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ALPINA: The Promise of Twilight  作者: 小深田 とわ
第4章:Inquisitores Haereticae Pravitatis
423/511

第423話:アウロラエルとスクーデリア④

 そして、そうして心を落ち着かせた彼女は、改めてアウロラエルとの戦いを継続する。

 とはいえ、倒そうと思えば倒せない相手ではない。しかし、天魔の理による魔力の放出量の制限が思いの外重たい。何より、あくまでも楽に勝てない訳であって、決して弱い訳では無い。幾ら格下とはいえ、数十億年を生きてきた彼女の実力は伊達では無く、幾らスっクーデリアとは雖も相応の苦戦は強いられざるを得なかったのだ。


 アルピナの様子は如何かしら……? 無事に進めているのなら良いのだけれど……。


 スクーデリアの魔眼は、眼前のアウロラエルを見据えつつも、同時に同じ敷地内の何処かにいるアルピナを探していた。金色の不閉の魔眼を美しく輝かせ、聖力の障壁による阻害の中で藻掻く事で、如何にか必要最低限の機能を果たそうとする。

 幸い、未だ不閉の魔眼の機能は失われていない様子。若しこの儘戦いが長期化したり激化したりする様だったら、瞳に魔力を流す余裕がなくなる為、場合によっては聖力の障壁を突破出来るだけの魔眼を維持出来無くなるかも知れないのだ。

 その為、アウロラエルとの闘いが始まった事によって既にそうなってしまっている可能性も考えられたが、しかし如何やら思いの外余裕は残されている様だった。

 だからこそスクーデリアは、落ち着いて周囲の状況を魔眼で探る。アウロラエルとの戦いもそれなりに盛り上げつつ、それ以上の熱意でアルピナの位置を探るのだった。

 アルピナの言動は実に危なっかしい。それこそ、ちょっと目を離している内に取り返しのつかない大災害を引き起こしている可能性だった十分あり得る。憖強大な力を持っているだけに、僅かな気の緩みが致命の一撃を生む事だって出来るのだ。

 それに、最大の問題は、アルピナと行動を共にしているのがエフェメラ・イラーフという天巫女だという事。他の手頃な人間の聖職者なら何も気にする必要は無いし、何なら神の子の本能として何らかの施しを与えてしまいたくなる。

 しかし、彼女だけは、如何しても見過ごす事は出来ない。レインザード攻防戦の様に直接的な接触が余り図られていないのであれば多少は見過ごせるのだが、こうも直接的な接触が行われるとなると、それこそ神の子全体の和に影響を及ぼし兼ねない。

 せめて行動を共にしているのが自分かヴェネーノなら、という思いすら、今のスクーデリアの心には渦巻いている始末だった。これがクィクィとだったとしても大概面倒になるのに、アルピナともなれば、溜息の一つや二つ出ても文句は言われないだろう。

 だが、如何やら、幸いにして、アルピナとエフェメラは上手く行動を共にできた様子。数分程前に如何やら二手に分かれて単独で行動をしている様だが、それでも此処迄大きなトラブルなくいられたのは正に奇跡と呼んで差し支え無いだろう。


 やれやれ……如何やら、なんとか平和的に過ごせている様ね。それにしても……この聖力はシャフリエル達かしら? 随分と懐かしいわね。一体、何をお話ししているのかしら?


 ふふっ、と軽やか且つ艶やかしく微笑み乍ら、スクーデリアはその視線をアルピナからエフェメラ及びシャフリエル達へと移す。単独行動を始めたアルピナの事は大丈夫だと信用し、それよりも興味深い接触へと、その意識は自然に移っていたのだ。

 エフェメラとシャフリエル。つまり、ヒトの子と神の子。しかし、聖職者と天使。一見して全く以て関連性を持たない関係性の様にしか見えないが、しかしスクーデリアの瞳には、それが非常に興味深い談合にしか見えない。天巫女という特異な存在の真相を知っているからこそ、その意図を知らないが故の好奇心が踊り出すのだ。

 しかし、幾ら彼女の魔眼でも、見えないものは見えない。それは聖力の障壁の有無に関係無く、魔眼としての特性によるもの。

 つまり、魂という各生命の本質基根源こそ、魔眼を介する事でその表層から深層迄を詳らかに出来るのだが、只の会話の様な、要するに魂に作用を伴わない動作に関しては如何頑張っても魔眼で明らかにする事が出来無いのだ。

 その、彼彼女らが集まっているという事に関しては魂の密集具合から思い描く事が出来るものの、果たして何をしているのか迄は明らかに出来無い。聖力の産生と放出が伴っていない事から少なくとも戦っている訳では無い事は分かるし、言い換えれば平和的な遣り取りの延長戦だという事は認識出来る。しかし、その程度でしかない。

 しかし、どれだけ考えても、それはあくまでも予想の範疇でしかないし、根拠の伴わない予想は詰まる所妄想でしかない。その為、スクーデリアは、適当な所でその集まりの真相が何かを考える事は止め、しかし不穏な行動を取らないかだけを注察するに留めるのだった。

 そして、その意識の大半は改めてアウロラエルへと戻る。全てを戻してしまってはエフェメラ達を監視出来無い為に致し方無いのだが、しかしこの程度の意識でもアウロラエルの相手をするのは不可能ではない。これが天使達の膝元である天界ならこうはいかないが、しかし此処は地界である為、幾ら聖力の障壁に包まれているとはいえ心配するだけ杞憂に終わるだけだった。

次回、第424話は12/21効果予定です。

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