再会
「――着きました」
ノベルは、アリサの声で無意識に動かしていた足を止める。
目の前に立つ立派な屋敷は、ホロウ商会のものだ。
エデンで最も信頼のおける男、リュウエンの協力を得ることがこの戦いを左右すると言っても過言ではない。
緊張の面持ちでノベルが屋敷に入ると、一階では商会員たちが忙しそうに動き回っていた。
ある者は書類の束を机に積み重ねて必死に目を通し、ある者は若手の男たちへてきぱきと指示を出している。
ピリピリとした雰囲気で穏やかではない。
そもそも、この遅い時間帯に会員たちが残って忙しそうに仕事をしていることが異様だった。
「なにかあったのでしょうか?」
「そうかもしれない。これは普通じゃないな」
会員たちは忙しさのあまり、屋敷内に現れた二人に気付かない。
ノベルがリュウエンの執務室へ行こうと歩き始めると、どこからか野太い叫び声が上がった。
「――あぁぁぁっ! ランダー王子ぃっ!」
ノベルはビックリして足を止める。
会員たちも手を止め、キョロキョロと周囲を見回した。
そしてようやくノベル――ランダーの存在に気が付いたようだ。
大声を上げた人物は、二階へ続いている階段から慌てて降りて来た。
「ハ、ハンガス!?」
白髪を角刈りにした恰幅の良い大男。
間違いなく、ランダーがかつて投資していたハンガス工房の店主ハンガスだ。
ハンガスは周囲のホロウ商会員たちがざわついているのを見て、大声で叫んだ。
「おらお前らっ! 油売ってる暇なんてないだろうが!」
そう叫ぶと、会員たちは渋々と自分の仕事に戻っていく。
ハンガスはランダーの元まで歩み寄ると、苦笑しながら後頭部を掻いた。
「いやぁ大声出してすんません。まさか、またランダー王子に会えるとは思わなかったものですから」
「それは僕も同じ気持ちだよ。でも、どうしてハンガスがホロウ商会に?」
「話すと長くなるので、歩きながらでどうでしょう? どうぞこちらへ」
ハンガスはそう言って、ランダーに背を向け歩き出した。
どうやらリュウエンの元へ案内してくれるようだ。
ランダーとアリサはその背中を追う。
リュウエンの執務室へ向かう途中、ハンガスは今までの経緯を話した。
ランダーが行方不明となった後、国は彼の投資していた商会から出資金をすべて取り上げたが、その後すぐに金庫番からの特別融資を許可した。義理堅いハンガスはこれを一度拒否したものの、諸経費の支払いや融資を断ったことによる影からの圧力などにより資金繰りが悪化。そして遂に破産してしまう。
すべてを失い、当方に暮れていたところを救ったのが、リュウエンだったというわけだ。彼もランダーのことを信じており、ランダーが戻ったあかつきには、再びハンガス工房をやり直そうと言ってくれたという。
ランダーは胸が熱くなった。
「そうだったのか。今まで信じてくれてありがとう」
「俺のことはいいんです。その言葉は、リュウエンさんにこそかけてやってほしい。だから――」
リュウエンの執務室に辿り着き、中に入るとそこにいたのは、リュウエンではなかった。
「っ!? ランダー王子!?」
「あなたは確か……」
「ホロウ商会の副会長アウルです」
リュウエンのかつて座っていた場所には、四十代ほどの中年の男アウルがいた。
その違和感に、ランダーはたまらなく嫌な予感がした。
彼に促され、応接用のソファに向かい合って座ると、ランダーは単刀直入に問う。
「いったいなにが起こってる? リュウエンさんは? ホロウ商会のみんなは、なんでこんな夜遅くに働いているんだ?」
「……実は、リュウエン会長が騎士団に捕まりました。部下たちが集めているのは、騎士団から提出を要求されている、我が商会のすべての取引の記録です」
「バカな!? なんでそんなことに!?」
「すべての原因は、新通貨です。ランダー様もその噂は耳にしているかと思います」
ランダーは目を見開き言葉を詰まらせた。
ゆっくり頷くと、アウルは続けた。
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また、完結済作品
『転生の設計士 ~科学と魔法が融合するとき、異世界の逆転劇が始まる~』
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