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4月19日-5

間に合いました。

 中に入ると艶消しの黒いパネルがびっしりと張られた部屋だった。

 小部屋の奥にもう一枚扉がある。

 なるほど、両方を開けないと電波が通らないらしい。

 と思いながら急いでもう一枚の扉をくぐる。

 その部屋の真ん中あたりに置かれたベッドに淡雪が寝かされている。


「助けに来たぞ!! 淡雪!!」


「山上さん!!」


 その表情は華が開いたように華やかだ。


 早速、どこかにつながっている手かせを切ろうとして――


「待ってください、切っちゃダメです!!」


 鋭い静止が入る。

 その表情は真剣だ。


 だから手を止めて聞き返した。


「どうして?」


「このコードでこの病院の難病の子たちの生命維持装置の電力等を供給しているらしいのです」


 もし本当なら確かに切るのはまずいだろう。

 なので間髪置かず――


「確かめたいけどどうすればいい?」


「戸を開けてください」


 と言われたので急いで戸を押し開ける。

 手前側の扉が閉まらないように地面に剣を突き刺して押しとどめて、もう一枚は普通に手で押し開ける。


「……残念ながら本当のようです――」


 続く言葉を飲み込んだようにも見えるが、それは淡雪が伝えない方が良いと判断したことなのだろう。

 だから気づかないふりをして会話を続ける。


「そうか……」


 おそらく病院内に飛ばしているドローンとリンクして情報を集めたのだろう。


「ええと、コードを長く――しても解決はしないしなぁ」


「おそらくここへの電力を供給していた設備を停止させたのだと思います」


 となると行動は一つだ。


「電力の回復に行けばいいのか」


「そういうことになりますね」


 予定が決まれば後は行動あるのみだ。


「ナビは――難しいか」


「扉を切ってください、そうすればリアルタイムでナビができます」


 よし。

 と思い、床から剣を抜くと――


「あ」


 氷にひびが入るような音がして粉々に砕けた。

 とっくに三秒以上経っていた。


 互いに無言で見つめあい。


「……さっき切ればよかった」


「私も言い方が悪かったですね」


 やってしまったことは反省するが、悔やんでも仕方がないのでとりあえず柄を鞘に押し込んで刀身の回復を行いながら――


「思ったんだけど、斬るんじゃなくて力まかせに扉をちぎればよかった」


 と言いながら無理やり扉をむしりとって床に捨てる。

 なかなかないシチュエーションのため互いに浮足立っている気がする。

 一つ深呼吸をして落ち着くようにする。


「淡雪これでリアルタイムでナビできるか?」


「可能ですね、ドローンで一度リレーしてもらう必要がありますが」


 よし。

 と胸の内で思う。


 しかし、そこで淡雪から驚くべき言葉が出た。


「ですけど、電力を供給していた設備がどこなのかは現時点ではわからないです」


「え? 何故?」


 聞き返すと少しだけ申し訳なさそうに。


「他から電力が供給されているのに、元々の設備は普通動かしませんよね」


「確かに、でも図面とかあると思うけど……」


「残念ですが、電子データとしては残していないようです」


 となるとまず行わなければいけないのは――


「病院内を探し回らなきゃいけのか……」


「とりあえず私から電気を吸っているこの機械はあとから作られた物のはずなので、行く道を追いかけてもらえばいいと思います」


 なるほど、わざわざ新しい電気の経路を引くのは非効率的だから、電気を分配していたところまでしか伸ばしていないはず。

 そこは必然的にいわゆる根元に近いところのはずなので、適当に探すよりもずっと効率が良いはず。


「わかった、おいかけてみる」


「よろしくお願いしますね」


 という言葉を背に受けて部屋をあとにしようとしたら――


「いよぅ!! 派手にやってるじゃねーか」


 脇から誰かに殴り飛ばされた。

 声からすると――


「ウォーモンガー!!」


「おぅ、そうだ」


 空中で態勢を整え、部屋の中に飛び込みウォーモンガーから淡雪を遮るような位置に立つ。

 入り口から赤い鎧の人物――ウォーモンガーが現れる。

 その手にはいつものような大剣は握られていない。


「何をしにきたんだ」


「はっ!! そりゃもちろん――」


 ブーストをかけたように一瞬で距離を詰めてきた。

 同時に鞭のようにしなる蹴りもだ。

 それを無視をしてまっすぐ進む。


戦いにだよ(・・・・・)!!」


 金属をハンマーで殴ったような甲高い音が響く。


「ったく相変わらずかってーなオィ」


 相手は一歩距離を取る。

 するとリーパーもいつの間にか立っている。


「さて、取引をしましょう」


 その言葉を反射的に断りそうになるが、それより早く淡雪が答えた。


「内容によります」


 その答えに満足そうにリーパーは頷き。


「山上さんは強化外骨格を外して戦ってください、見事に勝ったらこの施設の電源を外部電源に切り替えましょう」


「断ってもいいが、そうするとアタシは中の奴らを殺して回る」


 しばらく考え込む。

 淡雪は必死に考え込んでいる。

 何かいい解決策を探しているようだが――


「わかった」


 強化外骨格を外して、修復が終わった片手剣と左腕だけを残す。


「腕は残してもいいよな?」


「ああ、構わねーよっ!!」


 殴りかかってきたウォーモンガーを左手で受け止めながら、戦いは始まった。

明日も頑張ります。

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