4月18日-1
間に合いました。
青木さんから休むように言わ、できることもないので素直に家に帰った次の日。
ベッドから身を起こそうとしてやはり違和感を感じる。
「目は戻ったが――」
左腕がなくなっているのはまだ慣れない。
付けた義腕は金属製なので軽くぶつけただけで傷をつけることと、やはりあまりに厳ついので隠す方が楽だ。
淡雪の言葉ではつながっているので幻肢の症状は出ないらしいが、いつ戻るのかわからずに不安が募る。
「まあ、いつか戻るか……」
居間に向かうと出勤前の幸次さんがいた。
「少し遅めだな奥谷」
「それはまぁ学校もないですし」
苦笑しながら答える。
すると幸次さんは左腕に視線を向けて。
「じっくり見たのは今が初めてだが、嘘じゃなかったんだな」
すこし気落ちしている様子だ。
「腕をとりかえしたなら直るそうなので、目みたいに」
といって俺の左目を指さす。
「こないだから信じづらい事ばかりだな」
一つだけため息をついて。
パンフレットの束を差し出してくる。
「少しだけ障がい者への支援について調べた、資料も集めたからよく読んでおけ、治らなかったときのためにもな」
「はい、ありがとうございます」
そのあと幸次さんはあわただしく出勤した。
用意されていた朝食は握り飯を中心にした片手でも食べやすいメニューだった。
「いつか――いや、早いうちにお礼をしなきゃな」
片手だけだが手を合わせる動作をして食べ始めた。
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朝食後、話を聞きに行くために家を出ようとしたときにインターホンが鳴った。
何の気なしにドアスコープを覗いて――
身体が凍り付いた。
「なんでリーパーがここに!?」
柔らかな笑顔を浮かべ、見た目は完全に普通の人間に見える。
しかし、たくさんの事件を起こし、橘を狂わせた敵だ。
踏み込ませるかどうかを迷っていたら――
「ノブくらいならねじ切れますし――」
ノブすら回していないのにドアを押し開けられた。
「この程度のドアならね」
と言って右手にのせているのは金属製の部品だ。
なんなのか悩んでいると、よく見ると三角のでっぱりと長方形の見覚えのある部品だ。
「これってドアのロック」
「ええ、そうです」
しかし、家の中には入ってこない。
「どうして踏み込まない?」
「迎えられてないですから」
クスクスと笑いながらそう返してきた。
だったらそのまま帰るように言おうとして――
「さて、いまこの時点で淡雪が来ていない理由がわかりますか?」
「……なるほど」
近づいてきているのがわかっていたなら淡雪なら着いているだろう。
そして今は朝食が終わったところでしばらく家から出なくても不自然ではない。
「何が望みなんだ?」
「フフッ、お話をしましょう」
表情からは意図が読み取れない。
しかし、リーパーは淡雪の目をかいくぐって活動できる上に先ほどのように無音で鍵程度は無効化できる。
幸次さんを狙って行動することも可能だろう。
そしてリーパーを相手するのは苦手だ。
一人で撃退しようとして、今度は首を持っていかれる可能性もある。
「わかった」
リーパーを家に迎え入れた。
うまく足止めをして淡雪が不審に思えば手を打ってくれるだろう。
もしくは淡雪に連絡をするかだ。
「では、お邪魔しますね」
家の中に入る際、かすかだが嗅ぎなれたにおい――淡雪の匂いがした。
明日も頑張ります。




