表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ALPINA: The Promise of Twilight  作者: 小深田 とわ
第4章:Inquisitores Haereticae Pravitatis
428/511

第428話:ラムエルの覚悟

 単純に、実力が掛け離れ過ぎているのだ。確かに何方も数十億年を生きた神の子同士ではあるし、南アら神の子三種族間の相性差のお陰もあってラムエルのが有利ではある。

 それでも、より正確性を求めるのならば、アルピナは草創の108柱の生まれだが、ラムエルはそうではない。草創期を過ぎて旧時代へと移行した後に生まれた世代であり、今や大した珍しさもない一般神の子でしかないのだ。

 抑、草創の108柱とそれ以外の神の子とでは、年齢以上に大きな実力の開きが存在する。というのも、現存する神の子の大半を占める一般神の子は、種族を問わず何れも生命の樹より産み落とされた存在でしかない。それに対し草創の108柱は、数こそ少ないものの、種族を問わず何れも神により直接的な創造を施された存在。詰まる所神の実子とでも言うべき存在であり、文字通り〝神の子〟なのだ。

 だからこそ、そんな草創の108柱であり且つその中でも最初期に創造の施しを受けたアルピナの実力というのは、年齢以上の高みへと到達している。

 実際それは、例としてアルピナ-ラムエル間とラムエル-クィクィ間を比較すると分かり易い。

 両パターンを其々比較すると、年齢的開きが大きいのはラムエル-クィクィ間であり、アルピナ-ラムエル間と比較して実に10倍近い。それに対して、実力的開きが大きいのはアルピナ-ラムエル間である。年齢差の様に10倍とまではいかないが、それでも、そう簡単には追い縋る事を許さない様な大きな開きがある事だけは事実である。

 尤も、クィクィが年齢相応を大きく上回る実力を有している為にそれ程の正確性は無いが、それでも、単純な比較をするには十分過ぎる。

 兎も角、そういう訳で、ラムエルではアルピナを迎え撃つのは少々荷が重い。それでも、だからと言って他に当てがあるのか、と言われたら、答えはノーである。現状、アルピナを正面から迎え撃てる様な天使はセツナエルしかいない。

 或いは、他の草創の108柱を頼れば如何にかなるかも知れないが、しかしこの世界に来ている草創期生まれの天使はセツナエルしかいない。他の世界から呼び寄せるのも一つの手段だが、しかし世界から世界への移動は、幾ら草創期の神の子と雖もそれ相応の時間が掛かる。蒼穹は彼彼女らにとってみれば確かに住み慣れた空間だが、それでもその広さを無視する事は出来無いのだ。

 それに、アルピナの相手が務まる様な草創期の天使とはいっても、それは神の子という種族としての性質上から必然的に如何しても彼女より年上の天使が望ましくなってしまう。しかし、そうなれば、それもまた現天使長セツナエルになってしまう。

 それか、初代天使長ミズハエルでも良いかも知れない。彼女は草創の108柱としての序列は二位であり、詰まる所ジルニアの次に創造された生命でもある。その為、単純に古く、単純に強い実力としては申し分無いだろう。

 しかし残念な事に、彼女はこの星の暦で今から約100,000,000年ほど前に肉体的死を迎えている。魂が如何なったのかはセツナエルか神に聞かないと分からないが、少なくとも現状生きていない事だけは公的に示されている。

 更に言えば、セツナエルとアルピナが此処迄大規模な対立と衝突を生んだ出来事こそが、そのミズハエルの死であり、延いては天使-悪魔間の対立を招いた根本的な事件でもある。

 相応事情があるからこそ、ラムエルは誰にも頼れないのが現状だった。溜息が無意識の内に零れ、微かな絶望すら心の何処かで湧出し始めていた。それ程迄に、状況は喜ばしくなかった。

 ……こんな事なら、せめて智天使級でも良いからもっと沢山呼んでおけば良かったかも。でも、こうなったものは仕方無いし、出来る範囲で出来る事をするしかないかな?

 ラムエルは、気持ちに一区切りをつける様に、大きく息を吐き零す。まるで呼気の軌道が透けて見えるかのような勢いであり、それだけ彼女の心にはやるせない思いが燻っていたのだろう。

 そして、改めて聖眼を見開き、聖力を湧出し、手に聖剣を構築して握り締めると、彼女は微笑を浮かべる。金色の眼光を薄暗い地下空間に反射させ、天使を天使足らしめる暁闇色のオーラを身体表面から滲出させ、壁の向こう遠くにいるアルピナにその焦点を合わせる。

 さて、勝てるかは分からないけど、それでも出来るだけの事はやってみようかな。何もせずに逃げたら我が君におこられるかも知れないし。それに幸い、こっちには人質もいる事だしね。使えるものは積極的に使えれたら良いかな。最悪殺さなかった我が君も許してくれそうだしね。

 ラムエルはチラリとクオン及びワインボルトを一瞥する。何方もラムエルから受た数々の尋問により消耗しており、幸い意識は失っていないものの、何方もラムエルの視線には何も返してこなかった。

 軈て、そんな彼らから面白くなさそうに視線を戻したラムエルは、改めてアルピナに焦点を合わせる。そして、近くにいた他の天使達に彼是指示を飛ばす事でアルピナを迎撃する態勢を整えるのだった。

次回、第429話は12/28公開予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