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ALPINA: The Promise of Twilight  作者: 小深田 とわ
第4章:Inquisitores Haereticae Pravitatis
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第420話:アウロラエルとスクーデリア

「そうね。それにしても、相変わらず貴女の魔眼は優秀ね。この状況下でも未だ機能を失っていないなんて」

 金色に輝く聖眼で金色に輝く不閉の魔眼を見つめ乍ら、アウロラエルはスクーデリアに対して称賛の言葉を掛ける。

 或いは、それは嫉妬かもしれない。というのも、アウロラエルの階級は智天使級であり、それは即ち凡ゆる神の子の中でもほぼ最古に近い世代で生まれた子を示す。それこそ、ヒトの子やそれが住まう各世界が創造されるより遥か以前であり、加えて第一次神龍大戦が勃発するよりも更に以前であり、未だ世の中には神と神の子しか存在せず、それらが全て神界及び蒼穹で共に生活をしていた頃に迄遡る。

 その為、生きた時間に実力が比例する神の子としての特性がある以上、彼女は単純に強いのだ。それこそ、若輩の龍なら神の子三種族間の相性差を凌駕して打ち倒せる程には強い筈なのだ。

 しかし、スクーデリアはそんな彼女よりも更に古い神の子であり、所謂草創の108柱として数えられる最古の世代。そして、その中でも比較的古い世代であり、彼女より古い神の子と言えばジルニア、セツナエル、アルピナを含めて極少量しか存在しない。

 その為、そんな彼女の実力は、単純にアウロラエルをも上回る。それこそ、種族的な相性差を無効化できる程度には開きがある。

 その上、スクーデリアの魔眼は他のどの神の子とも共通しない唯一無二の特異性を持っている。不閉の魔眼と呼ばれるそれは彼女の実力以上の力を内包しており、これを上回る聖眼・魔眼。龍眼・龍魔眼は存在せず上回るのは神が持つ神眼だけだとされている。

 そんな瞳は、こうして周囲に満ちる聖力の障壁すらをも凌駕する。勿論、全くの無効かと迄はいかないものの、それでも多少なりとも機能を果たしているだけでも異常なのが正直な所。

 自身を単純に上回る実力、凡ゆる神の子を凌駕する瞳、周囲に満ちる障壁をも超克している現実。それらを目の当たりにして嫉妬しない方が無理ある話だった。憖、ヒトの子の価値観では到底創造する事も出来ず、神の子の価値観でもそれ相応に長いと認識出来る途方も無い時の流れを共に生きてきた間柄であるが故に、その感情は一入のものだった。

「ふふっ、嫉妬かしら? でも、お陰様で少しは慣れてきたわ」

 とはいえ、しかし本心ではそんな軽口を叩けるような余裕はそこ迄無かったりする。確かに多少なりとも魔眼が機能する事も少しは慣れてきたであろう事は共に事実である。しかし、言い換えればその程度でしかないのだ。

 過去、スクーデリアの不閉の魔眼を出し抜いた聖法は存在しない。それは、セツナエルの聖法であろうとも同様であり、確かにセツナエルの方がスクーデリアよりも総合力では上だが、しかし魔眼の性能だけは過去一度たりとも出し抜かれた事は無い。あくまでも現状は彼女の目的が不明なだけであり、魔眼自体は何時も通り正常に機能を果たしている。

 だからこそ、こうしてセツナエルにすら遠く及ばない一介の天使如きが仕組んだ罠程度で魔眼が正常に機能しないというのは、どうしても必要以上の不安に駆られてしまう。まるで心にポッカリ穴が開いたかの様な空虚感が身を震わせ、見えないという現実に対して見て見ぬ振りをしたくなってしまう。

 やはりこれも、常日頃の生活を魔眼に頼り過ぎた弊害だろう。魔眼越しの膨大な視覚情報を元にするという行為が本王レベルに迄染み付いてしまったが為に、それが役目を失いつつあるのは如何しても慣れないのだ。尤も、彼女の場合、余りにも強大な不閉の魔眼は閉じる事が出来なくなってしまっている為、同じく魔眼が機能せずに困惑しているアルピナ達とは異なり仕方無いとしか言いようがないのだが。

 それでも、言い換えれば、久し振りに肉眼に近い視覚情報を堪能出来るという事でもある。確かに多少は魔眼の機能を残っているものの、普段の膨大な情報量からすれば微々たるものでしかないし、だからこそ折角の機会だとも捉えられるだろう。

 ……とは言ったものの、やっぱり、魔眼が上手く機能しない限りは何時も通りと迄はいきそうにないわね。せめて周りの天使達だけでも誰かが請け負ってくれたらなんとかなるでしょうけど……暫くは此処で時間稼ぎに徹するべきかしら?

 アウロラエルの瞳を見つめ返し乍ら、スクーデリアは心中で思案する。普段ならこんな事は一欠片も思い抱く事は無いのだが、やはり身体に染み付いた慣れとの乖離には如何しても不安を助長させられる。

 また同時に、その魔眼はこの敷地内にいる他者の動向を注察しており、取り分けアルピナ及びエフェメラに関しては細心の注意を払っていた。

 というのも、スクーデリア自身を始めクィクィともヴェネーノとも行動を別にしているのだ。若しこれでまた何らかの拍子に暴走でもされたら誰も止められない。憖、決して平和的とは言えない彼女らの間柄然りこれ迄幾度となくアルピナに振り回されてきた経験も相まって、それは尚の事だった。

次回、第421話は12/18公開予定です。

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