妹との会話
お越し頂きありがとうございます!
ミレイの助けもあり、午後の風呂掃除は予定の時間より早く終えることができた。
「は〜〜、つかれた。タケルはこれを毎日してるのか〜」
「まだまだこれからだよ〜」
ワタシも働き始めた当初はサイトウコンビに毎日のように嘆いていたことを思い出す。
少しづつではあるが、ワタシも成長をしているのかもしれない。
「ねぇ久しぶりにあそこ行こうよ」
「あそこ?」
「秘密基地!」
秘密基地とは、旅館から少し歩いた所にある展望台のことである。大きな展望台ではないため、さほど観光客の人も多くはなく、ワタシ達兄妹の幼い頃の”遊ぶ場所”となっていた。
「女将、サイトウおばちゃん、少しだけ外出してきます」
「なるべく早く帰ってくるようにね」
「わかってるよ。おばあちゃん。もう子どもじゃないんだから」
「行ってきます」
展望台までは歩いて10分ぐらい、いつも歩いて目指す湯けむりとは逆の方向に向かう。
「外は寒いね〜」
「すぐ温まるでしょ」
展望台までは登道となっている。到着する頃には体も温まり、ちょうど良くなるだろうと思っていたが、気づくと到着していた。幼い頃の記憶では、長かった道のりも今では早く感じてしまう。
「うわ〜久しぶり。やっぱり景色いいね。ここ」
ワタシはこの場所の存在を忘れてしまい、働き始めて来ていなかった。ここからは町の全体が見え、旅館、湯けむりも見える。幼い頃に当たり前だった場所が、このようによく感じるのはワタシが少し大人になったからであろうか。
「ミレイはこれからどうするの?」
「とりあえずまた留学行くよ。タケルはどうするの?」
先程の母親のことを思い出す。
「母さん、何か言ってた??」
「これで良かったのかって心配してるみたい。お母さんが旅館を継いでいたら、タケルは別のことができていたんじゃないかってさ」
もっと重い話かと思っていたが、そんなことで悩んでいたのかと安堵する。
ワタシは強制的にこの場にいる訳ではない。自分で選択してこの場にいる。
「大丈夫なのにな〜」
「でしょ?私もそう言ったの。直接言ってあげてよ〜」
「うん。わかった。じゃあ、そろそろ帰りますかね」
旅館に戻り、すぐに着物に着替える。そろそろお客様が到着される時間だ。ミレイはうれしそうに着物姿になり待機している。
ガラガラ。玄関の扉が開く。
「いらっしゃいませ!」
「Ah〜, よろしくオネガイします!」
「Hello. Thank you for coming.」
ミレイが獲物を狙うが如く飛びついた。女将が少し慌てているのを感じ、ワタシが透かさずフォローをする。
「ミレイ。私と行くよ。お客様こちらになります」
ミレイの少し危うい感じは、ワタシがここに来たときの様子に近いのかもしれない。
「ナイスフォローね。タケちゃん。女将見てましたか?」
「もうそろそろ一年経ちます。成長してもらわないと困りますよ」
少しづつ、少しづつ、タケルは成長している。
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