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先代勇者の名にかけて!〜転生したらクリア直前だったんだが〜  作者: 彩宮菜夏
第3章 魔術の里にて
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39. 大人なので色々考える

 ……エレベーターに乗って上昇するという夢には性的な意味合いがある、みたいな話をどこかで聞いたような覚えがあるが。

 別に魔術の力で上昇していることから連想したわけではない。


 とはいえ。先代勇者・イネルは彼女たちとお付き合いをして、しかも結婚の約束までしていた。

 さらに、長い期間一緒に旅をしてきた。もっと言えば、みんな大人である。


 それならまあ。

 色々あって然るべきだろう。

 普通に考えれば。


 その辺が本気でわからないのだ。

 俺も前の世界ではいい歳だったので、自分自身に経験がなくっても、世の中男女がお付き合いしていて仲が深まればそれなりの雰囲気になることぐらいは当然了解している。


 しているのだが。


 同時に生憎だが自分自身に経験がないもので、どれぐらいの仲になるとどれぐらいのことをするものなのか今ひとつ正確に把握し切れていない。


 キスはしたのだろうか。

 その先のことはしたのだろうか。


 もうホント、嫌になるくらいわからない。

 世の中の手練れと呼ばれる男は、女性が男性に向ける愛情のこもった眼差しや仕草だけで、どれぐらいの関係性なのか一発で見抜くらしい。

 前の世界の会社にはそういう先輩がいて、「お前そんなのもわかんねーの?」と鼻で笑われたものだが。


 わかるわけないだろそんなもん。

 超能力者じゃないんだから。


 というわけで、三人(+姫様)から愛ある視線を向けられていても、どれぐらいの関係なのか全く、さっぱりわかっていない。


 この問題に関しても、状況は三者三様である。


 ココに関しては正直、年齢もかなり若いし、流石に何もしていないか、せいぜいキスくらいだろう(そうであってほしい)。

 逆にトリスタは二十歳も過ぎた大人で自ら色気をアピールするタイプだから、何もないと言われると逆に勘ぐりたくなりそうである。

 一番わからないのは、実のところジゼルだった。


 三人の中で唯一、実態を訊こうと思えば訊けるのが彼女だ。

 だが、当たり前のことだがそんなことを尋ねたが最後ぶっ飛ばされるに決まっている。


「……何を見ている」


 ジゼルが俺をじとりと睨んできたので、俺は慌てて目をそらした。


 一応だが、こういうことを知ろうとしているのは別に助平心からではない。

 いや、本当に。マジで。大切なことなのだ。


 実際の交際の度合いを把握していないと、これから先、彼女たちとの関わり合い方をしくじる恐れがある。

 これから姫様との婚姻関係を進めざるをえないとなったからには、行動のチョイスに最新の注意を払わなければならないからだ。


 こと、この世界は貞操観念が固いであろうから、下手なことをすれば刃傷沙汰に発展しかねない。

 俺の正体を知ってしまったジゼルだって、こういう問題に関しては怒りを爆発させる可能性だって十二分にあるだろう。


 そして、これから始まるココのご家族とのご対面においても、この件は非常に重要になってくるのだ。


 俺たちは樹上の板張りに降り立った。

 目の前には、木の上にあるとは到底思えない豪邸がある。


 無論、重量の関係などで石積みではないが、木組み細工のように緻密に作り上げられた工芸品のような美しい住居だった。


「お父様! お母様! ココが戻ってまいりました!」


 いきなり、俺の前に立っているココが家に向かって叫んだ。


「勇者様も一緒です。お聞き及びと思いますが、無事、魔王を倒してまいりました! ですので、お願いですから、開けてください!」


 え?

 ギョッとして左右を見ると、ジゼルもトリスタも暗い顔をしている。


「なぁに初めて見るみたいな顔してるんだよ。もう三回目だろ、このやりとり」


 トリスタに珍しく突っ込まれて、俺はああ、そうだったな、とごまかした。

 三回目?

 過去二回のこの土地への来訪時も、毎度こんなことがあったのだろうか。


 ココはさらに家に近づいて言う。


「一度でいいから勇者様にお会いいただいて……」


 すると、家が載っている大樹が突然、激しく揺れ始めた。

 俺たちはバランスを崩し、あっけなく木から落下した。

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