共同出資
「――なるほどね」
話し終えると、キースは興味深そうに目を細めた。
ノベルは意を決して立ち上がり頭を下げる。
アリサもそれに続いた。
「もし可能であれば、僕たちに投資してもらえないだろうか?」
キースは腕を組み「う~ん」と軽く唸る。
だがすぐに、困ったように眉尻を下げ告げた。
「まだ足りないかなぁ」
「……足りないというのは?」
「出口だよ」
キースは諭すような口調で言った。
しかしノベルには、彼の危惧していることがまだ分からない。
「ダークマターの高騰を狙うのはおもしろいし、その予想の立てた方も独自の発想で凄く興味を持った。それに一枚噛めるのならぜひとも……と、言いたいところだが、まだ利益を取りきれる信頼性がない」
「どういうこと?」
「仮に、ダークマターが本当に高騰したとしよう。では、買って含み益の出ている所有券は、どのタイミングで手放す? タイミング次第では、とてつもない利益を狙うこともできるし、欲をかいて反動による急落に巻き込まれて大損するかもしれない」
ノベルは瞠目した。
キースは想像以上に先を見据えているのだ。
金融の世界では、連続して値が上がり続けているということはなく、必ずどこかのタイミングで調整売りという下落が起きる。それが一時的なもので再度上昇するのか、それとも再び元の値まで戻すのかは、注意しておかなければならない。ゆえに、所有券を売るタイミングもかなり重要なのだ。
キースが瞬時にそこまで考えたことに、ノベルは少なからず驚いた。
「もちろん、手放すタイミングは考えてある。それは――」
ノベルの戦略を聞き、キースは頷いた。すると彼は立ち上がり、書棚から一冊の分厚い本を取り出してテーブルに置く。
それは、資源国ヴァルファームの歴史について書かれたものだった。
「そのタイミングで俺もいいと思う。ただ、根拠が薄いな」
そう言ってキースは、なにかを企んでいるかのような薄い笑みを浮かべ、本を開いてヴァルファームの歴史について説明した。
それを聞き、ノベルは自分の考えが間違っていなかったことと、キースの博識さに舌を巻いた。
そしてキースは、妖しげに目を光らせる。
「まったく、どうしてそんな面白い話をもっと早く教えてくれなかったんだ……まだ間に合うよな?」
「キース?」
「儲け話の礼だ。俺がどうやって稼ぐか教えてあげよう――それは『投機』だ」
その一言で、ノベルはすべて納得できた。
投機とは、機会に資金を投じること。所有券取引や為替取引などで、過去の統計的なデータや世界情勢の変化から、値動きを予測して売買することでその差益を狙う。
現代でいうところの専業トレーダーのデイトレの印象に近いかもしれない。
となると、書棚に詰まっているのは、過去の値動きのデータや情報紙、金融や経済に関する書物だろう。
キースがかなりの実力者だということは、今日の言動から優に想像できた。
キースはノベルたちと共に、まず金庫番へ訪れ、ノベルの融資金返済にはキースの金庫番口座から引き落とすよう契約した。
担当の獣人が目を丸くしていたのも無理はない。
それを軽々とやってのけるキースの資産は底が知れないと思った。
また、それとは別に大金を引き出し、その足でスルーズ商会へ。
キースは正式に、スルーズ商会への出資者となり、彼が渡した金で新たにダークマターの所有券を買い付けさせた。
しかしノベルは、キースほどの男であれば自分で取引した方が早いし利益もすべて独占できるのに、と疑問に思い本人に聞いてしまう。
すると、彼は笑いながら、
「おいおい、俺を見くびらないでくれよ。そこまで厚顔無恥じゃない。君らの情報がなかったら、今回の取引に乗っかることなんてできなかった。だからこれは、その対価だ。」
そう言った。
そうしてノベルは、信頼できる共同出資者を得ることに成功したのだった。
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また、完結済作品
『転生の設計士 ~科学と魔法が融合するとき、異世界の逆転劇が始まる~』
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