4月14日-2
間に合いました。
警察署へは淡雪に向かってもらい、俺は橘のお姉さんに話を聞きに行くことにした。
昨日見かけたときより明らかに疲れがたまっている様子だ。
「あ、昨日の子じゃん、おっは――、もうこんにちはかな」
と明らかに無理をしている笑顔を浮かべる。
「ええ、こんにちは橘のお姉さんの――」
「香苗、だよ」
「山上 奥谷です」
と言って頭を下げる。
橘さんの方も慌てて頭を下げてくる。
「でさ、早速出悪いけど諸井の行方って知ってる?」
「こっちも探してます」
「そっか、何かわかったらこっちにも教えて」
と、携帯番号をメモして渡してくるが、それに対して一言返す。
絶対に興味を持つ言葉だ。
「諸井から兄と母親についての事を聞きました」
と、バツが悪そうな表情を浮かべる。
「そうかぁ、聞いちゃったかぁ……身内の恥って言葉好きじゃないんだけどね」
笑い飛ばすような言い方だが表情はかなり沈みこんでいる。
「どこから話そうかな?」
と言っているうちに膝から力が抜けたように倒れこみかける。
思わず腕を握り支える。
「いやーありがとね」
「多分昨日から寝ていないですよね」
「だいじょーぶだいじょーぶ、これくらいは――」
と強がっているので、少しだけ力を緩めるとやはり体の軸がずれているようにぐらついている。
そのことに自身で気づいているのか目をそらす。
「さ、さすがにここまでは久しぶりだけど――家族だからねー」
「倒れたら元も子もないですよ――」
警察も動くことになるとわかっているので安心させるために続ける。
「それに警察も探し始めるでしょうし」
と、そこで雰囲気が変わった。
より張り詰める方向に行った。
「なら、なおさら早く探さないと」
しまった。
と思った、責任感が強い人にそんなこと言ったらより根を詰めるに決まっていたのに。
「それはわかりましたから、とにかく警察署にいきましょう」
「……たしかにそうかもね、じゃあ急ごう」
と言ってタクシーを呼び始めた。
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やはりかなり疲れていたようでタクシーに乗ったらすぐに寝落ちした。
目的地の警察署についたら揺り動かして起こす。
「いやぁ、ごめんごめん年取るのって良くないねぇ」
などと言いながら料金を支払った後、とってつけたような理由で言い訳を行う。
警察署にはすでに淡雪が向かっていて、話はしていたようだ。
「山上さん、お姉さんも連れてきたのですか?」
「全く休みをとってないみたいで」
「ん? 昨日に会ったこの妹?」
淡雪はすこし難しそうな顔をするがすぐにうなずいた。
「一体なにが起きたのさ」
実は連れてきたはいいものの、なんと説明しようかろくに考えておらず、事件に巻き込まれて程度しかなくて淡雪の顔を見ると、ゆっくり首を横に振り手はなさそうだ。
すると――
「あまり大きな話になっていないのですが、現在連続失踪事件が相次いでいるのですよ」
と、奥から一人の刑事さんが出てくる。
そこで思い出した、女医を助けに行ったときに同行してくれた人だ。
だから軽く会釈をする。
「そ、んな」
と呆然とする。
その話を聞きながら淡雪に小声で尋ねる。
「その話本当か?」
「ええ、どうやら本当のようです、このタイミングですからさすがに無関係はないと思いますが……」
全く関係がない可能性もそれなりにあるのが難しいところだ。
刑事さんと幾つか話をしているようなので、残して奥に向かった。
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「お姉さんは大分疲れているようですね」
「多分一睡もしていないと思う」
奥の部屋で淡雪と話す。
しばらくすると先ほどの刑事さんがコーヒーを手にやってきた。
「お姉さんの方はとりあえず帰ってくれた」
「説明をお願いしたみたいですいません」
淡雪と一緒に頭を下げる。
こういう時はやはり大人の説得力にはかなわない。
「いや、いい それにしても体が欠けたから小さくするというのは流石に驚いた」
と言って一度切断された手を握ったり開いたりしている。
「切れたら継げたという人の体も大概だが」
と苦笑をしている。
そのあとまじめな顔をして。
「さて、連続失踪事件だがあきらかに君らの案件だとおもう」
「と言いますと?」
「何人かが通勤中の車から忽然と消えたなど不可解な状況でな」
「詳しい話をお願います」
居住まいを正して先をお願いした。
明日も頑張ります。




