4月19日-6
何とか間に合いました。
左半身を差し出すような構えを取る。
武器である片手剣は腰に差そうにもどうにも座りが悪くなりそうなので右手に握っておく。
今までは鉄壁の鎧に守られていたが、左手くらいしか守られていない。
初めての経験のため少しだけ緊張している。
「なかなかいい面構えじゃないか」
相対しているウォーモンガーは大剣こそ持っていないがいつも通りに強化外骨格を身にまとっていて、有効打を与えられるのは使用時間の制限がある片手剣くらいだろう。
ジワリと冷や汗が浮かぶ。
「さぁ、戦おうじゃねーか!!」
そのまま脇を絞めてボクサーのような格好でウォーモンガーは突っ込んできた。
舌打ちをして、一歩距離を取る。
が、それよりも早く踏み込まれ、ジャブを何度も放ってくる。
「くっ!!」
うなり、必死にはじく。
三発までは左手でガードしたが――
「がっ!!」
胸のあたりに命中し、打撃音というより破裂音が響いた。
あまりに強く早く殴られたため胸が拳の大きさに陥没している。
呼吸をしようとしたら鼻の奥に鉄さびの匂いが満ちてまともにできない。
「く――」
「もう一発!!」
腹のど真ん中にアッパーカットが入る。
衝撃が突き抜け、何かがつぶれはじける音が背中側からした。
が、痛い。
痛いということは生きているのだ。
だから左腕で剣を抜き斬りかかる。
「あっぶな!!」
と、漏らしながらウォーモンガーは距離を取った。
それを見送りながら鞘に剣を戻した。
ウォーモンガーは憎々し気に。
「ったく、その体おかしいだろ、熊ぐれーなら弾けて上半身と下半身が泣き別れになるのによ」
攻撃を受けた胸と腹の中で大急ぎで何かが組織や臓器を繋いで、埋める感覚がある。
損傷を受けながらつなぎ続けたので何とか生き残れたようだ。
「ただの人間があたしと殴り合えるくらいのスペックに引き上げるとかおかしいだろ」
と言いながらもう一度ジャブを放ってきた。
だから覚悟を決めて――
「ぐっ!! ぃったぁ」
剣を鞘ごと上に放り投げ、右手も使い全力で迎撃する。
ぶつけた瞬間砕けながら直るというありえない感覚に悶絶するが、なんとかしのぐ。
「はん!! それでどうするってんだい!! ってなにぃ!?」
途中から肉がつぶれる音が少なくなり、硬いものがぶつけあう音の割合が増えていく。
「ちぃ!!」
ウォーモンガーが組み合うようにして俺の両手をつかんだ
すると、右手が鋼のような色に変わっている・
「はっ!! 無茶をするな、何度も砕いてなおさせることで右手を補修材に置き換えたな」
「うまくいって良かったよ」
そこで落ちてきた剣の柄を口で噛んで首の動きで抜いて斬りかかる。
ウォーモンガーはこっちを蹴り飛ばすことで距離を開けた。
相変わらず体がバラバラになりそうなほどの衝撃だが、何とか耐えれた。
また剣を鞘に納めて、両手とも生身じゃなくなったのを確認するように何度も手を握ったり開いたりして――
「さて、第二ラウンド」
とあえて気軽に言って、今度はこっちから踏み込む。
「こいやぁ!!」
ウォーモンガーはそう吠えて。
そのまま殴りかかってくる。
と、唐突に右フックを出してきた。
嫌な予感がしてスウェーするように体を後ろに引き倒す。
「良い勘してるな」
と舌打ちをした。
そう言ったウォーモンガーの右の前腕部に大ぶりのナイフが生えている。
刀身は真っ赤になり、熱で切断力を高めているタイプだ。
確信があったわけではないが、直感に従った結果命拾いした。
「はっ!! いいねぇ、ノッてきたぜぇ!!」
ついで左の前腕と両足のすねからも同様のナイフが飛び出てきた。
どうやらテンションによって使用する武器が変わるらしい。
試す気はないがあのナイフに切られたらさすがにつながることはないと思う。
でもやるしかないのだ。
「ふぅ――」
純粋な殴り合いだけでもかなり押されていたのだ。
しかし、段々と慣れてきた。
格下になってやっとわかるのがウォーモンガー――いや俺もだが性能任せで動く相手は初見こそ圧倒されるがパターンががわかったり目が慣れると思った以上にくみしやすい。
これはこの戦いの後ので省みる点だと思う。
「さぁ、やろうか」
その言葉を待っていたかのようにウォーモンガーは飛び掛かるような軌道で襲い掛かってきた。
明日も頑張ります。




