毎年、毎年おこなっていること
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受付のトビラから見える小さなフレームは、”桜”を写している。
朝の部屋掃除を終えたワタシとジャックは、
ソファにうなだれるように座り、その景色に魅了されていた。
「キレイですネ〜」
「花見にでも行きたいね〜」
「美しいものには棘がある」ではないが、少し時間が経つと、散った花びらの掃除をしなくてはならない。
秋~冬の季節も紅葉に魅了された後に、その落ち葉には悩まされたものである。
「タケ、ジャック、ちょっといらっしゃい」
「何ですか女将?」
「タケさん、私たちナニカしましたか?」
「いや・・・してないと思うよ」
確かにジャックが呼ばれるのは珍しい。
女将に言われて休憩室に向かうと、ワタシたち2人以外の全員は集まっていた。
何か深刻なこともあったのであろうか。
「今年もこの時期が来たか・・・」
「そうですね・・・」
おじいちゃんとサイトウおばちゃんが、頭を抱えている。
ワタシ、ジャック、ケンさんの3人は、何がなんだか理解が追いついていない。
「今年も何をするかを考えないといけません・・・」
「・・・女将、え〜と何の話ですか???」
頭に?マークが出ている3人の代表としてワタシが先陣を切った。
「女将!今年はこの3人にやってもらうのは、どうですか?」
「私達も・・・もう体がね。動かなくなってきてるからね〜」
ワタシの問いに誰も答えることなく、
サイトウコンビが何かをワタシたちに任せようとしている。
「新人3人にできるかしら、しかもジャックは大学生」
「まあ、どうとでもなれでええんじゃないか?」
おじいちゃんの「どうとでもなれ」に女将は納得しているようだ。
「さてそれでは3人には・・・」
3人が同時につばを飲み込む。
「”屋台”を出してもらいます」
この地域では毎年春に、”温泉祭り”が行われている。
地域の人々は祭りを盛り上げるために、それぞれが考えて”屋台”を出している。
毎年、毎年行われているため、同じものを出してもいいのだが、女将のプライドがそれを許さないみたいだ。
違うことをすることにこだわり、毎年旅館スタッフは頭を抱えているとのことだ。
何だか学祭みたいで少しワクワクしてきたのはワタシだけでなく、
ケンさん、ジャックもそのような雰囲気が感じられる。
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