第十九話 聖夜憎悪
投稿日(12/25)は、クリスマスです。
内閣総理大臣の私としては、童貞・処女のみがプレゼントを受け取る権利があると思います。
セックスしたのにプレゼントまで貰おうなどという強欲かつ傲慢な厚顔無恥のクソカップル共に告げます。
彼氏の家でシャンパン片手に「メリクリ〜!」ではなく、私の家で灰皿にうんこしながら「おちんぽ〜!」と叫びなさい。
P.S.私は今、ケンタッキーの骨なしのアレを咥えながら笑顔を浮かべております。日本は今日も健康です。
「朗報だ!」
「なんだピカロ」
「この作品、なろう運営様に認知されている可能性があるぞ!」
「いや流石に、とんでもない数の作品があるから、小説家になろうの運営も全部には目を通せないだろ」
「しかし、先日、メールが届いたんだよ運営様から。『第十七話 山下智久』にて、歌詞を掲載してるから、ガイドライン違反ですよーって」
「ああ、そうだった。読み返してる読者なんぞ1人もいないだろうから、この最新話を読んでる人は気づいてないかもだけど、第十七話のタイトルが『全力陳謝』に変わってるし、該当部分も変更されてるからな」
「ええ。運営様によって、この作品が検索除外設定にされてしまったのでね、潔く変更しました。権力には逆らえない」
「情けない主人公だな」
「元はと言えば『愛、テキサス』を歌ったお前が悪いんだよシェルム!」
「……多分、作品が運営に認知されてるわけではなくて、普通に通報とかされたんじゃないのか? こんな下っ端の作品にまで目を通してるとは思えない」
「運営様をバカにするな。鼻を殴るぞ鼻をォ!」
反省しているのかしていないのか。最近、何を書こうか悩んでいた作者に届いた警告メールをネタになんとか書き始めることに成功した第十九話。
物語を進めよう。
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「試合終了ー! 勝者、魔剣士科1年、シェルム・リューグナー!」
Bブロック第2回戦第2試合、シェルム・リューグナーVSカルード・アルゴは、文字通りの瞬殺にて、シェルムが勝利をおさめた。
特筆すべき点もなく終わったということ、相手選手の過去などを描写するのが面倒なことなどが理由で、さっそくカルード選手は役目を終えた。
「さてさて、続きましては第3試合! 魔剣士科1年イデア・フィルマーVS騎士科1年サイデス・ノルド!」
シェルムが在校生用の席に戻る頃には、次の試合が始まろうとしていた。
ステージに上がるイデアとサイデス。心なしか、第1回戦の時よりも、イデアの顔色が良いように見える。
時間の経過が、魔力の定着に寄与したのだろう。
サイデス・ノルドを一言で表すのならば、まさしく巨漢。ピカロたちと同年代とは思えない身体つきで威圧し、萎縮させる。戦闘前から相手の戦意を削ぐ。
無論、仮面の男やシェルムと相対して“本物”の恐ろしさを知るイデアからすれば、面積の大きな奴だなぁとしか感じないが。
「女を斬るのは趣味じゃない」
サイデスは見下す。物理的にも、精神的にも。
「俺の趣味は、女を殴ることだ」
最低の宣言が飛び出た直後、ザイオスが試合の火蓋を切って落とす。
「試合開始!」
「腹殴ってやっからしょんべん漏らせぇ!」
大きく振りかぶったアッパー。サイデスの太い腕が唸り、岩のような拳が風を切る。
対するイデア──向かってくる拳めがけて拳を振り下ろす。
イデアの腕、2、3本分はあるのではないかと思わせる筋肉の塊が、宙で止まる。
威力、相殺。
「……強い女は、嫌いじゃねぇ」
ニヤリと笑ったサイデス──肌が紅潮していく。
「お前みたいな、男にも負けませんっつー顔してる女をよ、ボッコボコに力で叩きのめすのが大好きなんだよぉ」
──まさかの、勃起! 2話連続!
