと全く同じ様にラムエルの実体を捉え掛け、同じ様に幻影の翻弄されていた。

 クィクィに振り回される内に降り積もった先程の不満爆発を八つ当たり的にぶつけても、しかし結果は芳しくない。実力差に見合った結果だけが彼彼女らの背後に付き纏い、実力に見合った油断と失望が脳裏にチラつく。


「う~ん……あと一押しなんだけどなぁ……」


 そんな彼彼女らの戦いを遠巻きに眺め乍ら、クィクィはポツリと呟く。彼彼女ら戦いの当事者達全員の実力を全て客観的に把握しているその立場故に、ヴェネーノとワインボルトに対してやや辛辣な眼差しを向けてしまう。

 或いは、そこには同族故の優しい厳しさが込められているのかも知れない。昔からの勝手知ったる信頼出来る仲だからこそ、必要以上の期待を向けてしまうのかも知れない。

 とはいえ、彼女の視座は強ち間違いとは言い切れない。というのも、ラムエルとヴェネーノ達の実力差を考えれば、辛うじてでも幻影の中から実体を捉えられているだけでも十分に御の字であり、寧ろ優秀だと評価する事だって吝かではない。

 だが、この儘では埒が明かない事もまた事実。比較的余力があるとはいえ実体を捉えられかけているラムエルに対し、余り余力が無いとはいえ実体を捉えられつつあるヴェネーノ及びワインボルト。前者が逃げ切るか後者が追い上げるか、それにより結果は何方にでも転び得るだろう。そんな分水嶺に直面しているこの戦いは、クィクィをして非常に興味そそられる。

 また、それは同時に、今後の展開を左右する程に重要な局面であるという事。決して適当に毛流してはならない局面であり、言い換えれば何かしらの転換点が生じる場面でもあるという事。

 その為、クィクィはこれまで以上にこの戦いを注視する。何が起きるのか、誰がそれを為すのか、その結果如何なるのか、その全てを食い入る様に見据える。魔眼を阻害する聖力の障壁下であろうとも構わずに緋黄色の瞳を金色の魔眼に染め替え、そこで起きる全てを把握しようと注意を傾けるのだった。


 そろそろかな? 上手くやってよね、ヴェネーノもワインボルトも。


 そして、そのタイミングで彼彼女ら戦いの当事者達も再度動き出した。まるでクィクィの掌の上で踊る仙人の様に、彼彼女らは正しく彼女の願っていた通りの行動をしてくれる。

次回、第488話は3/22公開予定です。

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