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Ⅳ月ⅩⅥ日

間に合いました。

 目が覚めるとそこは落ち着いた雰囲気だが、高級とわかる部屋だった。


「ここは?」


「あらあらお目覚めですか?」


 とすぐ脇から聞こえた。

 そちらに目を向けるとリーパーと呼ばれた女がベッドの脇のスツールに腰かけている。


 慌てて飛び起きて、ベッドを挟んで向かいに立つ。


「……ぁ」


 そこでこいつが何をやったのかを思い出し。

 ついにらんでしまう。

 すると、クスクスと楽しそうに笑いながら。


「元気がいい子はおねーさん好きよ」


「俺は嫌いだがな」


 そんな悪態を気にする様子もなく会話を続ける。

 むしろ、笑みを強くする。


「なんで笑う?」


「言い返すくらいには気にかけているということでしょう? そして、疑問を持つ程度には興味を持っていることだもの、うれしいわよ」


 言葉に詰まってしまう。


「……」


「そんなに邪険にしなくてもいいじゃないですか」


 少しだけ困り顔で言われてしまう。

 かなりの美人に言われてしまったら普通は鼻の下でも伸ばすのだろうが――


「安逹にあんなことした人間とか?」


だからですよ(・・・・・・)


「はぁ?」


 思わず妙な声を出してしまう。

 それほどおかしなことを言われた。


過去に戻りたい(・・・・・・・)、違いますか?」


「それは――」


 つい最近までは安逹について行っただけだった。

 だが、いまの俺には過去に戻りたい理由がある。


 だが――


そうだ(・・・)、でも戻らない(・・・・)


 はっきりと口に出せた。

 なんとなく理解ができる、この人間は絶対に信用してはいけない。


「ふむ、これを見てもですか?」


 といっていつの間にか透明度の高いこぶし大の鉱石を差し出してくる。

 それは――


「安逹の――」


 それ以上を言おうとすると指で止められる。


「橘君がこっちに来ないなら、コレどうなると思いますか?」


 薄い笑みを浮かべたままで聞いてきた。

 嫌な想像しか頭に浮かばない。

 絶対にロクな使われ方をしないだろう。


「教えてもらえないのか?」


「やっぱり興味があるんですね?」


 うなづいてはいけないと理解しているが――


「……」


「確かにすぐに答えは出せないですよね」


 ですけど、と軽い口調で続けられて。


「だから無理やり仲間になってもらいますね」


 と言って、首筋に鋭い痛みが走る。


「な!?」


「時間がありませんし、資源は有効利用しないといけないでしょう?」


 意識ははっきりしているが、体に全く力が入らない。

 崩れ落ちるところを背後から誰かに抱きとめられる。


「ったく、ぐだぐだやってるからイライラしてたっての」


 声からするとウォーモンガーと呼ばれた存在だ。

 そのあと無造作にベッドに投げられた。


「あらあらせっかちはよくないわよ」


 ふん。

 と鼻を鳴らしたウォーモンガーと呼ばれた存在は不満げだ。


「というか、淡雪だったか? あいつはナニモンだ(・・・・・・・・・)?」


 といって後ろを指している。


「あたしとリーパー以外の三人がかりで通信のジャミングで手いっぱいってどういうことだよ」


「まぁ、彼女は仕方がないですよ」


 ウォーモンガーが眉をひそめる。

 よほど不思議なようだ。


「かけている額が違います、おそらく最高級品をさらに金に糸目をつけず改造・調整、そのうえで装備も驚くほど高品質です」


 そこでいったん言葉を切って。


「正面から個別に相手をしなければならないならなすすべなく壊滅するでしょうね」


「いくらおめーでもこんな冗談は言わないわな」


 ガリガリとウォーモンガーは頭を掻く音が聞こえる。


「で、作戦はあるんだろうな?」


「さしあたってやることは、夜逃げね(・・・・)


「はぁ!?」


 疑問の声をウォーモンガーが上げる。


「いま三人の作戦ログを見ているけど流れ的に逆探知されてないはずがないのよねぇ」


「わかったよ、三人が起きてから――」


「今すぐよ、後から買えるメインフレームは物理的に破壊、三人を担いででも早く、片付けする時間も惜しいの」


 大きく舌打ちするが大人しく奥の部屋に戻った。


「さて、橘君、ついてきてもらいますからね」


 口調や声自体は柔らかいが、内容は死刑宣告のようだ。

 体が動かせないので、内心で頭を抱えることにした。

明日も頑張ります。

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