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20190419-2

何とか間に合いました。

「ゼロッ!!」


 人里離れた施設から少し離れた林に僕のめったにない鋭い声が響く。


 叫んでフロントドアガラスに連射、白いヒビがびしっり入るが割れない(・・・・)

 祈るような気持ちで全体重を乗せた蹴りは見事にガラスを破った。

 大急ぎで車の外に飛び出るその瞬間、爆発音に近いような音と共に屋根どころか底に大穴が開いた。


 同時に合図を出した子がおびえることなく運転席に急いでくれた。


「こっちを見ろ!!」


 と言いながら屋根の上に載っている相手に向けて半ば以上尻もちをついているような格好で発砲して、驚いた。


「なーんであのアメリカさんが来てるかなぁ!?」


 淡雪ちゃんの監禁の手引きをしたやつだ。

 少しは鍛えていたみたいだけど僕みたいな事務方に近いはずなのに――銃弾を避けた(・・・・・・)


「いやいや、おかしいおかしい!?」


 マガジンの残り全部撃ったけど、首を傾げたり半身になるようにして全部避けた。


 そこであることに気付いた。

 目が真っ赤に充血している。


 そして片手にはもはや鈍器に近いような何かを持っている。

 形状からすると拳銃のようだが――大きさ的には鉄アレイに近い気がする。


 アメリカさんは、何かが壊れた笑みを浮かべて銃身のお尻の部分から金属製の筒を引き出した。


「まさかそれが弾!?」


 大きさ的には目視で単二電池を並べたようなサイズだ。

 僕が撃っていた弾なんかとは比べ物にならなくらい大きい。


 まずい。

 という思いが浮かんで大急ぎで立ち上がり、ジグザグに走って逃げる。


 視界の端にはアクセル全開で発進したバンが見える。


 あの様子なら逃げきれるだろう。

 と思っていたら遮蔽物だと思っていた木が爆裂するような大穴が開いた。

 おそらく木は視線こそ遮るが、弾を耐えることができるものはないだろう。


「どうしようかなっ」


 あえて軽い口調で呟きジグザグに走る。

 と、開けた場所にでた。

 ちょうどさっき撃ったばかりなのでリロードに時間がかかるはず。

 ちらりと見たらそれなりの距離を開けている。

 ここで一気に距離をあけようと開けようとしたら――


「遅い」


 いきなり耳元で声が聞こえた。

 そっちを見ずに銃を撃つ。

 が――


「かっ  ふ――」


 何かに殴られた。


 アメリカさんだ。

 足は異様に筋肉が肥大化している。


 多分ドーピングの結果だろう。

 などとどこかずれたことを考えながら殴られた勢いのまま飛ばされて木にぶつかる。

 殴られた左腕からは熱湯に漬けられ続けるような熱を感じる。


「あー、折れてるなぁ、これ」


 銃は右手に握っていたので落としていないし、大きな損傷はなさそうだ。

 だから狙って相手を撃った。


 その振動で左腕を中心に張り裂けるような痛みが走る。

 歯を食いしばり、涙を流しながら立ち上がり歩くのと変わらないような速度で走り出す。


 すると向かう先にそれなり大きな水の音が聞こえる。


 そしてそこは――


「崖ってか、結構落差あるなぁ」


 五メートルほど下に流れて逃げれるならちょうど良さそうな川がある。

 しかしは僕は満身創痍だ。

 このまま飛び込めば溺れて死ぬだろう。


「いやぁ、万事休すってこういうことかなぁ」


 崖際ギリギリに生える木に身を預けるようにして向かってくるだろう方向を向いて待つ。

 するとわざわざゆっくりとリロードしているアメリカさんが現れる。


「うっわ、悪趣味」


 にぃ。

 と非人類的な笑みを浮かべてこっちを狙っている。

 巨大な銃弾を撃ち続けたせいか両耳からは血が流れている――鼓膜が破れているらしい。


 胸の内でゆっくりとタイミングを見計らう。

 失敗すれば死ぬ。


 思ったあたりで苦笑する。

 まぁ、気楽にやろう。

 と、そう思う。


 その様子に若干いらだった様子でアメリカさんは引き金を――


「ここ!!」


 その瞬間に狙いは適当につけて撃った。

 すると今まで通り、首をひねって弾を避けた。


 同時に相手の意識は避ける方に向けられて、弾が発射された反動を制御できず銃口が跳ね上がる。


 ちょうど僕の頭の上らへんで木がはじけ飛び、上部分が川に落ちていく。


「よっし、運が良い!!」


 その木に飛びつき。

 川へとダイブした。


===================〇============


 川を下りながら考えるのは、あのアメリカさんはこの場で何とかしないとまずいということだ。


「見た目けっこうヤバいけど、そこまでおかしくないから不意を突かれたら多分それで素手でバラバラにされる」


 そして思うのは――


「多分ノスタルジストからの提供品だろうね、あんなドーピング聞いたことない」


 手ごろな枝があったので、それと上着を使って折れた場所を固定する。

