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痛恨のミス

 それから数日がたった。しかし、マルベスはいつになっても返答を寄越さない。

 屋敷へ伝令係を送っても、「会長は忙しいから」と下っ端の会員が応対し、「議論に時間がかかっているからもうしばらく待て」と追い返される。

 そうこうしているうちに時間は過ぎ去っていく。

 このままでは、コロッサルが本格的に戦の準備を始めてしまうかもしれない。そうなると他の武器商人たちも武器の調達を始めて市場に参入し、先行者優位の状況が無に帰ってしまう。

 ルインたちは焦り始めた。


 そして、それから数日も経たずに動きがあった。

 その日、ノベルがキースから借りた歴史書を自室で読んでいると、イーリンが「ノベルさん! 大変なことになりましたわ!」と、慌てた様子で駆けつけてきた。

 ノベルは嫌な予感を感じ、イーリンから事情を聞く前にスルーズ商会の屋敷へ走る。

 商会長の執務室に入ると、ルインは頭を抱えていた。


「い、いったいなにがあったのですか?」


「ノベルさん……マルベスさんにしてやられました」


 ルインの弱々しい声に、ノベルの緊張感は高まる。

 聞きたくないという心の声を抑えながら問う。


「まさか、この土壇場で契約を拒否してきたんですか!?」


「いいえ、もっとたちが悪い」


「え?」


「彼ら、内々に金庫番から融資を受け、武器を調達していたのです。マルベスさんが忙しいと言っていたのは本当だったんですよ」


 ノベルに衝撃が走り息が詰まる。

 マルベスは最初から契約などする気はなかったのだ。

 こちらから情報さえ引き出せれば、後は自分たちだけの力で利益を勝ち取るつもりか。こちらの投資を受けていない以上、スルーズ投資商会へ払う配当など微塵もない。


 ノベルは完全に自分のミスだと思った。

 交渉の場でのマルベスの勢いに飲まれ、情報を話してしまったのがすべて原因だ。

 評価額にしたらかなりのものになる情報を、タダで与えてしまったのはかなりの大損だ。


「僕のせいです……申し訳ありません」


「いえ、こちらもマルベス商会の動きを探っていたのに、気付くのが遅くなってしまいました」


「とにかく、契約書だけでも回収に行きましょう。あとせめて、情報料だけでも払ってもらわないと」

 

 今さらこの情報を他の武器商会に話しても、武器の調達には間に合わない。

 おそらくマルベスは、これを狙って裏で動いていたのだ。


「そ、そうですね……すぐに向かいましょう」


 護衛にアリサを連れ、ノベルとルインはすぐにマルベス武装商会の屋敷へ向かう。


 ――着いたときには遅かった。

 屋敷内ががらんとしていて、まったくと言っていいほど人がいない。

 ルインは険しい表情で大きく息を吸い、一階の階段に腰掛けて休憩していたスキンヘッドの男に問う。


「マルベス会長はいらっしゃいますか?」


「はい? 今はいませんが」


 スキンヘッドの男は立ち上がり、淡々と答えた。

 マルベスたちは、つい先ほどコロッサルへ向かったという。

 ノベルは後ろで思わず呟いた。


「なんてスピードだ……」


「せ、せめてうちの契約書だけでも返して頂けませんか?」


「はぁ、下っ端の俺にはなんのことか分かりませんね」


 ルインの問いに、男は表情も変えず淡々と答える。

 まるで、あらかじめ応対の仕方を指示されていたかのようだ。

 マルベスの部屋に入らせてもらえるわけもなく、ノベルたちはなんの成果も上げられないまま、屋敷を出て行くしかなかった。


「なんてことだ……」


 ノベルは重苦しく呟く。

 彼の痛恨のミスは、マルベスの手腕を過小評価していたことだった。

 そして同時に、マルベスをどうしても仲間にしたいという願望が心の奥底で芽生え始めていたのだった。

気に入って頂けましたら、ブックマークや評価をよろしくお願い致します。

みなさまの応援が創作活動の糧になりますのでm(__)m


また、完結済作品

『転生の設計士 ~科学と魔法が融合するとき、異世界の逆転劇が始まる~』


https://ncode.syosetu.com/n0778fw/


も、よろしくお願い致します。

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