涎を垂らすサイデス。拳を握り直し、ラッシュが始まる。
騎士科に所属しているとは思えない、単純な暴力。筋肉ダルマの体から、蒸気が登る。盛り上がった筋肉が、興奮を、歓喜を原動力に、目の前の女を潰そうと躍起になる。
ことごとく相殺。虚な目つきのイデアは、肩の力を抜き、最小限の力を込めて対応する──本気を出せば、殺してしまう。
殺してしまえば──今度はイデアがシェルムに殺されるだろう。
肉と肉がぶつかり合う凄惨なステージ上。サイデスの拳は皮がめくれ返り、太い骨が露わになる。腕の血管も悲鳴を上げていた。
対するイデアの細腕は無傷──ひたすらに、敵の拳を砕きにかかる。
「いってぇ……身体強化魔法でも使ってんのか? まぁ、そうでもしねぇと女じゃ勝てないからなぁ」
「……」
「次は、その綺麗な顔をよ、ぐちゃぐちゃにしてやるよ。毎日手入れして、気を遣って、美を保ってきたそのお顔……!」
興奮のあまり、己の拳が潰されていることも、汗だく血塗れの自分とは対照的に、試合前と何ら変わりないイデアの姿も、正確に認識できていない。
余りある破壊衝動と、それに伴う性欲。もう、止められない。
「ありがとう」
殴りかかってくるサイデスに、一言。冷静さを欠いた今の彼には届いていないが。
イデアは──数分間の殴り合いの末、ほぼ力が定着した。
仮面の男にもらった強大すぎる力が、ようやく、激しい撃ち合いを経て、馴染んできた。予想より早い“完成”。イデアという器に、入りきった。
眼前に迫るサイデスの拳を額で受け止め、破壊する。目も当てられないほどにひしゃげる腕──性的興奮を上回る痛みに、歪んだ男の顔に、一発。
「し、試合終了ー! 魔剣士科と騎士科の試合にもかかわらず、まさかの殴り合いで決着がついてしまいました!」
血塗れの手を見つめ、微笑む。
ここがスタートライン。あとは魔法をコントロールできるようになれば、完璧な自分が出来上がる。
才能を持たぬ劣等感も、不正入学の罪悪感も、同級生たちへの情景が積もらせた焦燥感も──全て、過去のものに。
「それにしても──」
ステージを去るイデアを見下ろしながらピカロが呟く。
「展開、早いな」
「急いでる感はあるな、確かに」
「序盤、1話かけて1試合やってたから、グダっちゃった」
「どうするつもり?」
「もう、トーナメント編が長すぎるから、今回でベスト4まで絞ります」
「戦闘シーン、オールカットです!」
現時点は、Bブロック第2回戦第3試合が終わったところだが、時を進めて──
──ついにベスト4。Aブロックは、第3回戦第1試合をピカロが制し、第2試合を勝ち進んだリードとの、Aブロック決勝。
Bブロックは、第3回戦第1試合、シェルムが当然勝利。第2試合では、Bブロックシードの強めのモブをイデアが倒し、Bブロック決勝はシェルム対イデアとなった。
モブの名前を考えるのもめんどくさいので、主要キャラのみにフォーカスの当たるベスト4まで話が進んだ。
生徒会長を目指す真面目男、リード・リフィルゲル。
“強くなりたい”という願いにつけ込まれた闇堕ちヒロイン、イデア・フィルマー。
やっぱり最強、シェルム・リューグナー。
金髪チビデブ短小包茎、ピカロ・ミストハルト。
──この4人が勝ち残ったことで、トーナメント編がようやく本題に入った。
「さぁさぁ気がつけばもうベスト4でございます! そして何よりも驚くべきことは、今年のベスト4の内、なんと3人が魔剣士科の1年生です!」
生徒会用の席から身を乗り出すザイオス。
彼が驚くのも無理はない──なぜならば、卒業生がいなくなる前の生徒会役員9人は、魔術師科が5人、騎士科が3人、魔剣士科が1人という構成だったからだ。
ピカロたちと入れ替わりで卒業していった3年生に関しては3人全員が魔術師科だった。
魔法学園の名の通り、魔法を学び、極める魔術師科。
剣が魔法を凌駕するという、ニクス・ミストハルトの活躍を根拠に、ひたすらに剣の腕を磨く騎士科。
