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ALPINA: The Promise of Twilight  作者: 小深田 とわ
第4章:Inquisitores Haereticae Pravitatis
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第460話:ヴェネーノの予想

 一方、そうしてアルピナ達がこの局面の雌雄を決する大激突を始めようとしている頃、同敷地内のたの場所でもまた、其々天使や悪魔や人間が入り乱れ、其々の思惑を魂に纏わせる様にしてその態度振る舞いを浮かべていた。

 例えば、今先程アルピナによって救出させ、その彼女及びクオンと共に地上へと帰還してきた悪魔ワインボルトと幼馴染にして大親友でもあるヴェネーノは、聖職に従事する人間達に囲まれつつ辺りを見渡す。

 如何やら、スクーデリアやクィクィが行動を共にしている他の聖職者達と異なり、如何やらヴェネーノと行動を共にしている聖職者達は、その大半が純粋無垢な人間によって構成されていた様子。しかしその一部は他と同様に天使としての姿形を露わにして他の天使達と合流していた様だった。

 そしてだからこそ、それが却ってヴェネーノが周囲の人間から敵愾心を向けられる要因の一つとなってしまっていた。只でさえ魔王の内の一柱という事で信用と信頼が著しく低いのに加え、新たなる未知の脅威が人間達の中から出現したともなれば、眼前の魔王が何かしら悪意を企てたと考えるのが筋。仮令その裏取りが出来ていなくとも、抑として単なる一時的な協力関係して結んでいない事から、こうして容易に敵対関係へと戻る事が出来たのだ。


「やっぱりこうなるよね……」


 ヴェネーノは、しかし決して取り乱す事も無ければ怒りの感情を見せて荒ぶる事も無く、淡々とこの状況に対して溜息を吐く。それは単なる失望か、或いは何かしら不平不満を抱かざるを得ない事柄が存在しているのか。

 その何方にせよ、少なくとも、眼前の人間達の態度振る舞いは決してヴェネーノにとって脅威とならない代物でしかない事だけは事実だった。仮令実際に敵対行動に映らなくとも、本質的な差を前にしてはそれら全てが全くの無意味である事を知っているが故の様だった。

 実際、真実が如何であれ、どれだけこの人間達がヴェネーノに対して敵意を向けようが、或いは実行に移そうが、しかしヴェネーノに危機を齎す事は出来無い。所詮はヒトの子でしかない彼彼女らでは神の子であるヴェネーノの前に障害として立ち塞がる事すら許されないのだ。

 だからこそ、ヴェネーノは、敢えて彼彼女ら人間の背景心理に立って物事を観察する。ある種の社会勉強の様なものだ。果たして彼彼女らが何を考え、何を思い描き、何を実行しているのか、それらをやや主観で的ではあるものの把握する事で、彼彼女らヒトの子の事をより正確に推し量ろうとしていたのだ。


 ……この人達からしたら僕達は完全な敵でしかないし、只でさえ何も状況を把握出来てないだろうし……如何しようかな?


 完全に敵対する前、つまりアルピナとエフェメラが口約束による協力関係を築いた直後、ヴェネーノは彼彼女ら人間から彼彼女らの現状をそれとなく聞いていた。勿論、幾ら協力関係を敷いたとはいえ敵対する相手にそう簡単に内情をバラす程彼彼女らは楽観主義者ではない為、それがどれだけ信頼出来るのは定かでは無いが、それでも他の手掛かりを得るには幾らか時間を要する為、致し方無いだろう。

 その情報によれば、如何やら彼彼女ら達からしても、抑としての前提から確信たる何かしらを得られていない様子。此処に来たのは〝邪悪なる異端の審問者〟なる別件で来ただけであり、だからこそ、不用意に巻き込みたくないという思いもまた抱いてしまう。

 加えて、只でさえヒトの子というのは管理すべき対象という前提が存在する。決して殲滅すべき対象ではないのだ。寧ろ、〝産めよ増えよ地に満ちよ〟の概念に則ってその心身及び魂を護り育まなければならない義務すら背負っている。

 その為、出来れば穏便に済ませたい、というのが彼なりの希望だった。必要に応じて過激な手段を取る事はあっても、享楽的に手を血で染める様な事はしたくなかったのだ。


 いや、待てよ……。


 そんな中、ふとワインボルトは気が付く。それは、別に推理系創作物の様に幾つかの証拠を元に組み立てた劇的なものではなく、単なる思い付きと予測でしかない。それでも、現状彼が持ち得る情報を組み合わせる限りではそれが最もそれらしいものであり、破綻らしい破綻が生じていない例だった。


 聖職者の大半は天使の様だな。それに、ワインボルトとクオンがラムエルとアウロラエルに誘拐され、二柱が発見されたのがそのよく分からない集団の拠点らしき場所だった。それに、これ迄数千年所在を晦ませていたラムエルがこうもあっさり活動を再開した……。


 ともすると、とヴェネーノは考察の結論を導き出す。


 ……その集団も過去の誘拐事件も全てクオンを見つける為の欺瞞って事か? だとすると、彼彼女ら人間が僕達と対立し易くなる構図を宛がわれる理由も天使が人間社会に潜伏する理由も納得がいくな。


 一柱勝手に納得し、それらしい回答が得られた事に満足しそうになるヴェネーノだったが、しかし答え合わせの使用が現時点では存在しない。その為、考えるだけ時間の無駄でしか無いが、それでも彼としては満足だった。自己満足だと鼻で笑ってしまえばそれ迄だが、少なくとも悪い気はしなかった。

次回、第461話は、2/12公開予定です。

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