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4月6日

少し短めです。

======〇=========================


 安逹の一件以降異様ともいえるほど何も事件は起きていない。

 すでに夕方になっている。

 といって自嘲気味に笑う。


「なにも起きないのが普通なのに何を言っているんだか」


 予習復習をホテルの机で行いながらつけているテレビには海外の緊急ニュースが流れてるが碌に内容が頭の中に入ってこない。

 伸びをすると、柔らかい声がかけられる。


「お疲れのようですね、山上さん」


「ん、まぁ、な」


 これまではほぼ圧倒できているが、今日来る奴が危険な者の可能性があるし、なによりさしあたっての本命は明日だ。


「ところで――」


「今度こそ安逹さんは病院で安静にしています」


「そうか、それはよかった」


 昨日は自らの意思で殺されに行ったように見えた。

 それほど心が憔悴していたのだろう。


「ところで例えば今を生きている人間がノスタルジストになるなんてことはあるとおもうか?」


 それには淡雪はゆっくりと首を振って否定する。


「すいません、わからないのです、具体的な規模もメンバーもです」


「というと?」


 不審に思って聞き返す。

 戦うために送られてきたのなら、それなりに詳しいと思ったからだ。


「以前にも言いましたが私は未来について覚えていることはものすごく少ないのです、なぜ急にそんなことを?」


「いや、気になったというか――」


 思い出すのはおとといのことだ。

 むかしにかえして

 と、安逹がつぶやいていたことだ。


「おとといに安逹が事件解決後につぶやいていたんだ、むかしにかえしてって」


「……あくまで私の考えで話します」


「ああ、頼む」


 俺に向かい合うようにして椅子に座る。

 その表情はかなり思い悩んでいる様子だ。


「思えばなれる、というものではないです」


 指を一本立てて示してくる。


「正確にはそのような思想を持つことはあったとしても、()()()()です」


「なるほど、テロじみたことはできない、と」


 一つうなずいてくる。


「そして、過去に影響を与えるような力や技術を今持てるとは思えません、今から研究などし続けて未来に完成させるならともかく」


「確かにな」


 思えばなれるものなら確かになっている人間は多いだろう。

 小さくだが確かにうなずいてさらに続けてくる。


「ただ、安逹さんはクリーチャーに目をつけられた可能性が高いです」


「目を付けられる?」


「ええ、普通はほとんどない確率です、それこそサイコロ6個を普通に振ったら、すべてが1の面を上にして、ぴたっと積み重なるよりも低い確率だと思います」


 そこで小さく首を振り。


「しかし、彼女はすでに二度も明確に狙われた、山上さんのように目をつけられたのかもしれません」


「なんだって、そんな……」


 痛ましいことを見たように目を伏せて言葉を続ける。


「わかりません、ですがこれは危険なはずです」


「危険って命を狙われているからそりゃ危険だろうが」


「違います、クリーチャーに襲われたら何らかの現実や認識を書き換えられます。これは以前に話しましたよね」


 その話は昨日に聞いたのだ、忘れているわけがない。


「雲仙岳は撃退したら元に戻りました、でも安逹さんは襲われた記憶を持ってひどく衰弱させられているという影響を受けています」


「そういうことか、俺も含めてだがあいつらから受けた影響が戻っていないわけか」


「ええ、つまり厳密には完全に今の人間ではないのです」


 ふと気づいたら冷や汗をかいている自分に気付く。


「何ができるかなどは全くの未知数、ただ狙われるだけという可能性もないことはないですが、最悪の事態を考えるべきでしょうね」


「気が重いな」


 最悪の事態、それは安逹を――


「待ってください、そこまで最悪は想定しなくていいですよ!!」


 淡雪はあわててこちらの想像を止めに来る。


「え、でも」


「いいですか、勢いでそんなことを想像してはダメです、純正のクリーチャーも圧倒できるのですから、気づかれる前に拘束することも不可能じゃないです、最後の一線を踏み越える覚悟は本当にその時まで後回しにした方が良いです、そのハードルを下げてはダメです!!」


 いつになく勢いのある口調で静止してくる。

 そこまで言われたのなら、頭を切り替えることにする。


「もしかしたらこのままずっと入院していることになるかもしれないですしね」


「……それはどうなんだ?」


 噂では現代の怪奇現象としてどこぞのテレビ局の取材が殺到しているらしい。

 確かに客観的に見るならかなりの容姿をしているから画になるのは確かだろうからそういう面もあるのかもしれない。

 そんなことを考えていると。



「新元号は平成と閣議決定されました」



 と、いう異様に明瞭な声がテレビから聞こえてきた。

 淡雪の方を見ると深くうなづいている。


「場所は?」


 部屋を飛び出しながら淡雪に問いかける。

 淡雪もまた真剣な表情で答える。


「驚かないでくださいね、空の上――」


 そこでいったん声を区切り続ける。


「相手は旅客機を落とそうとしています」


======〇=========================


 言われるままに空を飛び向かうと、一機のジャンボジェットが飛んでおり。

 その上には二足歩行の電子部品の塊のようなものがいる。


「すいしゅしぇhすしいしゅすういーへへえぇぇ」


 嬉しそうに身を揺らしながら、しかし拾える声自体は電子音を混ぜ合わせたようにいびつだ。

 スピードを合わせ胴体の上に降りる。

 後ろに少し離れて降りた淡雪が話す。


[この旅客機はいまパイロットの手を離れてとばされています]


 かなり慌てている様子だ。

 だから問いかける。


[あとどれくらいで墜落する?


