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07 アトム・ハート・ドール(及び、如何にして人形たちが自分の足で歩くようになったのか)

 私はその夜、突然現れた女性に人差し指の先をちょん切られた。

 切られたのは指なのに、頭が割れるように痛んで、わけもわからないうちに部屋から追い出されてしまった。

 ふらふらのまま、あてもなく夜の町をさまよった。


 足が覚えていたのか、それともただの偶然か。たどり着いたのは私が生まれた工場だった。

 ごうごうとコンプレッサやモーターの駆動音が聞こえる。

 暗い敷地内をうろうろしていると、突然頭の上から声がふってきた。


「おい、何してる」


 クーリングタワーを見上げると、一人の人形が屋根に腰かけて、足をぶらぶらさせていた。

 人形は私の顔をじっとにらんでこう言った。

「なんだお前、人形か? それにしてはえらく中途半端な奴だな」

「……え?」

 あ、そうか。私はあらためて、自分が人形だったことを思い出した。

 このところ幸せな日々が続いていたせいか、忘れかけていたのだ。

 でも――


「ねえ、中途半端ってどういうこと?」

「ん、知らねえよ。知らねえけど、なんとなくお前は人形っぽくねえなあと思ったのさ」

 思い当たるのは、指を取られてしまったこと。そうだ、部品が欠けた人形なんて、人形以下に決まっている。

 指を切られて、切られた指に家を追い出されて、自分がわからなくなって、さまよって。


「ねえ、私っていったい、何なのかしら?」

「知るかよ、バカ。人形じゃなかったのか?」

「人形、……だと思ってた。けど、わかんなくなっちゃった」

 私はここにいるけど、あの家にいるのも、私の一部だ。どっちが本当の私だろう。辻田さんにとっての私は、どっちなんだろう。


「あのね、”私”は、別の場所にいるのよ」

「はあ? 何言ってんだ、お前はばっちりここにいるじゃねえか」

「そうだけど、でも、やっぱり私は人形じゃないと思う」

 私が言うと、人形はとても嬉しそうに、にんまりと笑みを浮かべた。

「ほう、単なるプラスチックの塊のくせに、なんで自分が人形じゃないって思うんだ?」

「だって、指が欠けているし、不良品だもの。粉砕されちゃうわ」


「――そうか」

 人形は意外にも寂しそうにうつむいた。まるで何か、期待を裏切られたように見えた。

「人形じゃないってんなら、なりゃいいじゃねえか、ちゃんとしたヒトに」

「え? 人間に?」

 そいつはプラスチックの歯を見せながら、ケタケタと器用に笑った。

「お前は本当にバカだなー、俺らが人間になれるわけないじゃねえか。プラスチックでできているくせに」


 こいつの言うことはさっぱりわからなかった。人間になれって、たった今自分で言ったばかりじゃないか。

 とりあえず、バカバカと繰り返すのはやめて欲しい。人形でも人間でもいいけど、傷つくものは傷つくのだ。


「どうすれば人間になれると思う?」

「自分で、なろうと決めるんだ。そうしないと、なれないさ」

「人間はみんなそうなの?」

「救いようのないバカだな、お前。人間は最初から人間だ。なろうとしなきゃなれないのは、うちらみたいな半端ものだけさ」

 人形はそう言って、着ていたシャツをたくし上げる。見えたお腹はつぎはぎだらけだった。


「そっか」

「お前は、ここにいるべきじゃないと思うぜ」

「どこへ行けばいいと思う?」

「何回も言わせんな、自分で決めろ」

07 Astroboy (And the Proles on Parade)


アストロボーイは鉄腕アトムのことなのですが、アトム要素は特にありません。

Atom Heart Mother は、ピンク・フロイドの曲からです。アトム繋がりというだけですけど。


この曲も I Love You (Miss Robot) と同じように、つなぎの曲という印象です。

単調な感じで、人によってはそろそろ飽きてくるかもしれません。

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