それらと比べ、魔剣士科は、魔法と剣の融合を目指し、常に新しいことに挑戦する分野。よく言えば時代の最先端であり、悪く言えば魔法も剣も中途半端。
1つのことを究めようと邁進する魔術師科と騎士科の生徒たちと比べると、魔剣士科の生徒の実力は、例年、劣っている。
事実として、歴代の生徒会長に、魔剣士科に属する生徒はいなかった。
一方で今年生徒会に入れる生徒の、3人中2人は魔剣士科で確定──とはいえ、彼らが魔剣士らしいと言えるかはまた別ではある。
魔法と剣の融合──新たなる境地を目指してはいるものの、実力を評価されている魔剣士は、単純に、魔法も剣も使いこなす万能型であり、魔法と剣を合わせた新たなスタイルの持ち主ではない。
剣に関しては素人なイデアは論外として、ピカロもシェルムも、魔法と剣を組み合わせてはいない。結局、別々に行使しているだけだ。
そういう意味では、身体強化と重力制御だけしか魔法が使えないピカロより、魔法全般を掌握し、剣技も他の追随を許さないシェルムこそが、魔剣士の理想・完成形と呼べるかもしれない。
残念なことに、魔剣士科の実力が向上してきたから、生徒会役員候補に魔剣士が多いのではなく、比類なき天才がたまたま魔剣士科に所属していたというだけであるが、そこには目を瞑り、今年のトーナメントは大荒れの大番狂わせだったとした方が盛り上がる。
そんなわけで史上初、過半数が魔剣士科のベスト4──開幕。
「さぁAブロック第4回戦もとい、Aブロック決勝! 魔剣士科1年ピカロ・ミストハルトVS騎士科1年リード・リフィルゲル! Bブロック王者との最終決戦に挑むことができるのは、一体どちらだ!」
リード・リフィルゲル──努力の擬人化。
何者も比肩し得ない才能を武器に進むピカロやシェルムとは対極の位置にいる彼の戦闘スタイルを形容するならば──まさしく、“教科書通り”。
剣術の根本を、基礎を、基盤をひたすらに繰り返し、辿り着いた境地。
個性を廃し、無駄を削ぎ落とし、洗練された“基本の動き”を磨き上げる。
ゆえに、剣をかじった者からすればリードの動きは予想しやすい──しかし、どう動くのかが予想できることと、それに対して対処できることは、イコールではない。
普通の剣士ならばそうするであろう予想通りの動き。しかしそれがなぜ剣技における基礎たりえたかと言えば、それが最も正しく、適した動きだからだ。
研磨した正解を振るう。わかりきった最適解の選択──その連続。
その基本的な動きは誰もが知っているが、それに対する対処法を知る者は少なく、知っていてもそれはリードと同等の技術力でもって対応しなければならない。
基礎的な動きに対する基礎的な対処──個性や得意分野に傾倒した現代剣士たちの盲点であり、取り返しのつかない見逃し。
気を衒った荒技や、才能任せの一発勝負ではついていけない。
最適解に敵いうるのは、対照的な最適解でしかない。
幼少期から剣を握ってきたリード。自分なりの剣や、唯一無二の技という幻想に囚われず、実直に、素直に、一切揺れ動くことなく、命を削るような鍛錬を続けてきた。
ゆえに彼は天才ではない──剣のために生きただけ、である。ただそれだけであり、そしてそこには誰も辿り着いていない。
「騎士科の1年を担当する先生いわく、リード選手はまさしく怪物! お手本すぎて手本にならないという桁外れの異質さが、そのまま彼の強さを証明しています!」
バッチリとキメた七三分けの黒髪が陽光に照らされる──剣が1本、男が1人。
ステージに上がる。対するピカロを見据えた。
「ピカロくん、君の剣はみたことがないけれど──お父上の剣技については僕も知っている。ニクス流剣術による数々の伝説に憧れたさ──真似はしなかったけれど」
「あっそ」
「俺は、何の変哲もない基本の技で、ありふれた剣で、ニクス流を超える!」
「どうぞご自由に」
生徒会長になるという確固たる目的のもと、このトーナメントに参加しているリードとは対照的に、とりあえず目立ちたいからここにいるピカロ。
