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ALPINA: The Promise of Twilight  作者: 小深田 とわ
第4章:Inquisitores Haereticae Pravitatis
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第474話:気付き

 一方、アルピナとエフェメラが遂に対面を果たした頃、そこからほんの少しだけ離れた場所では、今尚スクーデリア及びクィクィは天使アウロラエルとの戦闘を継続していた。

 黄昏色の魔力と暁闇色の聖力が交差し、意地と覚悟が鍔迫り合い、この世のものとは思えない衝撃を辺り一面に撒き散らしていた。

 それは、彼女が真に最上位階級に限り無く近い神の子である事を物語るに相応しいもの。ヒトの子は当然として、生半可な神の子であってもそう易々と真似出来無いだけの力が、そこには込められている。

 だからこそ、その戦いの近くにいる他の者は、最早近付く事すら儘ならない状態で茫然とそれを見据える事しか出来無かった。それこそ、無理にでも近付けば、その余波だけで脆くも儚く滅ぼされてしまいそうな気がしてならなかった。

 とはいえ、表向きには平和を迎えた今の時代だからこそこれだけの騒ぎと動揺を招いているものの、神龍大戦が繰り広げられていた当時に於いては、これは日常茶飯事だった。寧ろ、これより酷い状況が、この第一次大戦に於いては蒼穹で、第二次大戦に於いては世界の地界の凡ゆる地点で観測されていた。

 それは、当時を知る者には懐かしい。幸いにして、今この場に居合わせる神の子は、天使も悪魔も揃ってその神龍大戦を経験した者のみ。所謂、新生神の子に区分される者は、この場には居合わせていない。

 その為、一応は見て聞いて経験した事がある筈なのだ。生き残った者、生き残る事は出来無かったものの復活を果たした者、その立場や境遇は千差万別だが、決してこういう激的な闘争に関して全くの処女という訳では無い。

 しかし、只単に、慣れないものは慣れないのだ。余りにも違い過ぎる彼我の実力差を前にしては、正常な思考や認識などまるで意味を成さず、只管の恐怖を茫然を曝け出す事しか出来無いのだ。何れ時が経てば自身も今の彼女らと同等の力を得る事となる、という理論上の未来こそ認識出来ていても、今現在のそれともなるとまるで話が変わってしまうのだ。

 だが、戦いの渦中にいるアウロラエルとしては、そんな彼彼女らの行動選択には寧ろ有り難いという思いすら抱いてしまう。スクーデリアとクィクィとの戦いが激化する中で、必要以上に数を浪費する事は流石に躊躇われて仕方無かった。

 だからこそ、そんな賢い選択をした彼彼女らに対して心中で優しく微笑みつつ、彼女はスクーデリア及びクィクィとの戦いを継続する。立場上格上となるスクーデリアにしろ、格下でありつつも実力的には然程大きな差も無いクィクィを相手に、現状に対する憂いをぶつけるかの様な戦いを繰り広げるのだった。

 そんな時だった。漸くとも言うべきか、彼女が待ちに望んだ展開が、ついにその開始の狼煙を上げたのだった。悪魔と異なり天使であるが故に、この状況でも瞳は正常に作用する。だからこそ、その金色に輝く聖眼によって、その兆候は決して見逃される事無く受け取られた。


「如何やら、動き出したみたいだね」


 アウロラエルの瞳が、その目的としている方角をチラリと一瞥する。態々そんな事をしなくても聖眼なのだから周囲一帯は全て掌上の事の様に把握出来ているのだが、やはり如何しても無意識の内に瞳は動いてしまう様だった。肉眼で周囲を見渡す際の癖と言うべきか、或いは単純さ身体構造上の兼ね合いか、何れにせよ、それは彼女の自我云々で如何にかなる問題の話では無かった。

 だが、だからこそ、それはスクーデリア及びクィクィにとっても良い手掛かりとなる。聖力の妨害により魔眼が正常に機能しないこの状況下に於いて、そいういう物理的な兆候というのは掛け替えの無い手掛かり。憖、アウロラエルは天使種全体に於いても最上位に君臨する立場に就いている事もあり、その手掛かりが持つ確実性と重要性は他を大きく引き離す程。

 故に、スクーデリアもクィクィも、そんなアウロラエルの態度振る舞いから得られる情報を元手に、彼女が胸に秘める意思や目的を手に入れようと画策する。面倒だし、何より屈辱的である事以外の何物でも無いが、偶にはこう泥臭く足掻いてみるのも悪くは無いだろう。それに、此処で我慢すれば、この後反撃する際の大義名分が手に入る。そういう意味でも、此処はグッと堪えるしか無かった。

 とはいえ、魔眼が機能しない事に関して事実以外の何物でも無いのだから、これを如何にかしない事には如何しようも無い。それは現実であり真実である。


 ふぅ~ん、成る程ねぇ……。


 スクーデリアは心中で納得した様に相槌を打つ。彼女の瞳は不閉の魔眼。凡ゆる悪魔が持つ魔眼に加え、天使が持つ聖眼、龍が持つ龍眼、その全てを上回る彼女だけの特異な瞳。草創の108柱として持って生まれた彼女のその異才が、この状況下に於いて有効に作用し始めたのだ。

 つまり、この状況に慣れつつあったのだ。慣れつつあったからこそ、この状況下に於いて、少しずつではあるものの、肉眼では見通せない彼是を再び捉える事が出来る様になりつつあったのだ。

次回、第475話は3/1公開予定です。

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