4月14日-3
間に合いました。
警察署の片隅で説明を受ける。
入った部屋が若干せまい部屋で刑事さんと相対しているせいかどことなく補導を受けている気がする。
「行方不明になった人間は七人、誰もが明確に疾走する理由はない」
といって七つのファイルが机の上に開かれる。
老人、医者、主婦、無職、浪人生、高校生、小学生と広い範囲でばらけている。
「あの、一ついいですか?」
刑事さんに質問を行う。
「この七人をひとまとめにした理由って、不審な行方不明というだけなんですか?」
刑事さんは小さく首を横に振る。
「この七人は行方不明になる少し前にこのような人――存在が出没していた」
といって一枚の写真を見せてきた。
そこには醜悪にデフォルメされた人間顔をプリントした粗末なお面をかぶった存在がいる。
面から下は黒い布をかぶっておりかろうじて人型であることしかわからない。
写真に写っている対比物からすると二メートルを超えている。
「裏からの写真もあるが、どうも前後に顔があるみたいでな、後ろにも手足がある」
「気持ちが悪いですね」
淡雪のその言葉に同意する。
素顔はみえないが、どことなく人を馬鹿にしていると確信できる。
「こんなに目立つ存在ならもっと早くにわかるようなものだけど……」
「それがどうも目撃証言はない、行方不明になった人間の周囲を洗ったらカメラに写っていたというものばかりで、おそらく周囲の人間には見えていなかったと思う」
「それはまた、面倒な……」
また誘拐する可能性もあるので、後から確認しないと見つからないのは厄介だ。
淡雪なら街全体の監視カメラを支配下に置いて探せるだろうが、そこから警告しても遅いし信じられることないだろう。
となると――
「一刻も早く探さないといけませんね、拉致された先を探さないと」
「もちろん探しているが、結果は芳しくない」
首をひねり問いかける。
「こんなに目立つ相手の足取りがつかめないんですか?」
「恥ずかしい話だが、そうだ」
と言って地図を広げる。
そこにはいくつかの赤い丸が記されている。
「それぞれの見かけられた地点がこれ、そして上下水道網がこれ」
と言って透明なシートをかぶせる、それには街の各部に張り巡らされた黒い線が記されている。
それを合わせると、出現地点はぴたりと一致している。
「おそらくこいつは地下の水道網を利用している、が今はしらみつぶしに水道網を追いかけている状況でもう運の領域になっている、一人じゃ対処できない可能性も高いから三人ほどで一緒に行動するしかないというもあってな」
「なるほど、淡雪のドローン群で探してほしいと」
その言葉にうなづかれた。
「お願いできるか?」
「わかりました、やってみます」
そううなずいて淡雪はドローンの操作に専念し始めた。
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「見つけました」
そう静かな声で報告された。
「よし!! それで痕跡はどこに?」
「いえ、ですから見つけたんです、誘拐された人の監禁場所です」
刑事さんは少しだけ複雑そうな顔をする。
がすぐにその思いを振り払うようにして淡雪に話しかける。
「それで、場所は?」
「ダムです」
と言って、地図に丸を書き込む。
「ここですね」
「よしさっそ――」
といったあたりで淡雪が止める。
「えっとですね、多分普通の方法だと助けられないです」
「というと?」
刑事さんが疑問を投げかけるので、スマホを取り出しそこに図形が現れる。
外観からするとダムだろう。
「実はこのダムの底に作られたこれが監禁場所です」
と言いながらそこに立方体が描かれる。
ダムと聞いたら普通はダムの管理事務所などの建物を想像するがまさかダムの底というのは意外だ。
「ダムに比べると大きくないようですが、三階建ての建物くらいありますからね」
「……つくづくでたらめな存在だな、作る方もそれを探し出す方も」
「誉め言葉ですよね?」
何とも言い難い表情で淡雪は刑事さんを見る。
がそれを刑事さんは流す。
「ああ、確かに水の底っていうのは厄介だ、この底まで迎えに行けるダイバーに、そもそも下手なことをすれば建物が壊れそうだな」
「横穴を開けてそこから流れ込む水の勢いでダイバーさんも危ないですしね」
助けに行くことすら難しい牢獄だ。
しかも酸素の供給すらないだろうと思われる場所だ。
悠長なことはできない。
「私に考えがあります」
「……もうこの状況はこっちではお手上げだ、任せる」
そこで淡雪は頭を下げる。
「ありがとうございます、では、今から行きますね」
「ああ、頼んだぞ」
刑事さんのその言葉を背中に受けて、助けるために外へとでた。
明日も頑張ります。




