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ALPINA: The Promise of Twilight  作者: 小深田 とわ
第4章:Inquisitores Haereticae Pravitatis
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第449話:ラムエルの行動

 そして、そんなワインボルトたちを横目に、ラムエルは早速とばかりに行動に移す。何時迄ものんびりとダラダラ御喋りに興じても良いのだが、それはもっと平和に時代にすべき事である。武闘派として、同じく武闘派として数えられるアルピナ公を前にしてそんな悠長なことをしていられる程、彼女の心は大人しくなかった。今直ぐにでも戦い気持ちが魂の奥底から際限無く湧出し、それに比例する様に聖力が天魔の理の上限へと近づいてゆく。


「ほぅ、先程の言葉、強ち嘘では無い様だな」


 瞳を輝かせ、眼前で何かを為そうとしているラムエルに対して、アルピナは好奇心で一杯の感情を顔面に貼付している。この旅路に於いてこれと同等の感情を浮かべたのは果たして何回あっただろうか? クオンが思わずそう考えてしまう程であり、ワインボルトもまた神龍大戦時とつい比較してしまっていた。

 だが、そんな彼女の相好だが、その背後にはしっかりと確実な警戒の色もまた滲んでいた。決して自身の傲慢で勝手気儘な気分次第でクオンを危機的状況には陥れない、という徹底した覚悟がそこには示されていた。憖、一度こうして痛い目をみた事もあり、その思いは一入だった。

 一方、そうしている間にも、ラムエルの魂から湧出される聖力は増大していく一方だった。周囲を満たしている不可視の聖力とは異なり魔眼にも龍眼にも龍魔眼にも確実に映るそれは、同時に何処か不安な未来を予兆させる不気味さや不確実さを感じさせてくれる。


「ん?」


 そんな中、最初に違和感に気付いたのはクオンだった。彼は龍魔力をその身に纏わせる事で彼なりに身を護り、何時でも戦える様な備えを刻む。ヒトの子として神の子に対して出来る事はたかが知れているのが現実だが、それでもアルピナと出会って以降、それなりの数の天使と戦い続けてきたのだ。それに、ラムエルと同じく智天使級に属する天使とも戦闘経験がある。幾らラムエルがそれ相応の実力を有しているとはいえ、全くの無知では無いからこその覚悟と備えだけは備わっていた。

 また、だからこそ、現状に対して盲目的に戸惑うばかりになるのではなく、欠片程度とはいえ違和感に気付けたのかもしれない。真相や真意を全て明らかに出来ている訳では無いものの、立場や実力を考慮すればこれでも十分過ぎる程だった。


「少しは気付けた様だな、クオン? 一体君の龍魔眼に何が映ったのか、是非とも教えて欲しいものだ」


 クオンの事を横目でチラリと一瞥しつつ、アルピナはそう問い掛ける。それは決してクオンの事を内心で小バカにしている訳でも無ければ、適当にあしらっている訳でも無い。クオンをクオンとして認め、自身と肩を並べる相棒だと信じているからこそ、彼女は敢えてそれを尋ねたのだ。言ってしまえばある種の教育であり、指導であり、鍛錬でもある。近い将来には天使長セツナエルと対面する事になるである事が確実視される現時点に於いて、これは数少ない好機とも言える。


「ラムエルが……大きくなってる……?」


 それが、クオンの瞳に映った感想。別に龍魔眼越しでなければ見えない代物では無く、肉眼でもそれはハッキリと映っている。いや、寧ろ変に龍魔眼を挟むよりも、肉眼で直接見た方が分かり易い方だった。それ程迄に歪で不確かで奇妙な光景が、そこには広がっていた。

 そんなクオンの言葉に対して、アルピナとワインボルトは同時に微笑みを浮かべる。或いは、感心していると評価すべきかもしれない。クオンがラムエルの為す事を正確に視認し、把握し、解釈出来ているという事実に対して、何方もそれ相応の正当性に富んだ感情を抱いていたのだ。

 とはいえ、これ迄にもシャルエルやルシエルやバルエルと直接対峙してきたのだ。別に今更初めて智天使級と対面する訳では無い。それに、階級が何であろうとも天使は天使でありそれ以外に何物にも基本的には成り代われない。

 その為、普通に考えて、クオンにそれが見えない筈が無いのだ。況してや彼が今瞳に宿しているは龍魔眼。つまり、龍の力。天使は悪魔に強く、悪魔は龍に強く、龍は天使に強い、という三種族間に相性関係が依然として成り立つ以上、皇龍ジルニアの力の一端を受け継ぐ龍魔眼で智天使の動向が見えない筈も無い——だからこそ、ベリーズや此処サバトで遭遇する不可視の聖力の異常性が際立つとも言える——のだ。

 故に、今回が初対面のワインボルトは兎も角として、これ迄共に旅をしてきたアルピナとしては、何方かと言えば関心というよりも安堵の方が近いかも知れない。こうして攫われ、拷問され、その結果として特に何かしらの不調を患っている訳では無いという事がある程度透け見えるのだ。命に代えても守らなければならない、と覚悟しているからこそ、その安堵心は尚の事だった。

 そして、改めて、アルピナはラムエルへと視線と意識を戻す。同時に、これから彼女が何を為すのかを経験で知っているからこそ、その経験に見合った備えと警戒をクオンに伝える。

次回、第450話は1/26公開予定です。

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