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篝人(かがりびと)  作者: Mei.(神楽鳴)
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第一章 一、

第一章


一、

藍炎が飛び交う王国の欠片。装束を身に纏って恐ろしげに微笑む鬼女は、嘗ては巫女と呼ばれた霜雪だ。ゆっくりと奏でられている琴に耳を澄ませ、銀杏も薫りだしそうな中性子星の仄かさを、今か今かと待っている。氷雪を掬い取り、行灯に記帳を納める幽玄は座敷童子の少女を、雪景色に溶け込み呪詛を手繰る生け贄としたのだった。


 燦然と輝くエメラルドの夜空が、私を貫くように雪を降らす。青光する懐中電灯を忘れてしまったがゆえの、燈籠の行く先。置き行かれた彼岸花は、昨今になって漸く冬らしさを告げ始めた、生き物の気配もない山奥では、私の求めるものなど存在していないのだろうと、悲しさに木々から零れ落ちた牡丹を愛でる。ヒマラヤ山脈よりも、丁度雪雲に朧気て見える三日月。それよりも遥かに雅な十二単の、合奏が降雪だ。

誰某だれそれは曰く、カレイドスコウプに閉じ込められた、博識の娘を月花に例えるのだと。まさしく、黎明に行く銀河衛星探査機と名のつく美しさだと、現状を讃えるのに相応しい言葉だった。


 着物のたもとを白く陶器染みた手で、ぎゅっと握る。荒廃の選べない、エレクトーンを遮る星団。淡白と裏切る太陽も隠れ、煌々と照る海雪様達以外に心を灯す、優しさはなかった。

「はぁ。」

 手の平に僅かばかりに温かい、息をかける。竹林に、姫の星蘭な姿。気づけば、更に山奥に入っていた。

「こんな所に、人の住む家などあるのかな…?」

 座敷童は人が住む屋敷に宿る。それに等しく、私もまた長い歳月をたくさんの人の家で過ごしてきた。…けれど、

「銀色の蝶々。殺戮された、円形の水素水。核融合された青い白熱電球に、どうしてすがり付くのかしら。」

 六百年以上も前に、座敷童子として生を受けた。それ故に、人間のことはよく知らない。けれど、何時しか私の求める温かい家も、私の姿を見ることができる人間も、いなくなっていた。


 さて、新しい小説の連載が始まりましたが、前回の近未来的だった小説とは全く違う、アヤカシが主人公の和風小説に挑戦してみました。

 この小説を書くにあたって、座敷童についてだいぶ調べましたが、いくつか種類があるんですね。なかでも、チョウピラコという座敷童は色白で非常に美しい座敷童だそうです。今回の彼女は別段、特別な座敷童というわけではありませんが、それほど美しい姿の座敷童なら一度会ってみたいような気もします。

 まあ、実際に会ったら僕は叫びながら逃げ出すと思いますけど。

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