ガイとドリーその1
ある村にガイとドリーの兄弟がふたりで住んでいました。
両親はすでに亡くなっていましたが、ふたりは楽しく暮らしていました。
5つ年上のガイは、何事にも一生懸命で、村人からも信頼されていました。
ドリーは少し臆病ですが、歌をこよなく愛していて、いつも楽しく唄っていました。
そんなある日、ガイが村外れの大きな高い山に登ってみたいと言い出しました。ドリーは「大変だし怖いからやめようよ」と言いましたが、「あの高いところからだったら絶対素晴らしい景色が見えるはず、ドリーと一緒に見に行きたいんだ」とドリーを説得しました。ドリーはしぶしぶガイについていく事にしました。
登りはじめてしばらくすると、木こりのおじさんたちに会いました。木こりのおじさんたちは、「ふたりだけだと危ないからやめなさい」と家に戻るように言ってきました。ドリーは「戻ろうよガイ」とガイに言いますが、ガイはおじさんたちに「この山の頂上の景色が見たいの、見たらすぐ戻ってくるから」と一生懸命に訴えました。
そんなガイの情熱を感じ取ったか、おじさんたちは「それじゃ気をつけて行きな」と言って山の中に消えて行きました。
ふたりは、また頂上へむかって歩き出しました。しばらく歩き出すと道の真ん中に猪が数頭、こちらを睨んで、「ふー、ふー」と唸り襲いかかろうとしています。その時、ガイの後ろの方から美しい歌声が聴こえてきました。ドリーが猪にむかって優しく包み込むように唄っています。猪はその声を聞くと大人しくなり、また山の中に走って行ってしまいました。
またふたりは元気良く山頂にむかって歩き出しました。