4月20日-1
間に合いました。
「はーいみんなお疲れ~」
そんな青木さんのゆるい調子の言葉が通信で入る。
日付は二十日に入っていた。
淡雪が情報を割り出して、情報を青木さんに流す。
そして青木さんが所轄の警察に連絡して摘発することを続けていた。
そんな感じだったのでこちらの出番がほとんどないと思っていたが――
「いやぁ、山上君もお疲れさん、飛行機のハイジャック、しかも機長がグルとか反則だったね」
動機などはよく知らないが、機長と乗客二人がグルでハイジャックを行う算段をつけて、実際警察には一切手は出せなくかった。
そこを空を飛べる人間である俺が乗り込むことになったのだが――
「一歩間違えば大惨事の破壊とかもう二度とやりたくないですね」
そのまま機内に突入すれば気圧差で中の乗客もただでは済まない。
なのでまず高度を下げるために燃料タンクにわざと穴をあけた。
余計なものに傷一つつけず高速で飛んでいる飛行機の翼に剣を突き立てたのは本当に肝が冷えた。
しかもすこしでも間違えばそこから翼がもぎ取られるというのでかなり緊張した。
剣を抜いた瞬間の飛行機全体がきしんだような音はまだ耳に残っている。
「まぁ、正直未来永劫ないようなとんでもないことだとは思う、でもおかげで誰も大けがせずに済んだんだから」
「それは確かにそうですけど――」
乗客からしたらたまったものではない大騒動だったと思う。
急にスピードが落ちて高度が下がっていき、ハッチを破って厳ついロボットめいたものが乗り込んできてズンズンコックピットに向かっていったのだから生きた心地はしなかったと思う。
「他にも原発とかお疲れ様、というか過去改変が本当にインチキくさいね、まさか最高レベルの生物防護施設から細菌が持ち出されていたことになるとか思わなかったよ」
もしもの時のために生物兵器も平気な俺が出て行って取り押さえたが、あれもなかなか大変だった。
ずっと人ごみの中に居たので気づかれたらその場でばらまかれて大変なことになっていただろう。
「それにしてもターゲットにされない方法がSNSのアカウントを削除する、というのは盲点でしたね」
「言われてみれば確かに、ってやつだね、SNSで宣言した事を行わせるのだから、アカウントがなければそもそも宣言できないんだからね」
それに気づくまでに実働に当たっていた警察官でも何回かあわやテロに発展しかけたそうだ。
「まぁ、細かい話はこっちでやっとくから帰って寝てね、なんだかんだで未成年だし」
「わかりました」
青木さんのその言葉に甘えて幸次さんの家に戻ることにした。
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あの後、家についたころにはもう深夜をかなりすぎていたので幸次さんを起こさないように気を付けて部屋まで戻り泥のように眠った。
自身の命を懸けた斬った張ったより、直接誰かの命がかかっているような戦いの方が多くの神経をすり減らすらしい。
そんなことを起き抜けのぼんやりとした頭で考える。
軽く伸びをして居間に向かうとリラックスした様子の幸次さんがいる。
居間にみちる香ばしい香りは――
「コーヒー?」
「そうだ、奥谷も飲むか?」
まだすっきりしない頭は素直にうなずいた。
「わかった少し待ってろ」
ヤカンでお湯を沸かしながら幸次さんが話しかけてくる。
「最近ちゃんと机に向かっているか?」
近頃俺が飛び回ってばかりのために学生の本分である学業に対して気にかけているようだ。
そのことには俺自身も気にしていたので――
「まとまった時間は無理ですが、できるだけ時間を見つけて心がけてはいます」
「ならいい」
互いに言葉を発しない静かな時間が流れる。
ずっとそのままでいるのも座りが悪いのでテレビの電源を入れる。
すると、ちょうど海外のニュースから国内のニュースに移るところだった。
国外のニュースは最後の方しか確認できなかったが国連がどうとかいう話だった。
そして、次のニュースは昨日起きたハイジャックについてだ。
「あ、これって――」
「もしかして奥谷がかかわっているのか?」
飛んできた奥谷さんの声に肯定の返事をする。
その時幸次さんは俺の分と自身の分、二杯のコーヒーを手に戻ってきた。
「何をやっているかは詳しくは聞かないが、すごい事をやっているな」
しみじみと言われ、差し出してきたカップを右手で受け取る。
すると幸次さんは目を細め――
「今度は右腕、か」
重々しいため息を伴ってつぶやかれた。
姿勢を正し説明を始めた。
明日も頑張ります。




