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ALPINA: The Promise of Twilight  作者: 小深田 とわ
第4章:Inquisitores Haereticae Pravitatis
413/511

第413話:魔法による威嚇

 そして、彼女はそんな吹っ切れた思考をその儘行動に反映する。魂から魔力を湧出させ、全身を循環させる。身体表面から黄昏色のオーラを迸出させ、その地位階級に相応しいだけの品格と立場や性格に則った殺気を身に纏う。

 それは、今正にでも魔法による一撃で辺り一帯を吹き飛ばせそうな気配。抑として純粋な神の子である彼女にとって大切なのはあくまでも転生の理という概念であり、地界そのものに関しては管理の対象から外れている。その為、多少魔法で吹き飛ばそうが、ヒトの子の魂の循環にさえ悪影響を及ぼさないのであればそれで良かった。

 加えて、彼女にとって今最も優先したい対象であるクオンとワインボルトに関しても全く以て問題無かった。同じく純粋な神の子であるワインボルトは元より、魔力と龍脈によって土台されているクオンに関しても、多少の魔法になら耐えられる。

 とはいえ、アルピナは公爵級悪魔であり、言ってしまえば全悪魔の頂点に君臨する存在。確かに魔法技術や魔力操作技術はスクーデリアに劣るが、しかし出鱈目な魔力量に裏打ちされる力業な威力に関しては到底侮れるものでは無い。

 その為、仮にクオンがその一撃に直撃してしまったとしたら、果たして耐えられるのだろうか? どれだけ魔力と龍脈をその身に宿そうとも、彼の本質は依然としてヒトの子としての枠組みから逸脱していない。ともなれば、或いは耐え切れずに肉体が消滅してしまうやも知れない危険性だって何処かには孕んでいるのだ。

 しかし、アルピナの心には確信があった。別に何らかの客観的な証拠がある訳では無いが、それでも不思議とクオンなら大丈夫なような気がしたのだ。

 それは、クオン自身も知らない彼の魂に仕掛けられた秘密を彼女は知っている為。抑としての何故彼が龍魂の欠片及びそれを収める台座を持っていたのか、という疑問の答えにも繋がるその秘密を知っている限り、アルピナをクオンの事を只の人間以上のものとして信用する。

 しかし、それでも、アルピナは魔法を放つ事は無かった。今直ぐにでも放てる状態を作りこそすれども、そこから実際に行動としては寧される事は無かった。

 勿論、決してそれはハリボテなんかではない。確かに、必要最低限の魔力量をも確保せずに体裁だけを整えて無理矢理魔法らしさを見せかける事は出来無くも無いのだが、しかしそんなくだらない欺瞞を施す様なくだらない性格を彼女は持ち合わせていなかった。

 それに、今この場に居合わせるのは何も神の子だけでは無かった。エフェメラに率いられた人間達による部隊もまた、この敷地内には存在しているのだ。そして、今尚そんな彼かのjロアは手分けしつつスクーデリア、クィクィ、ヴェネーノと行動を共にしている。

 そんな彼彼女らに対して徒に肉体的死を贈り付ける様なマネをするのは、流石に遠慮してしまう。当然、一個体一個体其々に対しては特別愛情や友情に由来する感情を持ち合わせている訳では無いし、特別感も何もない。しかし、ヒトの子の魂を管理する立場であり乍ら人の子の魂を徒に害するのは、あまり宜しい行動では無いだろう。憖、立場が立場だけに、余り目に余る行動を取っていれば神によって断罪を受けるかも知れない可能性だって秘めている。

 尤も、セツナエルが何のお咎めも無い時点で、アルピナがどれだけヒトの子を害そうとも何のお咎めも無い事は分かり切っているのだが。それに、第二次神龍大戦の余波でヒトの子の魂もそれ相応に霧散した。その時点でさえも何も無かったのだから、それは尚の事だろう。


「久方ぶりにお目に掛かりますな、アルピナ公。如何やら、今尚その横暴さは御健在の様で」


 アルピナに魔法を放つつもりが全く無い事を認識したのか、一柱天使が漸く口を開く。背中に生える翼の構造が一対二枚である事から、少なくとも座天使未満の存在である事は確実の様子。ともなれば、或いはそうでも無くとも、アルピナにとって雑兵と呼んで差し支えない程度の相手でしかない事は確実だった。

 それでも、アルピナを眼前に捉えて尚一切の気後れも無く堂々とした態度振る舞いを維持できるのは流石だろう。彼女の名声は過去の行動と併せてほぼ全て神の子に周知されているのだ。それでも尚それだけの態度振る舞いを維持できるともなれば、彼我の実力差を認識出来無い余程の間抜けか、或いは彼女の事を良く知らない新生神の子に限られるだろう。

 しかし、アルピナにはそれが確実に前者だと分かっていた。というのも、確かに魔眼が全く機能していない事から彼の魂の波長も発する聖力も見えない為に、彼が果たしてどの階級に属するどの程度の力を持った天使なのかは窺い知れない。それでも、彼の顔立ちと髪から窺い知れる個体色には覚えがあった。その為、少なくとも彼が彼女の認識していない新生天使では無いという事は確実だったのだ。


「君こそ、その自信過剰な態度振る舞いは健在のようだな。そこ迄徹底されていれば、寧ろ感心すら感じてしまうな」

次回、第414話は12/7公開予定です。

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