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夜な夜な魔法少女に襲われてます  作者: 重土 浄
第五話「キミは信用されてないってよ」
17/51

第五話の2


 「えぇ?ここで添い寝するんですか?」


 エリちゃんが驚くのは無理もない。


 彼女の前には、部屋いっぱいにひかれた布団と、すでに寝姿の俺と木須屋さんがいるのだから。


 木須屋さんはなぜか照れている。第三者に指摘されてしまったことで、自分たちやっていることの恥ずかしさを再認識してしまったようだ。


 「我が家ではそのような仕来りになっております」


 俺は面倒くさいので、そういうものだと言いはった。




 夕方の会合がお開きになり、次なる俺の魔物化を警戒しての泊まり込みが再開された。


 今回は木須屋さんだけではなく、俺の真意をジャッジメントするエリちゃんも加わった。


 彼女たちは一旦帰宅し、深夜になって我が家に再集合することとなった。


 そして十一時ごろやって来たエリちゃんが見たのが、枕が並んだ寝床だった。


 枕が近すぎた、と思ったのか木須屋さんが距離を離す。そのうえで


 「大丈夫。ほら、槍があるから」


 自分の槍を境界線として置いた。まったく事情を知らないエリちゃんからしたら、なにが大丈夫なのかさっぱりだろう。


 「もう寝るよ」


 自分でそう言った時、まるで父親みたいな言い方だなと思った。そんな子供時代も俺にもあったのだ。


 「あ、ちょっとまって」


 そういってエリちゃんは隣の部屋で隠れて寝間着に着替えはじめる。


 木須屋さんと一緒に布団の上で座って待っている。なにかいい感じだった。これからのことに少し不安そうだった木須屋さんの手にそっと触れて


 「大丈夫」


 と言った。自分で言っておきながら、なにが大丈夫なのかわからないが。


 木須屋さんが手を握り返そうとした時、襖が開きパジャマ姿のエリちゃんが入ってきたため、その手を慌てて引っ込めた。




 消灯し、みな床についた。


 右から俺、木須屋さん、エリちゃんという並びだ。


 この中で本気で寝る気なのが俺だけというのはおかしな話だ。


 エリちゃんに気を使っているせいか、木須屋さんがいつもより遠い。俺の方も今日は試験前日の様な気分なので彼女たちの方をあまり気にしている余裕がない。下手をすると今日明日にも死んでる可能性があるのだ。


 とにかく、落ち着いて寝るしかない。


 「ちょっとエリちゃん…」


 暗い部屋の向こうからゴソゴソという音が聞こえてくる。


 「センパイ姉さまは、毎回こんな危険な任務を自分に課していたんですね…。こんあおじさんと同じ屋根の下で…危険に震えながら添い寝をする」


 「そんな危ない人じゃない…きゃっ」


 「ああ、なんて健気なんでしょう。魔法少女としての格と覚悟が私なんかと違いすぎる」


 なにかもつれ合っているような音が聞こえてくる。


 「こら、抱きつかない!エリちゃん!駄目!」


 なんなの、何が起こってるの?


 ガバっと音がして、俺のすぐ隣に木須屋さんが俺の布団の中に飛び込んできた。少し寝間着が乱れ、頬の上気が熱として伝わってくる。


 「何してんの、君ら?」


 「私は何もしてません!」


 俺たちは同じ布団の中に隠れてゴショゴショと話している。


 俺は布団から顔を出して、エリちゃんの方を見ると彼女は大股広げてもう寝ていた。


 「すごい度胸だな、あの子」


 布団の中に顔を突っ込んで木須屋さんに報告する。


 「もう大丈夫だよ。セクハラストーカー美少女はもう寝たから。ほんとに君にご執心だね、あの子」


 「エリちゃんにはもう少し節度というものが必要ですね」


 一つの布団の中で会話している。男女が同じ布団に入っているが、俺と彼女は普通の男女とは違う信頼で結ばれている。俺が彼女に押し付けているリスクを考えれば、これ以上彼女の負担になるような真似はしたくなかった。布団の中で彼女の息が落ち着くのを待った。彼女の頬に手の甲を触れた、特に考えずに自然にしてしまった行為だった。


 「今日か明日、俺は頑張るから、結果は受け入れる。だから君は気にしなくていい」


 彼女はその手に頬を顔をゆっくりと押し当てた後、


 「あなたを信用します。そして戦います」


 気持ちを教えてくれた。


 俺の布団から出た彼女は、距離を取って横になった。互いに腕を伸ばし、手の指を少しだけ絡めて、俺は眠りにつき、彼女は待った。


 十分ほどで、俺の姿は消えた。





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