七、
七、
エーテルに耳を澄ます。聞こえてくる風の声と青光りする真空海岸線に瞳を透過し、絶えていく蛍の銀星酸を飲み干した。
類まれな技術で描かれたテラが、宇宙の始点を刻み、郊外の燻を見放す誘導体となるユーフラテス川。
再生にエグ味を持たせた、沿線の電車に乗る黒い固まりを感じられるほどの近くに、その場所はあったのだった。
寂れて、あちこちにガタがきている寺。それを囲むように群生する竹。しかし、月の光芒が抱いた五百年を超える年月で築かれた建物は、不思議と永遠の心象風景と見えたのだった。
近くに溜まった池には、季節外れか、はたまた夏に相応しいのかは知らないがゲコゲコと喉の奥から渋みを出すカエルがいた。
絢爛とは言い難い、古びた寺。
「気に入っただろう?」
「そうね。」
不遜げに笑った彼が、私を寺の中へと案内する。巨大な梵鐘の側を通り、そのまま目の前にある本堂らしい建物へと入っていくのかと思ったが、
「こっちだ。」
と言って、彼は私を裏の方へと連れて行った。
「住職は、この時間帯じゃ本堂に居ないんだよ。大抵、裏にある離れで夕食を食べてるか、休んでるからな。」
ガラリと障子を開けて、狐が下駄を脱ぐ。私もそれに習うと、不思議と木の匂いが立ち込める建物の中へと入っていったのだった。
何年も前に行った修学旅行で、五重の塔に立ち寄ったことがあるのですが、木の香りがすごいですね。木目も美しくて、何となくじっと見ていたら、いつの間にか担任の先生以外誰もいなくなっていました。
その後、慌てて走って追いかけたことを覚えています。