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4月18日-4

何とか間に合いました。

「いやー、ありがとねー、おかげで捕まえれたよ」


 ディープスロートは事故にあったという建前で病院に収容された。

 その病院から少し離れた場所で青木さんにそう声をかけられる。

 青木さんの顔には満足そうな笑みが浮いている。

 時間はお昼を少し超えたあたり、朝に幸次さんが作ってくれていた弁当を食べている。


「それはよかったです、SATの人たちを運ぶのが無駄にならなくて」


「まぁ、最初は怖かったって言っていたけどしょうがないよね、車ごと空を移動させられるなんて」


 ディープスロートの襲撃計画は突然決まった部分も大きく、力業で成功させた部分が大きい。

 俺はSATの人たちとは逆サイドの林で待機していた。

 結果的に山ほど銃弾を撃ち込んで制圧できたので、移動手段になったことが一番の仕事だろう。


「情報の抜出しは淡雪ちゃんがやってくれるから楽でいいよ」


 もちろん得た情報は今回の出来事だけではなく他の事にも流用するんだろうな。

 と思うが口に出さないでおく。

 というのもはっきりとは見ていないが、明らかに研究者のように見える人も収容された施設で見たからだ。

 力を借りているのだから、そこまで口は出せない。


「次はどうしますかね」


「山上君はどうしたいのさ」


 聞き返されて少し悩む。

 すると素直に思ったことを口に出す。


「橘を助けたいですね」


 ほかにも言うべきことはあるのだろうが、まず思うのがそれだ。

 すると青木さんは嬉しそうにうなずきながら。


「ま、いいんじゃない、やりたいことをはっきり決めるのはいい事だよ」


 ああ、そうそう。

 と言ったあとで――


「淡雪ちゃんと付き合うことになったんだって」


 思わずむせた。

 すると青木さんは一本のお茶のペットボトルを差し出してくれたので、それを飲んで落ち着く。


「だ、だれからそれを」


「なんか雰囲気がおかしかったからカマをかけたら当たりとはねぇ」


 勘が鋭すぎると戦慄する。

 がとうの青木さんはニコニコ笑っている。


「いやぁ、良い事だね、いつかくっつくと思っていたけど案外ひっぱったねぇ」


「……そんなにバレバレでした?」


 喉の奥だけ笑いながら青木さんは返してくる。

 居心地が悪いが、いやな感じはしない妙な空気が流れている。


「まぁ、今は立て込んでいるからさ、せっかく付き合い始めたんだしただゆっくりする時間も取ってみたら」


「そう、ですね」


 毎日何かしらの事件があってそれを対処することに必死で、ただ一緒に居たことなんて数えるほどしかなかった。

 そう考えると静かな時間は本当に希少なものなのだと気づいた。


「いつになるやら……」


 ノスタルジストのメンバーを一人捕まえたのは確かに前進だろう。

 でも嫌な予感がぬぐえない。

 今まで一枚上手だったリーパーを出し抜いた形のように思えるが――


 そんなことをぼんやりと考えていると、青木さんに一本の電話が入った。


「あ、はーい、青木ですけ――はい? ええ、はい、はい」


 口調こそ変わらないが表情は少しだがこわばっている。

 よっぽど腹に据えかねる電話らしい。


「わかりましたーよ」


 電話を切って大きくため息をついて。


「ねぇ、山上君?」


「な、なんですか?」


 青木さんはどこか疲れ切った顔でとんでもないことを言い出す。


「今からいきなりブチ切れて、ディープスロートを殺したくならない? あ、もちろんさっきの電話とか全然関係ないよ」


「え、いや、ちょとありませんね」


「そっかぁ、そうだよなぁ」


 そこでいったん言葉を切って、


「アメリカの人が来てディープスロート――人間としての名前ならウィリアナ・マーク・フェルトの身元を引き受けに来るってさ」


「はい? テロリストなのにですか?」


 すると青木さんは首を横に振って否定する。


「まぁ、証拠もなしにテロリスト扱いできなくてさ、だから事故って入院中ってことにしたわけ」


 空を仰ぎ見て何かを考えている様子だ。


「警察とかそういうの一切関係なし、本人は意識不明の重体、どこにも情報を出さずにってやっていたのにどこから漏れたんだか……」


 といったあたりでこちらに視線を向ける。

 青木さんの中ではすでに答えが出ているのだろう、だから俺も答えを返す。


「リーパーですよね」


「まぁ十中八九ねぇ……はぁ、もう色々無視してリーパーをバッサリやっちゃってよ、顔と名前とか用意するからさ」


 冗談半分――つまり半分本気でそう言ってきたので、やんわりと拒否して、これからやってくるリーパーへの準備を行い始めることにした。

明日も頑張ります。

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