Apr. 19 2019-2
間に合いました。
少し開けた場所で“ウォーモンガー”と対峙する。
手にはそこそこ頑丈な金属製の棒を持つ。
長さとしては私の身長くらいだ。
“ウォーモンガー”にも同じ棒を持たせて五メートルほど開けている。
「さて早速始めましょう、実際に動きながらの方が理解しやすいでしょうし」
「おぅ、頼む」
と素直に頭を下げてきた。
さて何からしようか考えているが――
「実際打ちこんだ方が早いですよね」
と言って中間あたりを握って剣のような構えを取ってじわりじわりと距離を詰める。
“ウォーモンガー”は獲物の端を右手で握りしめ大上段に振り上げ、右を半歩出している。
間合いを割ったその瞬間――
「っし!!」
風を割くような速さで振り下ろしてきた。
まともに喰らえば大けがは免れない威力でしょう。
「よいしょ」
軽く掛け声を出し、振り下ろされる獲物にこちらの得物を横からぶつけ斜めに受ける。
勢いをそらしこちらの右に流したら、左手側を押し込むようにして懐に入り、首元に突きつける。
「まず一本」
「くっ」
悔しそうに舌打ちをする。
そして、一歩後ろに飛んで踏み込みながら左の拳で殴り掛かってくる。
狙いはこちらの顔面だ。
「足元がお留守ですよ」
と言って踏み込んできたその足を片足で払う。
“ウォーモンガー”はバランスを崩しかけて――
「しゃぁ!!」
地面を殴って反動で変形のアッパーカットのような動きで私のわき腹を狙ってきました。
「危ないですね」
足払いを仕掛けた足をそのまま軸足に寄せてわざとバランスを崩し、アッパーカットを避ける。
そして、空振りした“ウォーモンガー”は完全に体勢を崩している。
私の方は、膝と腰を落としてしっかりと地面を踏み込んで立つ。
「二本目ですね」
私の得物で地面に押し付けて取り押さえ宣言する。
「三本目も始めますか?」
「クッソ、何がどうなってるんだ」
とりあえず手を差し出して起こす。
「“ウォーモンガー”、まだ始まったばかりですよ」
「げぇ」
と言いながらも口元にはしっかりと笑みが浮かんでいる。
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「これで何敗目ですか?」
“ウォーモンガー”の肩の関節を極めて地面に取り押さえながら聞く。
途中から数えるのもやめたが、読みやすいので簡単に返せる。
「もうとっくに気づいていると思いますが、“ウォーモンガー”あなたはこのままでは山上君と淡雪ちゃんはおろか私にすら勝てないでしょう」
「わかってるけどよぉ」
バツが悪そうに“ウォーモンガー”が漏らす。
いつまでも関節を極めておくのも悪いので開放して立ち上がるまで待つ。
「なにが問題かわかりますね?」
「ああ、あたしはただできることを最速最短ルートでなぞっているだけだ、だから簡単にカウンターを取られる」
「まぁ、そうと言えばそうですね」
おそらくもっと根本的なことを勘違いしています。
ですが口で言っても理解できないでしょうから――
「対処法はわかりますか?」
一応質問する。
すると、
「わからん」
即答された。
それは想定内なので手に持った得物を捨てて、大鎌を取り出して構える。
「考えても答えがでないなら動いた方が良いですよ、“ウォーモンガー”武装を開放して本気でやりましょう」
「……あぁ」
掴んでいた棒が赤熱し、溶解した。
代わりに手の平の穴から白く輝くプラズマジェットが吹きだしている。
「これは受けることは出来ねーぞ」
「わかってます」
左手は柄に乗せるだけにして、右手で柄を握る。
一拍もない時間が経って、“ウォーモンガー”がプラズマジェットの刃を両側から閉じるように振ってきた。
本流で蒸発して斬られることもそうですが、少し離れても十分すぎるほど熱をもつので対処は難しい。
なので片腕を狙って斬りつけて奪う。
「だったらもう片方はどうする!!」
逆の腕はそのままだと私の胴を両断することになる。
素早く奪った腕を取り出して、プラズマジェット同士でぶつけ合わせる。
着ている服に火がついて、みるみるうちに表面が炭化し始める。
が――
「しのぎましたよ」
「く!!」
もう片方の腕を奪って、さっき取り出した方の腕をハッキングしてプラズマジェットを吹きださせ続ける。
そして首筋に突きつける。
「一本はいいませんよ」
と言って両腕を返す。
いきなり返されて目を白黒させている。
「いいですか、あなたの性能なら私はなすすべなく必ず負けます」
腹に肘を打ちこんで浮かせる。
「じゃあ、なぜ勝てないか」
必死にこちらをつかもうと手を伸ばす。
が、その動きは迷いがある。
今までさんざんカウンターを打たれたせいだろう。
「不思議でも何でもない」
肩から密着し、全力で体当たりを行う。
ミシリ、とこちらの体がきしんだ。
「全力を尽くしてない、今までずっと」
体勢を崩されたまま弾かれた“ウォーモンガー”に追撃する。
「最速最短ルート、それを全力で行ってなかった、ただそれだけです」
後に引くダメージは入ってないだろうが、地面に力なく横たわっている。
「楽しいも不安も、すべてはあなたには余分です、目の前に事にただ全力を尽くすそんな愚直さがあなたには足りていなかった」
そこまで言うと、“ウォーモンガー”はかすかにうなずいた。
それを確認してその場を離れた。
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トレーラーの中、橘君の調整を本格的に行っている“ブラックスミス”の元に向かい――
「あ、事情は知ってる、というか無茶するね」
言ってしまえば同じ敷地内ですし、もう知られていた。
なら話は早い。
近くの椅子に腰かけて。
「調整おねがいします、実はかなりギリギリでして」
“ブラックスミス”は苦笑しながら。
「知ってる、自分の足で来たことがすごい」
どこかから道具を取り出して私の体の調整を始めた様子だ。
ここまで来たらどこまで隙を見せても同じなので目を伏せて本格的に眠ることにする。
「あと、頼みます」
とつぶやいて意識が闇に飲まれた。
明日も頑張ります。




