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4月15日―1

間に合いました。

 悠然と立っている『回転者』を前に緊張感が高まる。

 しかし、頭のどこかは冷静に一挙手一投足を観察している。


「おおっ!! 神の威光に恐れをなしていると見える!! さぁ、疾く来い!!」


 と誘ってくるが、その手には乗らない。

 トラップのようにあらかじめ力場を発生させる空間を指定しているはずだ。

 その証拠に一歩たりとも動いていない。


 このままでは互いに何もできず時間を浪費するだけだ。


「……」


 だから、抜剣する一歩手前の構えのままジワリと近づく。

 可能性があるとすればあるとすれば、ねじられ致命傷をおうその一瞬(・・)

 それまでに切り捨てることだ。


「……」


 弓を引くように緊張感が高まる。

 そしてある一瞬――


「しっ!!」


 一気に踏み込む。


 ぐるりと内臓が歪む不快感が襲ってくる。


 抜剣した切っ先が音の壁を破るのがわかる。


 その速さですらはっきりと認識できるほど神経が研ぎ澄まされているのがわかる。


 柔らかい内臓より先に、骨が砕かれたのがわかる。


 視界に警告が満ちる。


 しかし、外骨格があるので今この瞬間は関係がない。


 何かが引きちぎられる。


 この一回で切り伏せることができないならほぼ詰みだ。


 だからこそ恐れず振り切る。


「がっ!!」


 届いた(・・・)


 指の第一関節より少し深い程度だが、確かに届いた(・・・・・・)


 音速を超えた切っ先は切り裂いた線をなぞるように衝撃波で破壊した。


 ===============〇================


「っ  ぁ」


 そのあとその場で崩れ落ちる。

 体の中身がかきまぜられた痛みで視界が真っ赤になる。

 耳鳴りが響き何も聞こえない。


 むりやり視線を上にあげるとそこには袈裟懸けに切り裂かれている。

 傷口からは血がとめどなくあふれている。


「おわり、だな」


 強化外骨格に任せて立ち上がる。

 勝てた理由なんてそれこそ俺が即死じゃなければほぼ死なないくらい頑丈だったからだ。


 淡雪がこちらに小走りで駆けつけてきた。


「あなたたちを拘束して、中のソレ(・・)を取り出します」


「たのむ。」


 頭を下げて淡雪に場所を譲ろうとして、


「かみよ!! 神よ!! 何故私に敵を払う力をお与えにならなかったのですか!!」


 と叫び始めた。

 だが、それはただの機械的に繰り返しているだけの文言であり何の意味ない言葉だ。


 だから淡雪に視線を向けて尋ねる。


「この状態からできるか?」


 しばらく観察してゆっくり首を横に振る。


「不可能です、ある意味で稚拙なこの人格が表に出ている理由が二人が混ざりきっているためです」


「……なるほど、分からないな、なぜそんなことになっているのか」


 少しだけ淡雪が考えている。

 そのあとおもむろに口を開く。


「おそらくですが、二人とも自分というものがどうでもいいと思ってしまっているのだと思います、だから溶け合うように相手に合わせてしまっているのです」


「というと?――ああ、そうか……」


 安逹は目の前で家族が惨殺されて、橘は親から別人として見られていた。

 正直なところ同じ境遇になったら今と同じようにふるまう自信はない。

 もしかしたら逃げ出したいと思ってしまうかもしれない。


「でもそれはそれ、これはこれとして何とかしないといけないのですよね」


 知り合いを殺すのは流石に寝覚めが悪いので悩んでしまう。


 機械的に神様への言葉を繰り返す『回転者』を前に二人で頭を抱える。

明日もがんばります。

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