[3分、相手のハッキングを邪魔して、何とか引き伸ばします]


 そこで宙に浮かぶレンズに手を伸ばし。


[いまこの飛行機は着陸させるところです、着陸させたなら墜落はできません]


[わかった、守ればいいんだな]


 と、レンズに高速で大量の文字が流れ始める。

 それに気づいた化け物はノタノタと近づいてくる。


[山上さん、その強化外骨格で本気で踏み込んだら外装を貫いてしまいます]


[ということは飛び道具も控えた方が良いか]


 そこそこ正確に狙えるが外れたら大穴を開けかねない武器を使わない方が良いだろう。

 と、思いながら剣を構える。

 剣が届く範囲から一歩だけ離れた場所で化け物は停止した。

 耳障りな声で笑っていた化け物は――


「らごらkげおうあかがらららあらららrr」


 割れるように変形して少なくとも5本のケーブルを発射してきた。


[くっ!! 強い!!]


 一本目を弾いたら盛大に削られる音がして、二本目で亀裂が入り、三本目で真っ二つに折れた。


「あぁぷっりrたぽrtぷす」


 残り二本のケーブルが飛んできて――


 鉄塊をハンマーで殴ったような音共に()()()


 疑問に思ったのか微かに首をひねりながら何度も何度もケーブルを叩きつける。


 が――


[生存性重視にも程がないか? この強化外骨格]


 すべて弾いている。

 そのうちになんとかケーブルの一本をつかむ。

 と、そこにスパークが走る。


 高圧電流を流したらしい。

 ――がそれもこちらには効かない。


「ぎぃ!」


[逃がすか!!]


 逃げようとしたので、しっかりとケーブルをつかむ。

 ここからは綱引きだ。

 と思っているうちにあっさり引きずられる。


[やっぱり出力はあっちが上か]


 そのまま引き寄せられ――


[さすがにあれは、まずいか]


 大口を開けるように化け物は自身の前面を観音開きし、中には粉砕機のような歯が回転している。

 腕の一本くらい覚悟していると――


「ぃぃlたあたたたたたぃぃぃ!!」


 石のように吐き出された。

 腕はしっかりとついていて、挟まれた跡らしきものはついていない。

 しかし、化け物の歯の一部はどうやら割れている様子だ。


[まさかの頑丈さだな]


 半ば呆れつつ、うろたえている状態ならできることがある。


[じゃあ、飛行機の方は頼む]


 と淡雪に伝えて、飛行機から化け物を蹴りだし。

 空中で羽交い絞めにするように抱きかかえる。

 向かう先にはキロメートル単位の舗装された直線――滑走路がある。


「じゃ、頑丈さの勝負だ」


「ひぃぃぃぃ!!」


 狂ったようにガンガン叩いてくるが全く何の痛痒も感じない。

 だからそのまま滑走路に向かいフルスロットルで加速する。


「あlぎゃぎゃぎゃやぎゃやぎぃぃ!!」


 滑走路に押しつけるようにして加速し続ける。

 最初はこらえていた様子だが、火花を散らし続けて削れていく。


「ぁぁっ!!」


 しかし、その途中で引き離される。

 滑走路の上、化け物と対峙する。

 向こうは押し付けられた面がえぐられ平らだ。

 対してこちらは全く無傷。

 さて、どうしようかと思っていると、連絡が入った。


 そして化け物は飛び掛かってくるが――


「そこ、危ないぞ」


 着陸してくる飛行機にはねられる。

 いくらパワーがあろうとあの巨大な質量だ。

 タイヤに踏み潰されグシャグシャになった。


「危なかったですね」


 飛行機の上からひらりと降りてきて淡雪は話しかけてきた。

 素直にうなずく。

 結果的に見れば圧勝だが、それはこっちが異常なほど頑丈だったからだ。

 攻撃能力、パワーなど様々な性能はあちらの方が格上だった。


「そろそろ帰ろう」


 周りを見ると化け物をすりおろした跡は残っていない。

 何百人もの犠牲が出るかもしれなかった事故の再現は防がれた。


「疲れたぁ」


 武装を解いてその場に寝転がる。

 春の夜はまだまだ肌寒いが熱を持った体にはありがたい。

 普通なら滑走路上に誰かが居たら職員が飛んでくるだろうが、その様子は今のところない。


 そこで腹の虫が聞こえた。


「さ、帰ろうか」


 苦笑しながら音の主を見る。


「いやいや、ち、違いますよ? これはあのクリーチャーのハッキングを退けるのにエネルギーを使っただけです」


 ゆっくり身を起こして話しかける。


「せっかく遠くまで来たし、少しくらいグルメを楽しんでもいいかもしれないな」


「なるほど、この方面ならですね――」


 と言いながら近くの名物のピックアップを聞きながら、その場をあとにした。

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