渦巻く陰謀
真夜中の豪邸。
ランタンも点けていない真っ暗な居室で、ノートスの財務大臣『キンレイ』と闇商人のように全身を黒装束で覆い隠した、謎の女が密談していた。
「鼻の利きすぎる犬にも困ったものです」
「ふんっ、忌々しい。オークどもはどうなった?」
「『自害』しましたよ。カルキスの末路を聞いてね」
キンレイは二ヤリと愉悦に満ちた笑みを浮かべた。
自害したというのは嘘で、裏から手を回したであろうことは、想像に難くなかった。
女は興味なさそうに「そうか」と呟く。
「その獣人には褒美でも渡したか?」
「まさか。そんなもの、わしが握りつぶしましたとも。小遣い程度の報奨金を渡された奴の顔は傑作だったと、騎士団長も言っていました。自分の目で見てみたかったものです」
「くだらんな。そいつの待遇はそのままか?」
「いえ、それなりの手柄ということで、やむを得ず昇級させました。さぞ喜んだでしょうな。犬の分際で出世できるなんて夢見るバカな男ですから」
「それは困るな」
「……はい? それはどういうです意味でしょうか?」
「その獣人が次もまた首を突っ込んでこないよう、この国から追放すべきだろう」
「はぁ……おっしゃることは分かりますが、それなりの理由がないと、それは厳しいですな」
キンレイは苦笑し額の汗をぬぐう。
女は、抜き身のナイフのように鋭い眼差しをキンレイへ向けた。
「やりようはいくらでもある。手柄を立てたことを理由に、他国へ飛ばせばいいだろ」
「な、なるほど。栄転だとでも言って、ド田舎にでも飛ばしますか」
「バカか貴様は。そんなことしたら、怒りと憎しみを植え付けることになる。そんな手合いは、なにをしでかすか分からないぞ。しっかりと牙を抜け」
キンレイの静かな苛立ちに怯え、キンレイは委縮する。
なんとも肝っ玉の小さい男だ。
「そ、それでは、ドルガンあたりにしますか」
「それでいい。あともう一人、オークの下でコソコソと這いずり回っていたネズミがいたはずだが?」
「ああ、あの投資家気取りの無職ですか? あんな貧民、放っておいても問題ないかと」
「ダメだ。潰せ」
女は有無を言わさない迫力で告げた。
キンレイは顎に手を当て、しばらく頭を悩ませるとなにかを思いついたのか、酷薄な笑みを浮かべる。
「承知しました。なにはともあれ、先に不安要素があぶり出せて良かったです」
「まったくだ。例の件、決してしくじるなよ?」
念を押すように女は告げると、まるで霧のように音もなく闇夜に溶け込み去って行った。
「もちろんですよ、パラミシア殿」
一人になった真っ暗な部屋で、キンレイの邪悪な笑い声が響く。
パラミシア・サナトス。
このノートスの経済に一石を投じ得る、恐るべき者の名だ。
「ふはははははっ! サナトス家の力さえあれば、次の宰相の座は、このキンレイのものだ――」
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また、完結済作品
『転生の設計士 ~科学と魔法が融合するとき、異世界の逆転劇が始まる~』
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