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20190419-1

間に合いました。

 淡雪ちゃんが監禁されている病院から少し離れた移動指揮車両の中でヘッドセットをつけてパソコンの画面とにらめっこそしている。

 山上君の強化外骨格の頭脳は泡行くチャンほどじゃないにしても柔軟な判断をしてくれるおかげで、そこそこのドローンを飛ばして病院内の構図をパソコンに転送してくれている。

 あとはあの病院の工事計画などの図面を照らし合わせて、なんとかナビゲーションができている。


「それにしても……」


 同じような格好でパソコンと向き合って別働隊の動きをナビゲーションしている人間が数人いる。

 だから――


「ねぇ、なーんか人少なすぎじゃない?」


 画面に映し出される病院内部には警備の人間が異様に少ない。

 表向きは病院ということにしているからかとも思うけど、一応周りの同僚に話を聞いてみる。


「確かにそうですね……」


「普通の警備員もニ・三人しか正面に来ていないようですし」


 嫌な予感が高まってくる。

 こういう時は足元から固めた方が良い。


 山上君は目的地に着いたところでナビはもういらないだろう。

 となると――


「ねぇ、病院に入った別動隊と連絡って取れる?」


「え、それは――」


 そこで急いで連絡を取り合ってくれるが――


「第三班オフラインです」


「まず残りの部隊に警戒を進言して、知らない間に始末されたなんてこれ以上はやらせないで」


 すぐにとりかかってくれたことに感謝しながら頭の中身を口に出して羅列する。


「……連絡もなくオフライン――おそらく殺された原因として考えられることは?」


 音声入力を起動させ、文章に出力する。


「ジャミングされている間に殺された?」


 ちらりと近くの人を見ると首を横に振り。


「バイタルデータは再確認するまでオンラインしていて生きてました、応答を求めるまで一定時間のバイタルデータを偽装し続けていたのだと思います」


「あらー、じゃあこっちのシステムを解析されてるっぽいね」


 その上で思うのが――


「あと、多分こっちを動かさせるつもりだったね、わざわざ更新したら死亡したってことを知らせてくるなんて」


 殺してからどれくらいの時間判明しなかったのかで行動を決めた可能性が高い。


「ただ、人はそこまでいないねぇ、多くて二・三人じゃないかな?」


「……一部隊しか襲われてなかったからですか?」


「そういうこと、多いならこっちの出方なんて見ずにさっさと攻撃して倒した方が良い」


 そこはまだ救いだろうね。

 というわけで山上君を除いた残りの所在を確認する。


「目立つのは淡雪ちゃん誘拐の手引きをしたアメリカさんを探して施設の奥の方に向かった班と、入院患者への『治療』記録を得るためにデータベースを捜索中の班か」


 少し悩む。

 山上君がよほどへまをしない限りは淡雪ちゃんを抑えられると思う。

 となると――


「手引きした人間を探している班はすぐ戻って、かなり静かに全員を殺せる奴が潜んでるから、データベース見つけた班はそれっぽいの物理的に持ってきちゃって、事故ってことで処理させるから、あ、五分経っても見つからなかったら捜索は打ち切って」


 武装した人間より危険な存在が施設の中にいる。

 これ以上の損害は避けたいのですぐに目的が果たせる物だけを果たす。


「んじゃ、よろしくね」


 と言った後で、この後でっちあげる事故の詳細を練り始める。


 しばらくはそれぞれの班たちと連絡を取り合う声が聞こえるが――


「あの、青木さん」


「ん? なーにー」


 とりあえずタンクローリー突撃から、火事ってだな。

 と思いながら上の空で答える。


「この場所って安全なんですか(・・・・・・・)?」


「ん?」


 そこで顔を上げて、思考を質問内容に向ける。


「その実働班からは襲われたという報告は上がってないですし、もしかしたら最初の班の全滅させたのはここを探すためだったのかも……」


 ありえない。

 と断言できる要素はない。


 しかし問題は――


「山上君と連絡とれる?」


「いいえ」


 正直なところ今この状況なら、こっちの方が危険だが――


「お先に失礼ってわけにはいかないよね」


 ため息と一緒に吐き出しながら――


「とりあえず頭下げようか、いつ来るかわからないし」


 といったところで、何かが屋根の上に乗ったような硬質な音がした。

 声を上げてしまいそうになる二人を手で制す。


 フロントガラスなどには特殊なフィルムを張ったので外から中は見えない。

 となると外から中の様子を知るのは必然的に音になる。


 身振りでヘッドセットを外すように指示をする。

 通信に割り込まれて爆音を急に流されたらそれで位置がばれる。


 とりあえず実働班には悪いが通信はしばらく返すことができない。


 息をひそめた微かな音しか聞こえない車内で考えるのはどうやって屋根の上の相手を叩くかだ。

 運転席に移動するのはその段階でばれるのでアウト。

 屋根の防御力に期待したいところではあるが、このポジションを取ったということは確実に屋根を抜く攻撃手段を持っているということだ。


 そこで疑問に思うのがなぜとりあえず攻撃しないのかということだ。

 中に居るのは確実なんだから僕ならとりあえず攻撃する。

 何かデメリットがあるからそれが取れないのだ。


 考えられるのは一度使ったら、もう一度使うまでにそれなりに時間がかかってしまうことだろうね。


 なら空うちさせればいい。


 覚悟を決める、この場で一番偉いのは僕だ。

 そしてこの後は帰るだけだって伝えてある。


 運転席に比較的近い人間に鍵を回すジェスチャーとハンドルを回すジャスチャーをする。

 すると頷いてくれた。


 何かをつまんで軽くゆするジャスチャーをする。

 相手は一瞬何かわからない表情だが、何かに気付いてダッシュボードの鍵に目を向けて頷いた。


 懐から音を出さないように拳銃を取り出す。

 警察が使っているようなリボルバーではなく、マガジン式の物だ。

 銃にこだわりはないので名前は知らないが、リボルバーより弾が撃てるから選んだだけだ。


 片手でカウントダウンをする。


 3


 ゆっくり安全装置を解除し、引き金を引いたら弾が出る状態にする。


 2


 足に力を込めてすぐに飛び出せるようにする。


 1


 狙うはある程度大きな窓。

 僕の体が楽々通れる窓だ。


「ゼロ!!」

明日も頑張ります。

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