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4月19日-3

間に合いました。

「答え合わせをしましょう」


 そう言われて一瞬耳を疑いました。

 かなり明確に敵対してきた相手からの急な話に理解が追い付かない。


「何が目的なんですか?」


 聞き返すと、“リーパー”はなんでもないことのように――


「そのままの意味ですけど」


「……」


 少しだけ考えますが――


「拒否しても意味はないですね」


 諦めて話をすることに決めた。

 以前に山上さんも同じような判断を下して策に陥れられたそうですが、拒否したところで暇が増えるだけでなので受け入れることにしました。


 どこまで話した言葉を信じるのかというところはありますが、おおむねは信じてもいいはずです。


 なのでまずは大切なことを切り出すことにした。


「橘さんは元に戻せますか?」


「どのレベルまで、という話をしてもいいのですけど――不可能じゃないとだけ」


 口ぶりからするとかなりの改造を施しているということが察せられます。

 死んでいないことは救いと言えば救いですが、人型である可能性すら捨てないといけないかもしれません。


「どうして橘さんを狙ったんですか……」


「たしかにもっと屈強な人もいるにはいるでしょうが――」


 そこでいったん言葉を切る。


「『      (安逹 佳純)』この名前に覚えは?」


 一部の言葉にノイズが入りよく聞き取れませんでした。


「えっと、どなたです?」


 聞こえていたのかもしれないですが、意味のある言葉として受け取らなかったのかもしれないです。

 その返答は予想していたのか特に表情を変えることなく“リーパー”は言葉を続ける。


「今この世界で彼女を認識しているのは橘君だけなんですよ、だから彼を手元に置いておきたいのです」


 ふふ。

 と相手は笑って――


「びっくりしましたよ、いくつかまいた種の中であの時ようやく見つけた彼女があそこまで大きな結晶を生成するとは思わなかったです」


「あの時っていつですか?」


 一瞬だけ不思議そうな表情を浮かべて――


ダレカ(・・・)になったときですね、その時ようやく再度捕捉できたんです、あの時はクリーチャーもいっぱいいて大変だったんですよ」


 あの時の被害はしっかりと聞いていないですが――


「交通事故が十五万件以上あったそうですよ」


「……」


 改めて言われるととても重い数字です。

 だから押し黙ってしまいます。


 そこでクスクスと笑われる。


「死者数は言わないでおきましょう、気にされるでしょうし」


 私を拘束している手かせを触りながら。


「そんな気質だから、この程度の拘束から逃げられないんですよ」


 おかしそうに笑いながら伝えてきました。

 そんな“リーパー”に私ははっきりと伝えます。


「確かにこれは相手がやってきたことなので、私には責任はないかもしれません」


 でも。

 と思うことを続ける。


「どうにかしたいと思うことはおかしくないです」


 虚を突かれたような表情を一瞬だけした。

 その後心底嬉しそうに笑みを浮かべ、私の頭に手を置く。


 その瞬間、ハッキングを仕掛けようとして――


「は、っふ」


 電撃でも流されたような衝撃が入る。

 その様子にどこか微妙な顔で“リーパー”がこちらを見ている。


「せっかく少し核心の言葉を言おうとしたのに、抜け目なく物理的に接触したところからハッキングを狙うのは流石ですね」


「それを読んでいた“リーパー”も用意周到ですね」


 そこで一つ咳払いをして、強引に流れを戻した様子です。


「そういうところも含めてなのでしょうね、知っていますか? あなたのコンセプトは恋する乙女(・・・・・)なのですよ」


「え?」


 唐突にとんでもないことを言われたので言葉に詰まる。


「私たちはある程度コンセプトに従って作られます、“ウォーモンガー”が刹那的な戦闘員であるような形で私たちはコンセプトがあります」


 今度は振れないように私を見下ろしてくる“リーパー”。


「その中であなたは単体で様々な問題に対処できるようにとてつもなく費用をかけた作り方をされています、ですが一つ大きな弱点があります、わかりますね?」


 するりと私の口から出た言葉は――


「数ですね」


「その通り、現地で協力者を得ることができるように、ひたむきでくじけず、でも他者の痛みを思いやってしまう、ある意味で非合理的ですが、ある意味で利害関係を越えた協力者を得るためですね、何かのためにまっすぐ走るのはまさに恋する乙女ですね」


 その言葉は私に重くのしかかる。

 私の性格の傾向すらも目的のために作られたというのは根本から揺さぶられる。


「そ、れは――その」


 続ければいいのかわからず言葉に詰まる。


 と、どこかから重いものがコンクリートにぶつかったような轟音が聞こえました。


「え!?」


「あらあら思ったより派手ね――ねぇ、あなたの王子様が来たわよ」


 その言葉に先ほどの落ち込みが嘘のように胸が高鳴る。


「うん、いいわねぇ、ほれぼれするくらい」


 どこか恐ろしささえ感じるような、やさしい口調で――


「恋の始まりが困難なら、恋を深めるのは障害ね」


「一体どういうつもりなんですか」


 私の想いを利用するような言葉に、にらみつけ聞き返す。


「いいのよ、あなたは思うままに行動しなさい、恋を結実させるまで、ね」


 とささやいた後は部屋をあとにした。


 その姿を見送った後で――


「いまは山上さんを信じましょう」


 恋を結実させるまで。

 その言葉が頭の中で反響しているが、とにかくここを逃げる事が優先だと無理に無視をした。

明日もがんばります。

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