四月十五日
間に合いました。
「ぐ――」
目がさめたらダムの脇の草むらにいた。
からだはどこも痛くない。
さいごの力で部屋をこわして水をながし込んだのが入水自殺になったみたい。
「ここは?」
立ち上がるとふらふらする。
体の中には少し前まで感じていた力は残っていない。
「あれ?」
じゃあなんで生きている?
力はない、なのに――
「まぁいいや」
不思議に思うがどうでもいい。
頭がもやもやして考えがまとまらない。
「ここは?」
どこでもいいので歩き始める。
靴を履いていないので足の裏がけっこういたい。
どれくらい歩いていたのか、人気のない山の中を通る道を歩いていた。
「ぁ」
そうしたら転んでしまった。
足を見るときすなどでぼろぼろになっている。
歩いてきた道に血のあしあとがついていてちょっとしたホラーだ。
と、しばらくしたらヘッドライトが見える。
まぶしくてつい目をつむる。
と一台の車がすぐわきでとまった。
まっ赤でとても高そうだ。
「やっべ、やっべオンナいたぜ、オンナ」
「ぎゃはは、こーんな山奥でどぉうしたんですかぁ!?」
濃いタバコとおさけの匂い。
真っ赤な顔と視線はどこかトロンとしている。
ろれつもどこかまわってない。
「はいはーい、おっもちかえりぃ」
「おーちにおくりますかぁね」
車内に連れ込まれてしまう。
ふたりともシートベルトしている様子はない。
そして連れ込んだ男はわたしの服の内側に手を入れてきた。
ぼんやりと、てがはやいなぁ。
と思っていると抵抗しないのでちょうしに乗り始めてハンドルを握っている方も太ももをなで始めた。
ちらちらとこっちを見ている。
あぶないなぁ。
とおもっていると、二人は充血しきった目で酒をラッパ飲みし始めた。
――ああ、きた。
という思いが浮かぶ。
「やりたたいあたいあたいあいいあいあたたたいあいあ」
「ななおあのあなおんなあおあなおあんあな!!!」
飲んだ酒瓶をかみ砕いて顔じゅうが傷だらけになるが食べきり飲み込んだ。
そのまままガクガクと頭を振って、叫ぶ。
それにしたがうようにして車が蛇行運転をして、ガンガン体をぶつけている。
嫌な予感がしたので急いで後部座席にうつりシートベルトをつける。
それを見計らったかのように路肩にかするようにしてのりあげて急減速した。
すると前のふたりは慣性の法則で前に放り出されてフロントガラスに顔を強打して、鈍い音がした。
そしてアクセルがふかされ加速すると首が固定されていないようにブラブラしている。
が、急に
「いいいいいいいいやぁほぉぉぉぉぉ!!」
「じゆうだぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!」
と叫び始めた。
同時にドバドバと液体を吐き始める。
匂いからするとお酒だ。
「ぅぇ」
吐き気がこみ上げる。
だから走ってる車から転げ出るようにして降り――
「走ってる車からおりたらしぬよね」
当たり前だけど怪我では済まなかったみたいで、いつの間にか道の脇に立っている。
一度死んだ証拠として、足が完全に治っている。
あの暴走している車をどうしようかと一瞬考えるが、すぐに頭の片隅から追いやる。
「まぁいや、どうでも」
ぺたり。
と歩くたびに何かを引きずり出している気がする。
くるり。
と振り返ると蠢くナニカがついてきている。
「うん、じゃあ、行こうか」
何となくそんな予感がする。
終わりが近い。
歩いている――いや、存在している実感がない。
不意におかしくなって笑いながら口に出す。
「みんな死んじゃえ」
それにこたえるようにナニカが散っていった。
明日も頑張ります。