 冷たい水につかっているせいもあって、折れた場所の痛みは大分引いた。

 まぁ、長く浸かってたら死ぬけど。


「動体視力の強化と筋力強化ってところかな?」


 あの直線で一気に追いつかれて殴られたし、あんな巨大な拳銃普通はあんなにポンポン撃てない。

 まぁ、あんなイカモノじゃなくて機関銃だったら最初の車の時点でズタズタにされていただろうね。

 確かマッチョイムズだかなんだかでとにかくでっかければいいみたいな主義があったはず。

 それにすくわれたってのは妙な感じだ。


「で、途中まで殴られなかったのはまだ体のスペックに慣れてないってことだろうね」


 銃弾を避けていることから多分体が硬くなったり、とんでもなく頑丈になっているわけではないと思う。

 ということはあの脚力でどこかにぶつかったらただでは済まない。

 それと身体のスペックに慣れずに木立を全速力で駆け抜けることができなかったからあそこまで追いつかれることがなかった。


「どーしよーかなー」


 口でそう言っているが胸の内ではすでに考えはまとまっている。

 拳銃程度の連射だと見切られるなら、もっとたくさんばらまけばいい。

 突入部隊のSATはサブマシンガンを装備していた。

 それならきっと避けきることなんてできないはずだ。


 懐から取り出した通信機器は水に浸かったせいでうまく機能していない。

 場所は大体の場所は覚えているが、あてずっぽうで向かうしかない。


「ともかく川から上がろう、死にかねないしねー」


 わざと気軽な口調で話すことで心を奮い立たせて川岸に向かう。


===================〇============


 足を引きづるように突入部隊が消息を絶った場所に向かう。

 微かだが他の部隊に出会わないかなぁ。

 なんて都合のいい事を考えていたが神様ってのはいないもんで――


「いやぁ出来たら生きてた人のが良いなってさ」


 道端に折り重なるようにして武装した隊員が倒れている。

 物理的に折り畳まれている(・・・・・・・・)のがシュールだ。


「感傷はあとであとで――」


 頭のどこかを凍り付かせながら、隊員の一人からサブマシンガンをもぎ取る。

 背後から足音が聞こえる。

 ひそめるような歩き方だからこっそりやるつもりのようだ。


 一つ深呼吸する。

 チャンスは一瞬一回。


 足音から見切りをつけて、振り返り――にやけた顔(・・・・・)に引き金を引――


 どこかがおかしい。

 ささくれたように気にかかることがある。


「あっ!!」


 サブマシンガンを投げつける(・・・・・)


 アメリカさんは不満げな顔(・・・・・)で僕を殴って飛ばした。


「当たり前だよ!!」


 隊員を折って重ねた(・・・・・・)

 それを行ったのに、自分を殺せる可能性が高いサブマシンガンに細工をしていない理由がない。


 逆転の手段が致命の罠だった様を見に来たようだ。


「ほんっと悪趣味だ」


 両足も折れてもう動けない。

 自由になるのは銃を構える右手だけだ。


 やけくそになって連射する。


 その弾を避けるたびに一歩ずつこちらに近づく。


 そして――


 撃鉄がカチンと落ちて、弾が出なくなった。


「おしまいだな」


 化け物じみた笑みを浮かべて、ゆっくりと巨大な拳銃を構えて。


 引き金を――


「さぁ、死――」


 それを横から突撃してきたバンがはね飛ばした。


「は!?」


 ひかれたアメリカさんはゆらゆらと立とうとして。

 それを一旦距離を取ったバンが全速力でもう一度はねた。


 運転席から逃げたはずの子が手を振っている。


「作戦通りですね!!」


「作戦?」


 なんのことやらさっぱりなので聞き返すと。


「え、だって――」


 キーを回すしぐさをして、


「車のエンジンをかけて――」


 ハンドルをくるくる回して、


「運転して――」


 何かを振る仕草をする。


「呼ぶから――」


 ああ、キーを振るんじゃなくて、誰かを呼ぶベルだと思ったらしい。


 前を指さし、


「この道を走ってろって」


 ダッシュボードではなくて、道を指さしたのだと思ったらしい。


「えっと、すいませんはねたのはアドリブです、途中で襲われた隊員からアメリカ側の人が襲ってくるという連絡があり」


 そこで申し訳なさそうに軽く頭を下げた。


「あーうん、言葉って大切だねぇ」


 苦笑しながら、その子に支えてもらいながら、二度はねられたアメリカさんの元に向かい。

 ビクビクと痙攣しているが――


「さようなら」


 最後のマガジン全弾撃ち込んで確実に息の根を止めた。

 やるならサクッとやる。

 これが鉄則。


「さーて、山上君を待とうか」


「あの、病院へは?」


 大丈夫。

 と返そうとして目の前が急に真っ暗になった。


 あー、慣れないことしたからなぁ。


 などとのんきなことを考えながら気絶した。

明日も頑張ります。

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