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ファイナンシャルファンタジー -逆襲の投資家-  作者: 高美濃 四間
第三章 ダークマターショック
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歴史が見せる未来

 屋敷の会長席で静かに待ち、その報告を受けたルインは思わずというように勢いよく立ち上がった。


「イーリン、それは本当かい!?」


「ええ、ノベルさんも確認しています。間違いありませんわ!」


 ルインとイーリンは、親子そろって嬉しそうな笑みを浮かべている。

 連絡を受け、会長の執務室まで飛んできたアルビスも、目頭を押さえて肩を振るわせている。

 アリサもノベルに小さく「やりましたね」とささやき、ノベルは満足げに頷いた。

 ルインは感動に潤んだ目をノベルへ向ける。


「先ほど、オリファンの軍隊がヴァルファームの領地へ侵攻を始めたとの情報が入りました」


「それが原因でしょうね。予想が的中して良かった」


 ノベルはホッと安堵のため息を吐く。

 ようやく不安な日々から解放された。

 これで値動きが気になって神経質になり、寝つきが悪くなるということもなくなる。

 それはルインも同じだろう。

 彼も最近は、目の下のクマが目立つようになって、より痩せこけていたのだから……


「こんなに歓喜したのは久しぶりです。これもすべてノベルさんのおかげ。心より感謝申し上げます」


 ルインは頭を下げ、イーリンも父の隣に並んで、ロングスカートの裾をつまんで優雅に頭を下げる。

 ノベルは首を横へ振った。


「いえいえ、ルイン商会長のご英断あってこそですよ」


「ありがとうございます。それでは早速、決済に向かわせますか」


「待ってください」


「はい?」


「売るのは早すぎます。もう少し様子を見るべきでしょう。まだ上がる可能性は十分にありますよ」


「なるほど、それもそうですね」


 ノベルの提案に、ルインは納得したように頷く。

 金融の取引で利益が出ると、嬉しいという気持ちと、早く利益を確定させたいという気持ちが芽生える。

 ここが大きな落とし穴だ。大きく感情が動いたことで冷静な判断を失ってしまう。凄腕の投資家というのは、損益に左右されず、どこまで値が動くのかを冷静に分析し、己の決めた判断基準を最後まで守って取引できるもの。

 

「これからは、オリファンとヴァルファームの戦いを注視しましょう。些細なことでも、市場を動かす原因になるかもしれない」


「かしこまりました」


 ルインは、アルビスに的確な指示を出し、オリファンへ派遣する会員の人数を増やした。

 ここからは出口戦略が重要になる。


 ノベルも毎日の戦況について、独自に情報を集めた。

 ダークマターの価格はさらに上昇していき、オリファンがヴァルファームの領地の一つを攻め落としたことで、記録的な暴騰へ至った。

 このとき、スルーズ商会の利益は元手の三倍を超えていた。

 この世界の価格変動の激しさのおかげでもある。


「――まさか、ここまで高騰するとは……ノベルさん、あなたは未来が見えるのですか?」


「そんなことはありませんよ。経験と知識と、未来を先読みするための考え方を鍛えただけです」


「なんとも末恐ろしい」


 そう言ってルインは苦笑する。

 ダークマターの高騰で浮ついているかと危惧していたが、どうやら落ち着いているようだ。

 それこそ、商会長を務める者の資質なのだろう。

 ノベルは意を決して告げる。


「今こそ、所有券を手放すときです」


「……そうですか。その理由をお聞きしても? 利益が元手の三倍を超えたからですか?」


「いいえ。金額での判断はしません。ダークマターの価格高騰がそろそろ天井をつけると予想したからです」


 ノベルの大胆な発言に、ルインはわずかに眉を寄せた。

 

「なぜですか? 集めた情報では、ヴァルファームの勢いは衰えるどころか、先日の領地奪取で勢いづいていると言います。これでもし、本当にダークマターの鉱山がオリファンによって奪われでもしたら……」


「それはないと思います。ルイン会長は、ヴァルファームの長い歴史をご存知ですか?」


「一般常識の範囲でしたら」


 ルインはわずかに怯んだ。

 あまり自信はなさそうだ。

 ノベルはキースから教わった、資源国ヴァルファームについて語り始める。


「ヴァルファームに住むエルフたちは、争いを好まない。だから普段から、戦の備えは最低限に留めていることで、奇襲に合えば陥落してしまうこともある。しかし彼らは眠れる獅子。長寿のエルフ族が蓄えてきた知識と、代々一族に伝わるという魔法を駆使すれば、そう簡単に負けはしません。その証拠に、彼らはこの数百年、戦争に巻き込まれても最終的には鉄壁の防御で自国を守り抜いてきた。つまり、ヴァルファームが自ら攻め入るようなことをしない限り、負ける可能性は低いんですよ。たとえ、端の小さな領地を取られたとしても、国の最重要資源であるダークマターの鉱山は必ず守り抜くはずです」


 ルインはノベルの言葉に聞き入っていた。

 詳細な歴史については、キースから得た情報だが、ノベル自身もヴァルファームが負けるなどということは、最初から思っていなかった。

 そのおかげでキースから出資を引き出せたのだ。


「なるほど、勉強になりました。つまり、オリファンとヴァルファームの戦はもうじき終わると予想しているのですね? そうなれば、高騰していたダークマターの危機も緩和し、価格は落ちると」


 ルインが感心したように言うと、ノベルは深く頷いた。

 

「僕の予想では、オリファンが今回の侵略で成功した理由は、迅速な襲撃があったからこそだと思います。おそらく次はない」


 ルインはすぐに部下を呼び出し、大事に保管していたダークマターの所有券を全額決済するように命じた。

 結果は上々。利益は元手の三倍以上だ。

 これなら、スルーズ商会の負債を返しつつ、次の事業に手を広げることができる。

気に入って頂けましたら、ブックマークや評価をよろしくお願い致します。

みなさまの応援が創作活動の糧になりますのでm(__)m


また、完結済作品

『転生の設計士 ~科学と魔法が融合するとき、異世界の逆転劇が始まる~』


https://ncode.syosetu.com/n0778fw/


も、よろしくお願い致します。

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