第1話スキル『裏口』
新作です。
不定期連載です。
よろしければお付き合いください。
「ロンド、お主のスキルは『裏口』とでた。
今までこの村で見たことのないスキルじゃ。
よって、効果は不明。
これからお主自身でスキルに向き合い、スキルを理解するのじゃ」
ロンドは今、神託の水晶を見つめながら、神父の言葉を聞いている。
『裏口』
神父が言うように聞いたことがないスキルだ。
この村で一番物知りな神父が言うのだから、おそらく知っている人はいないだろう。
有用なスキルなのか、役に立たない無用のスキルなのかすら分からない。
ロンドの住む世界では、15歳になると神様からスキルを授かる。
どのスキルを授かるかは、授かってみるまで分からない。
そして、授かったスキルにより、上級の学校に進むか、就職するかをみんな判断する。
この村には基礎学校しかないから、進学するなら大きな街に行く必要がある。
進学できるのは、『剣術』や『魔法』などの使い方や成長の方向が既に分かっており、鍛えることで大きく伸び、それによって国に貢献できると知られているスキルを授かった人たちだ。
一方、『調理』や『家づくり』などの実用系のスキルを授かった場合は、その系統の職場に就職してスキルを鍛えることになる。『調理』なら、食堂や宿屋の調理場、『家づくり』なら大工の親方に弟子入りするなど、わかりやすい。
そしてまれにロンドのように、用途不明のスキルを授かった場合は、自分自身でスキルの使い方を理解して使えるようにし、自分のスキルと相性の良い職場を探すことになる。
使い道さえ分かれば、スキルを使用し続けることで新たなスキルが派生したりすることもある。
一見すると全く使い道がなさそうなスキルでも、派生スキル次第ではものすごく強くなれることもある。
有名なのは今から300年ほど前に『うんこ』というスキルを授かった少年だ。彼は、そこから派生したスキルを駆使して後に勇者と呼ばれるようになったという。
今ではおとぎ話として男の子たちに人気があるエピソードで、もちろんロンドも大好きな話である。
しかし、そのような成功した冒険譚はごく一部であり、大抵の使途不明スキルは使途不明のまま、本人の足かせや呪いとなることの方が多い。
スキルを役立てることができない人は、雑用などの仕事しかもらえず、低収入に甘んじる。
希にダンジョンで新たなスキルを習得することがある。が、今までにその幸運を掴み取れた者は、冒険者として有用な『剣術』や『魔法』のスキルを授かった者だけだ。
ロンドのようにスキルを使いこなせない者がダンジョンに潜れば、新たなスキルを習得する前に、間違いなく命を落とすことになる。ダンジョンでスキルを取得し逆転する機会はない。それが常識だ。
「まずは、使いこなさなくちゃな……」
ロンドは自分に言い聞かせるように呟き帰路へ着いた。
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執筆意欲が上がるかも知れません。




