Apr. 18 2019
間に合いました。
「これは一体どういうつもりですか?」
眼前には拳銃を構えた男性。
その後ろには二十メーターほど離れて三グループのアサルトライフルを構えた集団がこちらを狙っている。
おそらくずっと離れた場所に狙撃手も伏せていると思います。
とどめのように目立つ位置に攻撃ヘリまで浮かんでいます。
思い返せばアメリカの方に“ディープスロート”を助けてもらい勝手に最寄りの在日米軍基地に連れ込まれてしまいました。
お礼の方のお話はとっくに済んでいるのにです。
「話では日本の警察に制圧されたそうだな」
「そうですが、契約を破ると?」
念を押すように聞き返す。
すると相手はこちらを侮蔑した目で見て――
銃声と肩への痛みが発生しました。
「数十の弾丸を喰らっても命を失わず、すぐ血が止まる、その生命力だけでも素晴らしいが、未来の技術も有している」
その目は銃弾を撃ち込んだ肩へと向けています。
確かにこの程度の傷はすぐに治り始めます。
「私たちの得体が知れないから協力関係を結んでいたけど、警察に制圧できたから軍を動かせば何とかなると?」
「ああ、調べではその二人は戦闘力が低い方なのだろう?」
“ナード”は特殊なので省くと、確かに私と“ディープスロート”は銃で武装した集団に制圧されるでしょう。
“ディープスロート”に合図を送ると――
「そっちの奴が音を使うってのは調べがついてる」
という言葉と共に“ディープスロート”の両手が爆ぜた。
一瞬遅れて銃声が聞こえた。
「痛いわねぇ」
痛覚を切ったのだろう、負傷に反して声には余裕がある。
「あらら大分調べているようですね、手がメインの発振部というのはどこで気づきました?」
「ふん、さぁな」
さて考えてみれば結構まずい状況ですね。
二桁以上の人から発射された弾をさばききるのはちょっと難しいです。
まぁ――
「決別を選んだのはよくないですよ」
「いいや、研究材料だ」
ため息をつく。
同時にアサルトライフルを構えていた一グループが空から撃ちおろしてきた白い光で蒸発した。
そして高熱で陽炎が立ち上る中に赤い鎧が降りてきた。
「“ウォーモンガー”時間ピッタリですね」
拳銃を向けていた方は目を白黒させている。
きっと思っていることは――
「連絡もさせていないのになぜだ? と思っているでしょう?」
返事は求めていないので説明を続ける。
「貴方達は優秀だからです」
呆けたような表情をしたのが見えます。
「優秀だから私たちの中で戦闘能力が低い方は銃弾でも十分制圧できることを見抜くだろうと思っていました」
そこで残りの二グループが思い出したようにこちらに銃口を向けて――
「だから残りのメンバーに私の位置を追いかけるよう伝えておきました」
一グループは爆炎に包まれ、最後は攻撃ヘリの機関銃で処理された。
「ですが、少し甘く見ましたね」
意識して笑みを浮かべて近づく。
こちらの額に銃口を向けて震えている。
少し狙ったとはいえ怖がられるのは気が滅入ります。
でも大切な事なので最後まで詰める。
「さて何かお話はありますか?」
「クソが!!」
完全におびえ切った動きで引き金を引いてきました。
武器の大鎌を取り出して、刃を銃弾に向けて受ける。
首尾よく盗れたので、私が撃たれた場所を狙って銃弾を返した。
「が、ぁ――」
そのまま地面にうずくまった。
「では、良い関係を改めて結びませんか?」
また撃ってきたので今度は盗るだけにして尽きるまで待つ。
「さて、気が済みましたか?」
「ば、化け物が」
さすがに少し傷ついたのでちょっと強めに脅すことにする。
「これは脅しですが、あなたが今撃った弾でこの基地の偉い人を射殺しますよ、他にもあなたの奥さんや子供さんとか」
思い出すのは調査結果だ。
「そういえばあと少しで小学校へ上がるそうじゃないですか」
みるみるうちに顔が青くなる。
「まて、息子は関係ないはずだ」
「そうですよ、何か勘違いしていますか?」
相手はがっくりとうなだれる。
すこし脅しすぎた気がしますが、許容範囲だと私自身を納得させる。
そして基地をあとにした。
明日も頑張ります。




