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闇の通貨

用語解説

・通貨について

国が発行する通貨とは、その国の信用であり経済をコントロールするもの。

それは、国が資金としての一定の価値を認め、急にくつがえる恐れがないからこそ信用があり、通貨として成り立っている。

また、国の権限で通貨の発行数や政策金利を操作でき、それによって経済をコントロールしている。

 スルーズ投資商会は少しずつだが、着実に前へ進んでいた。

 屋敷の会議室で、ノベルはアルビスからの進捗報告を受ける。

 

「投資先の商会の売り上げは順調です。まず、ピッケル鍛冶商会ですが、機能性やデザインという面でそれなりの人気を誇っており、テラ通貨安であることもあって、現地の商会は大量に購入してくれています」


 ピッケル鍛冶商会は、ノートスの外れにある装備品生産を主に取り扱う製造業の商会だ。

 先日、地方の小さな国の森の奥で鉱山が見つかったという情報を得たスルーズ商会は、ピッケル鍛冶商会に投資し、その情報を与えて鉱夫用のつるはしやメット、ブーツなどの専用装備を作るよう提案した。

 テラ通貨が安いこともあり、現地の店は多く仕入れられるからと、それなりに取引できているようだ。

 

「次に――」


 他にも、装飾品を取り扱う店などにはミスリル価格高騰の予想により販売不振となるところを、あらかじめリスクヘッジとしてミスリルの所有券を買い付ける提案をして経営を安定させたりと、オーナーとして上手く立ち回っていた。

 今のところはノベルの意見によるものも多いが、ルインもその手法をしっかりと学んでいた。


「それでは新たに仕入れた情報について、説明致します」


 ノベルが手元の書類を読んでみると、今回も多くの最新情報が集まっていた。

 それもそのはず。

 スルーズ投資商会は、商会や店に投資しつつも、ノートスでくすぶっている優秀な情報屋を見つけ、高い報酬を提示して雇い入れているのだ。

 上がってきた情報の中でも、ノベルの興味を引いたものが二つ。


「闇通貨?」


 それは闇市場を中心に広まっているという、闇の通貨の情報だった。

 なんでも、テラ通貨やジール通貨など、国の権限で金庫番が発行している通貨とは別に、一部の闇市場だけで使える謎の通貨が出回っているという。

 あまりにも怪しい情報だが、これを集めてきたのは、キースが個別に雇っている情報屋のようだ。おそらく血酒の一件も、この独自の情報網で嗅ぎつけたに違いない。

 ノベルが疑うような目をキースに向けると、彼は肩をすくめた。


「裏の世界の情報なもんで、不確かなことも多いが、それでもなにかが動いているのは間違いない。闇市場でしか使えない通貨なんて作って、どうしようってんだか……」


 そう言ってキースは興味もなさそうに首を振る。

 しかしノベルには、陰謀のようなものを感じていた。


「キース、国の通貨に対して、その闇通貨がどのくらいの価値なのか分かるかい?」


「そこまではなぁ……ただ、闇市場に置いてある食品で、最近初めて取引が成立したらしいけど」


「少しずつ通貨としての価値が認められているってことか……」


「どうだかね。オリハルコンやミスリルみたいな、通貨の代わりになるものは他にもある。その闇通貨ってのが表にまで出回ることはないだろうよ」


「それは同感だね。そもそも通貨は国の信用であり、経済をコントロールするもの。そんな出所不明の怪しい通貨なんて、政治家たちが許すとも思えない」


「まったくだ。国家の支配を揺るがすことだからな」


「けど、どうもきな臭い。キース、その出所を継続して探ってくれないかい?」


「時間はかかるけどいいか?」


「もちろん」


 キースは真剣な表情で頷いた。

 話についていけず、ポカンとしていたイーリンが、小さな声でルインに問う。


「お父様、つまりどういうことですの?」


「イーリンには難しいだろうから、また後でゆっくり説明するよ」


 ルインは苦笑した。

 彼女が理解できないのも仕方ない。

 特に経済の衰退しているこの国では、学べる機会は限られるはずだ。

気に入って頂けましたら、ブックマークや評価をよろしくお願い致します。

みなさまの応援が創作活動の糧になりますのでm(__)m


また、完結済作品

『転生の設計士 ~科学と魔法が融合するとき、異世界の逆転劇が始まる~』


https://ncode.syosetu.com/n0778fw/


も、よろしくお願い致します。


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