4月16日-4
何とか間に合いました。
拠点にしていた場所をこんなに早く去ったということは次の潜伏場所の手掛かりは残しているかどうかは怪しいと思ったので淡雪に聞いてみることにした。
「次の拠点の手掛かりを残していると思うか?」
「というよりもどれだけの規模だったのかを調べている段階ですね」
集めてきた電子機器一つ一つを手に取って淡雪は何事か確認している。
「人数は五人、つい最近追加で一人はいって六人というところだな」
と針山さんが断言した。
淡雪がちらりとこちらを見たので代わりに質問することにした。
「針山さんはなぜそう思ったんですか?」
といって、ゴミ箱を示す。
そこには栄養補給用のゼリーパウチが捨てられている。
それを針山さんが取り出して見せてくる。
「鎧の奴は男勝りで、リーパーとかいう奴はそこまで化粧っけはなかった、そうだよな?」
よく見るとその蓋と本体の間にピンク色がついている。
「鎧の奴が実はってわけじゃないなら、日常的に化粧をしている奴がいる、しかも化粧を落とさずこんなゼリー飲料で栄養補給をしなきゃいけないほどの奴だ」
そして、ついでに中からスナック菓子の空袋も引っ張り出してその袋からおられた割りばしも取り出す。
その割り箸には口紅らしき色はついていない。
「ついでこのスナック菓子を食っている奴、こいつが情報機器を扱っている奴だな、パソコンをいじっている奴はよくこういう食い方をする、これで四人目」
ついで床を指さして伏せるように指示してきた。
すると――
「フローリングの溝に赤い髪の毛が落ちてるだろう?」
「かなり短いですが、ありますね」
「これはおそらくウォーモンガーってやつの髪だ」
疑問の目を向けるとあっさり言い切った。
「勘に近いが、まずそれなりに近い日に切られている、このことから髪を短くしなければならない理由がある人間だ」
「確かにそうですね、ここにきて二週間程度しか経っていないですし」
「だろう? となると鎧を着る人間は邪魔にならないように切ったというのはそれなりに納得できないか?」
飛躍しているとも考えられるが、否定できる理由もないのでうなずいておく。
「あと寝室だな」
「寝室?」
言われるままに寝室に入ると、そこには大きなベッドが置かれているだけだ。
ベッド自体はまだ新品のようだ。
「さて、最低でも四人暮らしているのにベッドはこれだけだ、嬢ちゃんはたしかねむらないんだっけか?」
「ええ――ああ、なるほど、最近ようやく眠る人間が来たってことですね」
「そういうことだ」
ついで洗面所に向かう。
そこには普通のハンドソープとは別に謎のボトルが置かれている。
太いシャンプーのような容器に入れられており、白い粒が浮いている。
「で、これは機械油やグリースなど頑固な汚れを洗い落とす専用の石鹸だ」、つまり整備を受け持っていた奴がいるってことだ」
「それ以上の人間がいた可能性は?」
針山さんは少しだけ考えて。
「おそらくないな、ざっと見た感じ六人目がいたような形跡はみあらねーんだ」
ここは刑事として働いている針山さんの目は信じれると思うので、橘を抜けば敵は五人だ。
淡雪に目を向けると。
「いくつかの候補に絞れました、時間を稼げたと思っているでしょうが――」
といって針山さんに一枚の紙を渡す。
それを見て一つうなづいて、懐から取り出したスマホでどこかに電話をかける。
「よーし、これから伝える場所に人を向けて見張れ、いいな」
と言っていたら突然電子機器たちから耳障りなビープ音が響く。
針山さんは気づいていないようだ。
そして久しぶりのように聞こえる、聞きたくない音声が聞こえた。
「新元号は平成に閣議決定しました」
明日も頑張ります。




