4月18日-2
間に合いました。
迎え入れたはいいが何を話せばいいかわからず、つい相手の出方を待ってしまう。
茶も出さないことも考えたが出さない方が気にしているように思われてインスタントコーヒーを出そうとして――
「あ、くそ」
ふたを開けるだけでも少し手間取る。
それを見ていたリーパーが――
「不便、ですよね」
「なら返してくれるのか?」
するとゆっくりと首を横に振り。
「いいえ、交渉材料になると証明したじゃないですか」
「あ、くそ」
眼球を受け取りに行った時だ。
あれは俺たちを呼び出すためでもあるが、奪い取った体の一部が交渉材料になるかどうかを確認するためでもあったのだ。
淡雪の話ではなくても不便がないように新しく作れるそうだ。
だからそちらを選んだのか、それとも出来たら取り戻したいと思っているかを確認するためにあの取引を持ち出したのだ。
「そうか」
義腕を呼び出して今度こそコーヒーを用意する。
失って思うのが、ただカップを用意して粉を注ぎ湯を入れるだけという操作もできなかったということだ。
「あらあら、意地っ張りですね」
クスクスと笑いながら、楽し気にこっちを見ている。
リーパーと俺の分を用意して、ようやく話し始める。
「では早速答え合わせをしましょうか」
「なんのだ?」」
なんについての答え合わせをするのかわからずについそう返す。
「我々が昭和の再現も行っていると気づいてますね」
表情に出てしまったかもしれない、だから慌てて顔を隠すために強化外骨格を装着した。
しかし、その反応自体が釣られた結果だろう。
その反応を見たらリーパーは薄くだがほほえみを浮かべている。
「表情からそれ以上の情報を読み取れないように即武装したのは流石ですね」
「でも一番知りたい情報だったんだろ、つぎの行動のために」
「さて、入れてもらったところですが、そろそろお暇しますね、いつ淡雪が不審に思うかわからないですから」
と言ってコーヒーを一息に煽るようにカップを傾ける。
こんなことなら沸騰直後の湯を使えばよかったと後悔する。
このままにはしてはいけないと思い、ほぼ衝動的に切りかかる。
それを身をひねるようにして簡単にかわされた。
「おかえししますね」
「く!!」
と言ってカップをこちらに放ってくる。
それは空中をすべるように顔に向かってくる。
何かおかしなことはされていないので無視をして踏み込んでカップが額に当たり、砕けた。
「なっ!!」
視界がいきなり悪くなった。
こげ茶のそれは――
「コーヒー!?」
「はい、お行儀が悪いですが、飲んだ振りというやつです」
その声はすぐ右で聞こえた。
本来なら多少視界が悪くなっても問題なかったのに、気を取らてしまったせいだ。
そして、踏み込んだ足を払われる。
「なっ!!」
このままでは転んでしまう。
だから宙に浮き距離を取ろうとして――
嫌な予感がして、全力で床にぶつかる。
「惜しかった」
という言葉と宙に浮こうとしていたら居たであろう場所を通り過ぎる鎌の刃が見えた。
「く!!」
後先考えず床を破壊するようにして激突させる。
すると何とか右肩からフローリングにめり込んだ。
「おぉ!!」
隣接し、見えない位置である床下から右の剣を切り上げる。
「あらあら」
と余裕すら見せて一歩引くことでまた避けた。
そこで鞘に納める。
と――
「ふふ、すこーし大胆な格好になってしまいましたね」
ワンピースのスカート部分の正面にかなり深いスリット――のように見える切断が入っていた。
相手はそのまま身をひるがえし距離を取られる。
「さて、それではさようならですね」
何か円筒状の物をこちらに投げてきた。
それはすぐに煙を吹きだし始めた。
「くそ!! まて!!」
とおいかけはじめたときにはすでにかなり距離を取られていて、人ごみに紛れる前に追い付くのは無理そうだ。
「やられた!!」
相手の動きに対応する前に目的を果たされて、去られることが立て続けに起きている。
本格的に今すぐ話し合う時が来たと決心して――
「家の中どうしようかなぁ?」
と戦った結果(被害を与えたのはすべて俺)の惨状を見て頭をかかえた。
明日も頑張ります。




