4月17日-1
間に合いました。
倒れるように眠ってしまっていたらしい。
目が覚めるといつかのように淡雪の顔が視界いっぱいに広がっている。
「おはよう、淡雪」
「あ、おはようございます山上さん」
その表情は少し落ち込んでいる様子だ。
体を起こそうとして違和感に気付く。
「おっと」
左腕がなくなっていたのだ。
となると――
「ああ、左目もか」
視界にも違和感があったので確かめたら左目もまだなくなっている様子だ。
「えーと、淡雪?」
「ごめんなさい」
深々と淡雪が頭を下げてきた。
「どういうこと? なんで淡雪が頭を下げてるんだ?」
「結論から言いますと、このままでは山上さんの左目と腕は治せません」
深刻そうな顔をしている理由は納得できた。
「なぜ?」
「切り取られたわけではなくて、位置が変わってしまったからです、つまり山上さんの目と腕は機能していないのですがつながっています」
すぐには理解できない内容だった。
しかしかなり厳しい状況ということはわかった。
「生やすことは?」
「できます、ただおすすめしません」
きっぱりと言い切られたが、聞き返す。
「どんなデメリットがあるんだ?」
「……正直なところ大きなデメリットはないです、増やしたならまた減らせばいいだけです」
「だったらそれでいいんじゃ――」
その言葉を聞くと、悲しそうな顔をする。
「もっと自分を大事にしてください」
真剣な表情で言われてようやく気付いた。
無くなったから増やそう、多いから減らそう。
確かに理屈としては筋が通っているが、機械や人形のように自分の体を扱うのは大切なところがずれている。
「その、わかった」
「とりあえず義手は用意しておきます、目はこれで」
と言ってサングラスを渡してきた。
疑問に思いながらかけると――
「おお!! 見える」
視界が元のように開けた。
おそらくだが遠近感もつかめるようだ。
「すごいけど、どうやっているんだ?」
「強化外骨格経由で視界の情報を脳に直接送っています」
さらっと言われたが結構恐ろしいことを言われた気がする。
「大丈夫なのか?」
「あくまで視覚だけなのでハッキングされても大丈夫です」
ならいいけど。
と思うことにした。
「ではつぎは義手ですね」
「頼む」
と言っていると、左腕に重みを感じる。
疑問に思ってみると金属でできた腕が現れていた。
「早いな」
「強化外骨格の腕を調整しました、常に出していても不便ではない大きさだと思います」
なるほど、と思いながら軽く動かしてみるが感触こそないが自由に動かせた。
「腕と目は取り返せば治せるわけか」
「もしくは向こうで破壊されたらですね」
サングラスに義手とかなり厳つい格好になったが、幸い今は学校は行かずに済むので大丈夫だろう。
そこであることを思いだす。
「あ、幸次さんに連絡しないと」
思い出したので早速スマートホンを取り出して連絡した。
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幸次さんはかなり複雑そうな声をしていたがおおむね納得してくれた。
最後に「もしもの時のために、「手続きやらは調べておく」とあきらめ気味に伝えてきたのが印象的だった。
そこで部屋のドアがノックされる。
「はーい、そこの不純異性交遊手前のお二人さーん」
声からすると青木さんだ。
だから一応ドアスコープで確認はするが鍵を開けて中に迎えた。
「あー山上君、大分不良みたいな格好になったね」
「まぁ、丸ごとえぐられたみたいなものなので」
「障がい者手帳とか手当とかは口ききするから安心してね」
治すつもりはあるので全く安心できない。
まぁ表情からすると冗談半分というところだろう。
「ま、東京を離れてここまで来た理由はそんなことをいうためじゃないんだ」
「ここまで?」
そういえばここがどこかは確認していなかった。
のでスマートホンから地図を確認すると。
「和歌山県?」
「そ、いやぁけっこうな強行軍だったよ」
と大してつらそうな風もなく言い切った。
それはおいといて、と話題を転換されて。
「あの嵐の巨人がなんだったのか――何がもとになったのかかなり荒唐無稽だけど一つ思いついたんだよね」
「それは、電話じゃダメなんですか?」
「相手が相手、出しねどこで盗聴されているかわからないし」
一つ咳払いをして、青木さんは――
「伊勢湾台風、それがあの嵐の巨人の元じゃないかと思うんだ」
明日も頑張ります。