トーナメントに対する心持ちも、そもそもの剣に対する意識も、ピカロはリードに劣る。
しかし無論、負けてやる気は毛頭ない──お互いに。
「それでは──試合、開始ィッ!」
ザイオスの声──直後、空気が変わったことにピカロは気付く。
まさしくオーソドックスな構えで剣先を向けるリードの顔つきが違う──心を震わせる雰囲気。
これまでの彼の努力が、生き様が、志が、その身体から溢れていた。
圧倒されるとはこのことで、いざリードの正面に立って──剣を向けられて初めて感じる威圧感。
観客席には伝わっていないだろう凛とした殺気に、唾を飲むピカロ。
「おいおい……どこが普通だよ、こいつの」
当たり前を積み重ねることを当たり前とし、恐ろしいまでに磨き上げてきた剣のあり方──リードの信念が、その刀身に宿る。
シンプルな猛者こそ、真に恐怖を駆り立てる──父親の名前を背に、剣を振るうピカロとはステージが違う。
張子の虎もいいところだ──剣士として、ピカロは完全に敗北していた。
「……あぁなんか、悔しいな──よし決めた」
──魔法は、使わない。
この試合においては、魔法に頼らず、剣──ただそれだけで立ち向かうと決心した。
そもそも身体強化と重力制御の魔法しか使えないピカロにとって、そこまで大きな決断とはいえないのだけれど、とはいえ、身体能力を底上げする身体強化魔法を使わないことは、ハンデ──というより、枷だ。
これは別段、リードの熱量にあてられて、ピカロも真摯に剣に向き合おうとした結果ではなく、なんとなく悔しかったので、意固地になっているだけである。
同じ15歳──リードは、物心ついた時からずっと鍛錬の日々。ピカロは、10歳の誕生日にサキュバスに出会うまではともかく、この5年はまったく剣の腕を上げようと努力していない。
身体が出来上がってくる10歳から15歳までの5年間、ただひたすらに剣を握ってきた男と、毎晩ちんぽを握ってきた男。
対極──というにはベクトルが違いすぎるが、果たして。
「ふッ──」
「おわっ」
刹那を切り裂く第一歩──特別にリードの剣が長いわけではないが、速攻、その剣先がピカロに到達する。
第2回戦で戦ったセクト・ミッドレイズは、“神速の刃”と呼ばれていたが──匹敵どころではない。
「セクトの個性を潰してんじゃねぇよ……!」
全員が天才だという設定上、それぞれのキャラの強さを引き立たせるには、誰も比肩し得ない尖りきった長所を要するが、その点、セクト・ミッドレイズ唯一の武器である速さは、すでに同級生に越されていた。
リードの速さとセクトの速さを比較するならば、その違いはやはり動き方。生まれ持った身体能力と関節の柔らかさ、一瞬を駆けることに特化した肉体ゆえの闇雲な、それでいて出鱈目なセクト。
他方リードは繰り返すまでもなく、無駄を一切排した基本的な一振りを極めたが故のスピード。
どちらが正しいということでもないが、いずれにせよ相手取る側からすれば厄介極まりないことは同じである。
──常識を超えた領域にいる人間を除けば、の話だけれど。
「“想像してたよりは”速い──けど」
「──!?」
比喩ではなく──視認不可能。
剣を握るリードの手が、衝撃による痛みと痺れを感じる頃には既に、ピカロは剣を振り切っていた。
リードの一手目、弾かれる。
「所詮はお前もモブキャラだよ、リード」
一般人の矜恃を踏み荒らし、ねじ切り、粉微塵と化す圧倒的な“世界の力”。
万物の法則を凌駕する神の導き──言わずもがな、それは。
「──主人公補正、発動」
あらゆる理屈を、摂理を、然るべき姿をねじ伏せる“物語の引力”──リード・リフィルゲル程度では、天地がひっくり返ろうと、投稿サイトが変わろうと太刀打ちできない。
──モブキャラの敗北に、納得のできる理由など必要ない。
「私たちからすればお前ら天才も、数多いる凡人の1人──凡庸な努力の限りを尽くしてきたその人生、15年全部注ぎ込んで、抵抗してみろ敗北者ァッ!」
口調や性格のブレは、作者の怠慢ではない──演出だッ!