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先代勇者の名にかけて!〜転生したらクリア直前だったんだが〜  作者: 彩宮菜夏
第3章 魔術の里にて
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48. 転生術の秘密

「転生ぃ……? おあああ……うん……」


 俺たち一行は、シワシワのおじいちゃんを前にして非常にじれったい思いをしていた。


 里の外れにある、ココによれば「里一番の大魔術師だった人」の家に俺たちはやってきた。

 ただ、過去形であることからもわかるように、この人が大魔術師だったのは短く見積もっても半世紀は前のことだろう。


 この人の家だけは、木の上ではなく地上にあった。

 大きさもこぢんまりとしていて、というか半ば崩れて小さくなっていて、屋内はカビの匂いと埃の匂いでいっぱいだった。

 薄暗く、おまけにあちらにもこちらにも、魔道具らしい得体の知れないツボとかネックレスが置いてあって、瓶の中にはなんだかよくわからない液体がいっぱいに詰まっている。

 あんまり目をやらないようにした。だんだん怖くなってくる。


「ゴドロさん、転生術って、ご存知、ですか?」


 一言一言区切って、ココは質問しているが、向こうに伝わっているのかどうかはよくわからない。

 ゴドロ老人は椅子に深く腰掛けて、よくわからん分厚い服、というか布に包まれ、胡乱な表情を浮かべているばかりだった。

 トリスタは怪訝な顔で俺に問う。


「なんだよ転生術って。転生したいの? 死んでから」


「いや……ええと」


 うっかり言い訳を用意していなかった俺がしどろもどろになっていると、


「魔王が転生している可能性がある」


 ジゼルがいきなりそんなことを言い出したので、俺は激しく咳き込み動揺した。

 なぜ知ってるんだ……? いつの間にそんな事実を掴んでいたのか……。


 しかし、ジゼルを見ると不快そうに口元を布で覆っているぐらいで、別段秘密を暴露して驚かせようとしてきた様子もない。

 いつも通り、冷徹な顔をしている。おまけに、俺の方をちらりと見ると目配せしてみせた。


 続けて彼女は言う。


「確証はないが、死亡する前に魔王が自分自身にそうした術をかけていた場合、どこかに転生している恐れがあるから調べたい、と勇者殿が言っていたから、そういった術がないかココに尋ねたんだ」


「ああ、そういう意図だったのですか」


 ココも今初めて聞いた理由に納得している。


「以前勇者様が質問なさった時は、これといって理由をおっしゃらなかったですよね」


「あ、あの時はまだ……祝宴の最中だったから。誰かに聞かれると不安がらせてしまうと思ってね」


 ジゼルの話に合わせ、俺もそんなことを言った。トリスタも、なるほどね、と頷いて納得してくれた様子だった。

 俺は内心、胸をなでおろす。


 ジゼルはつまらなそうに鼻を鳴らしていた。

 とっさに俺をフォローするために、()()()()()()()()()()を表情一つ変えず堂々とついてくれるとは、彼女も意外と食わせ物だな、と驚かされる。


 それがたまさか、真実と合致してしまったのはなかなか皮肉な話ではあるが(ちなみに。厳密に言えば、魔王がやったのは転生ではなく、あくまで俺に殺されたふりをした、その後、冗談半分に少女の姿になってみせているだけらしい)。


「転生術、か……」


 俺たちが勝手に盛り上がっていると、老人が不意に、確かな口調で呟いた。

 先ほどまで起きてるんだか寝てるんだかわからない状態だったくせに、突然意識が回復したのか、眼差しも心なしかしっかりしている。


 ココが顔を近づけて問う。


「思い出されましたか」


「転生術……思い出したよ……遥か昔……」


「遥か昔……お使いになったのですか!?」


 ココは存外気が短いらしく、前のめりにそんなことを言う。

 まだ若いから、老人のテンポが我慢ならないのかもしれない。


「いや……使ったのでなく……」


「でなく……風の噂に聞いた、あるいは本で読まれたとか。それか、遥か昔伝説の時代には存在したとか!?」


「ココ、爺さんに喋らせてあげな」


 トリスタがげんなりした顔でたしなめた。

 当の爺さんはそれでようやく落ち着いたか、改めて話し出した。


「わしは、転生術など知らんよ。そうではなく……遥か昔……といっても二、三十年前だと思うが……訊かれたよ。今のお主らのように」


「訊かれた?」


 俺は眉をひそめた。

 大したトピックスではないと思うが、むしろそんな大昔に訊かれたことを覚えているとは、俺よりもよっぽど記憶力いいんじゃないか。

 正直、俺は学生時代のことすらろくすっぽ覚えていない。あんまいい思い出がないせいかもしれないが。


 爺さんは言った。


「訊かれたよ……オルレ……オルレ・ヤンソンという大柄な男に」


 俺以外の三人が、ハッと衝撃を受けた顔で、めいめい口を手で塞いだり、顔をしかめたりしている。

 ぽかんとしているのは俺一人だけだった。


 なんか知ってないとまずい有名な人なのだろうか。

 俺は顎に手を当てて首をひねってみせる。


「ううむ……どこかで聞き覚えがある名前なんだが……だがそれだけの情報ではなんとも……」


「勇者殿!」


 いきなりジゼルが大声を出す。何事か。


 女剣士は俺を睨みつけながら、言った。


「確かに驚きのあまり、混乱してそんなことを口走っても無理ないな。


 こんなところで突然……()()()のお名前を聞いては」

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