カバーするおじいちゃん
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少し外が明るくなってきている。
早朝、旅館の玄関では、
会場に持っていく荷物を並べていく、とある2人組。
ワタシと・・・ケンさんだ。
「まだ予定の時間より早いですけど、どうしたんですか〜?」
「新人が早く来て準備するのは当たり前だろ!」
恐らくケンさんも、
昨晩は寝れなかったのではないかとワタシは勝手に思っている。
早朝にもかかわらず、2人組の仕事ぶりはとても良く、
旅館のみんなが予定の時間に集まる頃には、
準備は終えてしまっていた。
「おはようございます。あら、2人共早いわね」
「おはようございます。サイトウおばちゃん。
もう準備は完璧だよ!」
予定していた出発の時間まで、まだ余裕がある。
玄関に集まったみんなは、どこか落ち着かない様子で、
ぐるぐると歩いていたり、立っていたり、座っていたりしている。
その状況を変えたのは、
女将のいつもより気合の入った声であった。
「おはようございます。本日は待ちに待った本番です」
「いつも仕事でやっているように、いらっしゃるお客様を楽しませることが私達のやることです」
「ただ今回の場合は・・・」
気合の入った言葉を言っていた女将が、少し間を置いて続けた。
「・・・私達も楽しみましょう」
恥ずかしかったのであろうか、声が小さくなっており、
聞いていたみんなは、唖然としている。
「お〜」
女将ではない小さな声が聞こえた。その声が聞こえた方向を見てみると、
おじいちゃんであった。妻のカバーをする優しい夫である。
「お〜!」
ワタシも続けて言うと、他のみんなも続いた。
「よし、やってやるわよ」
「がんばりましょう!」
予定より早いが、お祭りの会場に向かうことになった。
旅館から会場まで、そう遠くはないこともあり、
荷物を分散して、みんなで持っていく。
「忘れ物はないかしらねぇ〜」
「ダイジョウブですよ。忘れていたら、私が取りにいきますよ」
確かに忘れ物があってもこの距離なら大丈夫ではあるが、
何より「侍」という文字が描かれているTシャツを着ているジャックがいるからこそ安心できる。
「頼むよ。サムライさん!」
「カッコいいですよね、このTシャツ」
各々が荷物を持ち、いざ出発だ。
玄関の扉を開けて、自分にも気合を入れるためにワタシは叫んだ。
「しゅっぱ〜〜つ!」
・・・
・・・あれ?
「お〜」
反応してくれたのは、孫をカバーするおじいちゃんであった。
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