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4月19日-9

間に合いました。

 もうそろそろ昼食の時間に仮の拠点とした施設――市役所の一室に戻ってきた。

 実働班の人はまた別の会議室に分散しているらしい。

 すると、なぜか大量の握り飯が置かれている。


 不思議に思っていると人のよさそうなおばさんが片手に大きなヤカンを下げて部屋に入ってきた。


「あらあらまだ準備できてなくてすいませんね」


 と申し訳なさそうに頭を下げた。


「一旦帰ってくると聞いたのでみんなで一生懸命作ったんですけど足りますかね?」


「あー、うん、ありがとうね~、一応事件自体は解決したからすぐ――」


 といったあたりで、おばさんが少しだけ寂しそうな顔をしていることに青木さんは気づいたようだ。


「いや、少し休憩を取るようみんなに伝えてね」


 部下の人も明朗な返事をして部屋を出て行った。

 ヤカンを近くの机の上に置き、湯飲みも人数分置いて出て行った。


「うーん、なにか情報の行き違いがあったっぽいねぇ」


「これはありがたく頂いてもいいでしょうか?」


 と言いながら淡雪は握り飯に視線が釘付けになっている。

 その無邪気な表情にすこし心が和む。


「あー……まぁ、うん残す方が失礼だし、いいんじゃない」


 と言った後で、小声で。


「これ、予算つけないとなぁ、どうやって言い訳しようか」


 と肩を落としていた。


===================〇============


「さて、人心地付いたところでこれからの方針、というか情報が入ってきてね」


 ヤカンから注いだお茶を飲みながら青木さんが答えた。


「というか直で話してもらった方がいいか」


 と言ってどこかへ連絡を入れる。

 同時に淡雪に視線を送る。

 その意図に気付いて淡雪がいつの物様に電話回線に割り込む。


「おーう坊主たちか、今どこに行ってるか知らねーけどちょっと妙なことが起きててな」


 電話相手は針山さんでどこか困惑している様子だ。


「まぁこっちは解決したからいーよー、で何が起きたって?」


「それなんだがな、面識のないやつら三人が拉致監禁を行いかけていた」


 珍しいがない事もない気がする事件だと思うので次の言葉を待つことにした。


「とりあえず坊主らに奴らのSNSのログを送る」


 送られてきたログに目を通して――


「これはひどい、というかこれだけで逮捕できそうな気がしますが」


 その言葉に針山さんは言いにくそうに。


「だがその投稿は三人ともやった覚えがねーんだとよ」


「おかしいですよね、こんなにはっきりかきこんでいるのに」


 まーな。

 と電話口の向こうで針山さんが答えて。


「そのくせそれぞれは打ち合わせ通りのブツを持ってやがってな、まぁドラッグ持ってるとか普通に現行犯逮捕で済んだんだが――」


 ゆっくりとつぶやく。


「どーも本気で例の投稿をしていない見てーなんだは」


「スマホやPCのデータを漁ったということですか?」


「本人の許可を得てな」


 となると確かにおかしな話だ。

 本人は一切連絡を取り合ってないのに、示し合わせたように投稿の内容をなぞるように行った。


 そこであることに気付く。


行動をなぞる(・・・・・・)


「おそらくそれですね」


 ここで淡雪が会話に加わる。


「ノスタルジストのクリーチャーは被害者を役割を演じさせます、それを利用してSNSにあらかじめ投稿した行動を行わせているのだと思います」


「でも、これで実行犯を捕まえたから解決――」


 いいや。

 と針山さんが短いがはっきりと否定した。


「同じ内容ではないが、三人一組の犯行予告はわかっているだけでも数千ある」


「え、そんなにあるんですか」


 思わずそんな声が出てしまう。

 しかもわかっているだけでもというのが厄介だ。

 おそらくもっと存在している。


「サービスを提供している会社も大慌てらしいな」


「だろうねぇ」


 青木さんがそんな風にのんきに答える。

 が、今も何事か考えている様子だ。


「とりあえず針山警部、四人の中でこの件に一番長くかかわっているのが君だけど他に何かある?」


「ないな、正直こっちは全然手がたりねー、ってか会社が情報を提供するのを渋ってやがる」


「そこらへんは個人情報保護って観点が有るから無理強いわねー」


 その言葉に針山さんはかみついた。


「おぃおぃ!! テロに近いのも入ってんだぞ!!」


「まぁまぁ、もらえないなら、取りに行けばいい」


 そこで青木さんは淡雪に視線を向ける。


「こっちには超がつくような凄腕のハッカーが居るんだから」


「なるほど、私の出番ですね」


 と言って張り切って何かを調べ始める。

 間髪置かず――


「って多いよ嬢ちゃん!!」


「でも本当にこれくらいあるんですよ」


 どうやら向こうの方ですごいこちなったらしい。


「あぁ、クッソ、所轄外はそっちで頼むは」


 とだけ言って一方的に切った。


「あらら、体よく仕事し漬けられちゃったねぇ」


「仕方がないと思いますよ」


 青木さんは軽く肩をすくめて。


「まね、とりあえず対象の場所の警察にはこっちから連絡する、それで間に合いそうにないのは山上君と淡雪ちゃんに頼むよ」


「わかりました」


 二人で強くうなずき、突発的な犯行予告に振り回される人を止めに日本中を飛び回り始めた。

明日も頑張ります。

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