5月16日-1
間に合いました。
かなり深くまで埋められたので脱出できたのは日が変わってからだった。
「掘り出す間も聞きましたが、何が来たのですか?」
「二人組でウォーモンガーとリーパーと呼び合っていたな」
「ウォーモンガーとリーパーですか?」
不思議そうな顔をして聞き返してくる淡雪。
その表情からは怪しむべき点はないようだが一応聞いておく。
「装備からすると淡雪と同じ時代から送られたんじゃないかと思うが、なにか心当たりは?」
「あるとしたらノスタルジストから送られたんじゃないかという予想しか建てられないですね」
ノスタルジストがついに本腰を入れたということだろうか。
抵抗らしい抵抗もできず圧倒的な格上との勝負だと感じだ。
「それにしてもどうやって勝てばいいんだか……」
「そこについては考えがあります」
そこで少しだけ笑い。
「というよりも一方的に負けた理由は判明しました」
「何が理由なんだ?」
思い返してみるが、それほど妙なことはなかった気がするが、淡雪はきっぱりと言い切った。
「見た目は一対一でしたが、実際は一対二だったんです」
「? どういうことだ?」
意味が分からないので聞き返した。
すると、ウォーモンガーと戦っていた時の主観の映像が映し出される。
それはスローモーションのようにゆっくりと動いている。
「簡単に言いますとハッキングされてました、おそらく“リーパー”からですね」
「ということはあの時戦いに参加していなかったのは――」
その言葉を続きを淡雪はうなづきながら話す。
「ええ、おそらくハッキングに集中していたからです」
「やられた」
つい頭を抱えてしまう。
乗り気ではないと勝手に判断して頭の中から省いていたつけだろう。
「ハッキングして次の動きを盗み見られていたら、一方的にやられてしまうのも仕方がないと思うます」
「ということは対処法は?」
「私が一緒に行って電子戦を行います、多分それでかなり有利に戦えると思うます」
結局一対二で負けたから、二対二で戦うというだけの作戦だ。
作戦としてはシンプル極まりないがだから有効なのだろう。
「で、次の話なんだが――橘はどこにいった?」
小さく首を横に振る。
「連れ去られたようです、行き先まではわからないです」
「橘はなんでこう、行方不明になるんだ」
軽く悩みながら漏らす。
失踪したり、合体したりで行方不明になっていることが立て続けに起きている。
「と、とにかく連れ去ったということは今すぐ殺すとかではないと思いますので、素早く見つけて助けるしかないです」
「まぁな」
と、肩を落としながら返す。
「そういえば」
と、まだ聞いていなかったことを思いだす。
「なんですか?」
「リーパーが野菜でも収穫するように首を刈ったんだけどなにか思い当たることとかないか?」
淡雪は少し考えて。
「考えられる理由はおそらく種だと思います」
「種?」
予想外の答えに首をかしげる。
「ええ、種です、あの時[ ]さんは中身の時間軸がめちゃくちゃになっていました」
「そういえばしっかりとは聞いていなかったな」
淡雪も、そういえば。
と今更気づいたように説明を始める。
「あの時、おなかにはクリーチャーの子供を宿していて、でも阪神淡路大震災の果実を食べて、恐怖の大王とも混ざっていました、そして大本は平成最期の人間です」
そこでいったん言葉を区切り。
「彼女はいったいいつの年の人間でしょうね?」
「それは――」
言葉に詰まる。
しばらくそのように押し黙っていると、淡雪は少しだけ笑みを浮かべて。
「という風に即答できない状態になっていたわけです」
「つまりいつの時代でもない物体だから化け物を呼べるってことか?」
「見かけ上は確かにそうなりますね」
そして、と続ける。
「同時に強力な燃料にもなると思います」
「なるほど、相手も手間をかける理由はあったということか」
「そうなりますね」
うなずいて。
「とりあえず、ずっとここで話しているのも問題ですので一旦帰りませんか?」
「そうだな」
と同意して街に戻ることにした。
明日も頑張ります。




